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小助くんの小さなぼうけん  作者: ケンタシノリ
小助くんと夏の出会い
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小助くんと空とぶとんび

 いつもは青空におおわれる山おくですが、今日はうすぐらい雲につつまれています。空からは雨がたくさんふっています。


 けれども、今日の雨はそれだけでありません。ものすごい風が、山おくに向かってつぎつぎとふきつけています。小助がいつもあそびに行く森のほうでも、数多くの木をはげしくゆらしています。


 そんな中でも、小助は森のどうぶつたちとあそびたくてたまりません。家の引戸をあけると、いつものように小助があそびに行こうと森に向かっていきます。


「小助くん、こんなに風がふいている時に……」


 お母さんは、小助があそびに行くのをやめさせようと声をかけました。しかし、その声は小助の耳に入ることはありません。


 森の中へ入った小助は、目の前に向かってふいてくる風であってもかけ足ですすもうとしています。なかなかすすめなくても、小助は前へ行こうといっしょうけんめいです。


「んぐぐっ、んぐぐぐぐぐっ……」


 さらにすすもうとした小助ですが、あまりにもすさまじい風に空中へとばされてしまいました。小助は、空中をくるくると回りながらうかび上がっていきます。


 目の前に見えてきたのは、森の中でも上までのびている大きな木です。はげしい風がふきつづける中、小助はその木にりょう手とりょう足でひっしにしがみつきました。


「わあ~い! ゆらゆら! ゆらゆら!」


 どんなに風と雨がすさまじくても、小助は大きな木がゆれているのがとても楽しくてたまりません。うすぐらい空を見わたすと、いろんな鳥が小助の前をとびかっています。


「ぼうや! こんなところにいたら風にふきとばされてしまうぞ」

「鳥さん、こっちこっち! たのちいよ(楽しいよ)!」


 とんびは、風がふきつける中で木にしがみつく小助のようすをしんぱいしています。そんな中でも、小助はこわがることなくいつものえがおを見せています。


 そんな時、黒いカラスが森のおくのほうからとんできました。空中でとんびとカラスが出くわすと、おたがいにあいての顔をにらみつけています。


「おい! おれたちのなわばりに入ってくるんじゃねえよ!」

「何だと! かってになわばりを作らないでよ!」


 カラスがちょっかいを出すと、とんびのほうもすぐに言いかえします。鳥たちが言い合いとしている中、小助はあいかわらずはげしい風でゆれている木にしがみついています。


「ゆらゆら! ゆらゆらゆら!」


 どんな時であっても、小助はえがおをたやすことはありません。とんびとカラスは、小助のかわいい顔つきを見るとあいてをにらみつけるのをやめました。


「ちっ、お前と言い合うのはもうやめるわ」


 カラスはこのことばを口にすると、羽を広げてほかのところへ行ってしまいました。とんびは、カラスのすがたが見えなくなると小助のいる木に近づきました。


「どうして、こんなにきけんなところにいるの>」

「たのちい(楽しい)! たのちい!」

「そんなに楽しいものかなあ……」


 すさまじい風がふいても楽しそうな小助のすがたに、とんびはふしぎそうに見つめています。そんなとんびは、小助のいる木のてっぺんに止まってある鳴き声を上げています。


「ピ~ヒョロロロッ、ピ~ヒョロロロッ」


 小助はその鳴き声を聞いて、さっそくとんびになり切ろうとします。


「ねえねえ、鳥さん! 鳥さん!」

「ぼうや、どうしたんだ」

「ピ~ヒョロロッ、ピ~ヒョロロッ」


 とんびは、自分の鳴き声をまねようとする小助をじっと見ています。小助は、とんびになり切って鳴き声をなんどもくりかえしています。


「ピ~ヒョロッ、ピ~ヒョロッ、ピ~ヒョロロロッ」

「しょうがないなあ。わしもつきあうとするかな」


 こうして、小助はとんびといっしょに鳴き声をうすぐらい雲に向かってひびかせています。あれだけすさまじかった風も雨も、小助たちが鳴き声を上げるのをおえるとしだいにおさまってきました。


「おっ、風のほうもおさまってきたようだね」


 風がおさまると、雲の切れ間から青空が見えてきました。小助は大きな木のてっぺんまでのぼっていくと、空高くとび回るとんびを見ながら手をふっています。


「またあちょぼう(あそぼう)! またあちょぼう!」

「ぼうやといっしょに鳴き声を上げたりして、とても楽しかったよ。でも、小さいぼうやがきけんなことをしたら大ケガするから気をつけないといけないぞ」


 とんびは、小助とのわかれをおしみながらも遠くの空へとび立っていきました。

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