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小助くんの小さなぼうけん  作者: ケンタシノリ
大きな池の向こうでぼうけん
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セミになり切った小助くん

 小助たちは、山のてっぺんからケモスケのお父さんとお母さんがいるところへもどりました。お母さんかいじゅうのそばへやってきた小助は、かわいい声でおねだりするためのことばをかけました。


「ねえねえ! おっぱい! おっぱい!」

「ぼうや、しょうがないわね。こっちへおいで」


 かいじゅうのお母さんは、やさしくだきしめた小助におっぱいをあたえることにしました。小助がおっぱいをのんでいるようすに、お母さんかいじゅうはやさしい目つきで見つめています。


「ぼうや、おっぱいをいっぱいのんでいるみたいだね」


 小助のかわいい顔を見て、ケモスケのお母さんもすっかりあんしんしています。お父さんかいじゅうも、お母さんにだかれた小助のすがたをじっと見ています。


 おっぱいをのみおえた小助は、夏のあつさにまけずに木にはりついたままで鳴きつづけるセミをじっと見ています。べつの木には、カブトムシが何びきもあつまっています。


 ケモスケは、木にあつまっているカブトムシのすがたを見て思わず声を上げました。


「わあ~っ! カブトムシだ」


 カブトムシをつかまえようとするケモスケですが、手をのばしてもなかなかつかむことができません。


「う~ん、なかなかとれないよう……」


 ケモスケがカブトムシをとろうとむちゅうになっている中、小助はミンミンと鳴くセミになり切ろうと木にしがみつきました。


「ミンミンミンミンミンミ~ン! ミ~ンミンミンミンミンミ~ン!」


 となりの木には、セミがいっしょうけんめいに鳴き声を上げています。小助もそれにまけないように、元気いっぱいに声を出しながら鳴きはじめました。


「ミンミンミンミ~ン! ミ~ンミンミンミンミ~ン!」


 どうぶつの子どもたちは、木にしがみついてセミの鳴き声のまねをしている小助のようすをながめています。そんな時、セミがほかの木へうつろうと空中をとんでいるとおしっこがケモスケの顔にかかりました。


「うわっ!」


 いきなりのできごとに、ケモスケはおもわず目をこすりました。子グマとちびっこオオカミは、ケモスケのようすを見ながらわらっています。


「たのむから、こっちを見ないで!」


 ケモスケは、みっともないところを見られて顔を赤らめています。その間も、小助は木にしがみついたままでセミが鳴く声のまねごとをつづけています。


「ミンミンミンミンミ~ン! ミ~ンミンミン……」


 どうぶつの子どもたちは、小助がセミになり切ってしがみついているようすをじっと見ています。みんなにセミになり切ったすがたを見せようと、ミンミンと小助が鳴き声を上げているその時のことです。


「ジョパジョパジョジョジョ……」


 小助がしがみついたところからは、木のねっこに向かって水がチョロチョロとながれています。木のねっこのほうには、ながれてきた水たまりが広がっています。


 これを見たどうぶつたちは、木にしがみついている小助に声をかけました。


「おもらししちゃったの?」

「てへへ、おちっこ(おしっこ)もらしちゃった」


 小助は、セミになり切ったままでおしっこをおもらししてしまいました。水たまりができるほどのおしっこが出たのは、小助がお母さんかいじゅうのおっぱいをたくさんのんだおかげです。


 ケモスケも、どうぶつの子どもたちがいる木のそばへやってきました。そこには。木からおりてきたばかりの小助がいます。


「小助くん、おしっこもらしちゃったね」

「て、てへへ……」


 小助はてれわらいを見せながら、おもらしでぬれてしまったはらがけの下のほうを右手でおさえています。


 こうして、小助たちといっしょにあそんでくれたケモスケたちですが、そろそろおわかれしなければなりません。かいじゅうたちとの思い出は、小助たちだけのひみつです。


「ぼくねえ、みんなのことわすれないから」

「またあちょぼう(あそぼう)! またあちょぼう!」

「小助くん、またここへあそびにきてね」


 ケモスケは、友だちになった小助たちが山道をおりていくすがたをずっと見ながら手をふっています。

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