小助くんとようせいのフブキちゃん
森の中は、はげしい雪とふきつける風でふぶきになっています。そんな中であっても、小助とワン太はいつものように元気いっぱいです。
「うんしょ! うんしょ!」
小助は、雪だるまを作ろうと雪玉をころがしながらすすんでいます。ワン太も、小助の後をついて行こうと4本足で走っています。
しかし、小助たちがすすむ先にははげしい向かい風が雪とともにふきつけています。でっかい雪玉をおしても、なかなか前へ行くことができません。
「こちゅけくん(小助くん)、大じょうぶ?」
「大じょうぶ! 大じょうぶ!」
すると、すさまじい風と雪の中から何やら小さい人間らしきものが小助たちの前にあらわれました。空中にうかんでいるそのすがたは、きものをみにつけたかわいい女の子のように見えます。
「ねえねえ、どうちてちいちゃいの(どうして小さいの)?」
かわいい男の子の声を耳にすると、女の子はふしぎそうに自分を見ている小助に話しかけようと口をひらきました。
「わたしは、ふぶきの時にあらわれるようせいだからこんなに小さいのよ」
ようせいの女の子は自分の名前を言おうと、小助のほうをじっと見つめながら声を出しました。
「わたしはねえ、フブキという名前なの。ぼうやは何という名前かな?」
「小助! 小助! 小助!」
「わあ~っ! 小助くんって、いつもこんなに元気な声なの?」
「うん!」
小助は、風と雪がはげしい中でも元気いっぱいのえがおをフブキの前で見せています。となりにいるワン太も、自分の名前をおぼえてもらおうと声を上げています。
「ぼくの名前は、子犬のワン太。こちゅけ(小助)くんとは、いつもいっちょ(いっしょ)だよ」
「ワン太くんも、かわいい子犬なんだね」
かわいくてやさしいフブキに見てもらおうと、小助はでっかい雪玉を前へおそうといっしょうけんめいになっています。
「う~んしょ! う~んしょ! う~んしょ!」
すさまじい風とはげしい雪であっても、小助は雪玉をさらに大きくしようとすこしずつ前へ向かっています。その大きさは、小助のせの高さとほぼ同じくらいです。
「ころころころころ、ころころころころ」
小助は、雪だるまを作るためのもう1つの雪玉をころがしています。さっきまでとちがって、はげしい風と雪は小助の後ろのほうからいきおいよくふきつけています。
「ごろごろごろごろ! ごろごろごろごろ!」
前へすすむ時はこのように雪の上をかけぬけることができますが、向きをかえて森の出入り口に向かってもどるときはそうはいきません。
「うんしょ! うんしょ! よいしょ! う~んしょ!」
雪とともにふきつける向かい風は、小助がすすもうとするのをさえぎります。それでも、小助は雪だるまを作るための雪玉を大きくしようと足をすすめています。
「ねえねえ! こっち見て! こっち見て!」
小助は、でっかい雪玉の上に一回り小さい雪玉をりょう手でもち上げています。一回り小さいといっても、その雪玉が大きいことにはかわりありません。
「小助くん、こんなにでっかいのをもち上げることができるの?」
「うん!」
できあがった雪だるまには、まだ目やはなや口がありません。小助は、ワン太といっしょに雪の中をほりながら何かをさがしています。
「こちゅけくん、みちゅけたよ(見つけたよ)」
「みちゅけた! みちゅけた!」
小助とワン太は、自分たちで見つけた石や小さいえだで雪だるまの顔を作っています。自分たちで作った雪だるまを見せようと、小助たちは元気な声でフブキをよんでいます。
「ねえねえ、こっち見て! こっち見て!」
「わあ~っ! すごい雪だるまだね」
フブキがふり向くと、小助たちのとなりにでっかい雪だるまが立っていることに気づきました。はげしい風や雪にまけることなく、その雪だるまは小さいフブキのすがたをじっと見つめています。
森の中でものすごくふいていた風とはげしい雪は、しだいにおさまってきました。けれども、それはフブキにとって小助たちの前からきえてしまうことになります。
「小助くん、ワン太くん……」
「どうちたの?」
「ごめんね……。わたし、はげしい風と雪がないとすがたがきえちゃうの……」
いつも元気な小助も、ようせいのフブキがすがたをけすことにさびしそうな顔つきを見せています。そんなようすを見たフブキは、小助たちにさいごのことばをかけました。
「ふぶきになったら、またあそびにくるからね」
「またあちょぼうね(あそぼうね)!」
小助は、すがたをけしたフブキにまた会える時を楽しみにしながら手をふっています。そばでしっぽをふっているワン太も、フブキに会いたい気もちは小助と同じです。




