召喚、そして決意。よし、逃げよう。
とりあえず触りだけー!
「おぉ勇者達!よくぞ来てくれた!!」
気づいたら異世界でした、なーんてこと、あるよね。
いやねぇよ。
一人心の中でツッコミながら周囲の状況を確認していく。
俺は斑目彼方、二十才。普通のリーマン。
さっきまで通勤のために道を歩いていたところで落とし穴に落ちたように世界が暗転して、いつの間にかここにきていた、と。記憶には相違ないな。
よく分からない、魔方陣?の上に俺以外に四人。男二人に女二人。
無論、誰だかは分からない。見も知らぬ赤の他人。
目の前にはザ.王様といった感じのオジサン。
その周りには重厚な鎧を纏った騎士達。
「お、おい!どういうことだこらぁっ!!
いきなりこんなとこに、どんな手品だ!!さっさと帰しやがれクソ野郎!!」
横にいた男の一人が王様に向かって吠える。
同時に騎士達の殺気が膨れ上がり、僕らを威圧する。
「控えよ!!畏れ多くも、ガルヴ王の御前であるぞ!!勇者ごときが楯突いて良いお方ではない!!」
恫喝する一人の騎士。その剣幕は本気の怒りと殺意に固められていて、食って掛かった男も怯む程であった。
しかし。
「おお、こらこら騎士長。彼らが怯えているではないか。ここではそういうことは無しで行こう。我の名は、アーディネス・レウル・ガルヴである。ラーク大陸一の大国家。その元首。
自己紹介はこの辺にして…主らには、我々を、世界を、救って頂きたい」
そんなことを目の前の男は、頭を下げながら言うのであった。
俺は確信する。
これはとてもじゃないけど割に合わない上に面倒くさいやつだって。
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異世界召喚、という小説や漫画のジャンルがある。
俺はかなりオタクだと自負してるから、それについては知ってる方だと言えるだろう。
突然異世界に召喚、ないしは迷い込み、その世界をなんやかんやで救うという物語。
そういうモノ大体、テンプレートというものがあり…今回もその例に漏れないらしい。
普通の人なら喜ぶとこなんだろ
しかし、だ。
俺は別に元の世界で不自由はしてなかった。両親や兄弟姉妹との仲は良く、友人もそこそこ。
サブカルチャーとして、趣味として異世界モノの小説は読めど、実際体験するとなると話は別だ。
正直世界とかどうでもいい。
城の中で割り振られた部屋。そのベッドの上に腰かける。
一人一部屋割り振られ、中の物は好きにしていいと言う。その上、不備があれば召使いを呼べ、と。
破格の待遇ではある。見回す部屋には様々な日用品が置いてあり、不自由はしなさそうだ。
そう、不自由は。
立ち上がり、窓に向かう。
覗き込むと、相当高い階にこの部屋があることが分かった。
…逃げられないように、か?
考えすぎだと言われるかもしれないが、最悪の場合は考えておくことに損はない。
あの王様、かなりの狸らしいしな。
「あの目は…まるで奴隷か何かを見る様な目だったしな…」
頭を下げたから分かりにくかったが。
どちらにしろ…早く逃げた方がよさそうだな。
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