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カッコいい女性は惚れられやすい

「さ。気を取り直して向かいましょうか」



「……覚えてろよ、年増」



「大丈夫ですか、フウヤさん?」



「放っときなさい、ハルちゃん。自業自得よ」



「そ、そうですね。自業自得ですもんねっ」



「……え。ハルちゃん、もしかして」



変態が何か言いかけてるけど、構わず皇帝の間の扉を開ける。



皇帝の間。名前負けしない程の豪華絢爛な装飾が部屋中に施されていた。



金のカーペット、銀の机、金の文房具……。見てて目が痛くなる程にキラキラした物ばかり。そんな空間の奥で、



「ひっ!くっ、来るな!来るなぁっ!!」



あの金髪イケメンがすっかり取り乱して、こっちをまるで化け物でも見るかのような視線で見ていた。



「来るな……と言われて来ないとでも思ってるのかしら」



「ひっ……!」



近づくだけで断末魔のような悲鳴をあげる皇帝。……ダメね。これ以上やったらSに目覚めそうだわ。



「変態、頼んだわ」



「いいのか?」



「いいわよ、譲ってあげる。捕まってたアンタの方が色々言いたいことあるでしょ」



「……じゃ、お言葉に甘えさせてもらうわ」



「ひいいぃぃぃぃ!!」



変態が近づいて来ると、ボロボロ恐怖の涙を流す皇帝。……自分の物じゃない力で支配してた者の末路は空しいわね。



「おい」



「な、なんだ金か!金なのか!?いくら欲しい!?足りない分は国民から徴収して」



「……あ?」



「ひっ!」



なんで火に油を注ぐようなマネするのかしら、あの皇帝……理解できないわ。



「オレたちからの用件は三つだ。一つ、今すぐ皇帝の座から降りろ。二つ、無実の罪で捕まった人たちを解放しろ。三つ、国が蓄えてた金全部国民に返せ。均等にな」



「ば、バカな事を……!私が降りたらこの国はもう終わりだ!」



「もう終わってたんだよ、この国は。アンタか先代かは知らねえが、国民を力で支配し、心も体も屈服させてた時からな」



初めて見る、アイツの真剣な顔。表情からは真剣さの他に、静かな怒りも読み取れた。



「どれだけ罪のない人たちが苦しんだ?どれだけ罪のない人たちが涙した?どれだけ罪のない人たちが……血を流し、倒れた?数えたくもない。……これからのこの国の未来にそんなものは必要ない。これからのこの国に、戦争なんかいらない。その為にはアンタは居ちゃいけない」



「は……はは。とんだ戯れ言を。いいか!私が居たから隣国から深く攻め込まれることなくやっていけたんだ!私の指揮あってこそだ!そんな中、私が居なくなればどうなる!?……終わりだよ。この国も、国民どもも!文字通り消えることにっ!!」



バタリと皇帝が倒れ、床に突っ伏した。変態……フウヤが静かに立ち上がる。



「……やっぱ性根から腐ってんな。コイツ」



「こ、殺しちゃったんですか……?」



「いや、殴って気絶させただけだ。オレ、人殴ったの初めてだ」



「あら、随分平和なお坊っちゃまだこと」



「うるせえ、暴力姉貴」



「ふ、二人とも。ケンカは……!」



ハルちゃんがケンカを仲裁しようとした時、



「失礼する」



最初に会った隻眼の兵士が現れた。あら、まだやるつもりかしら?



身構えると、フウヤが制止した。



「安心しろ、味方だ。……この国を変えたかったらしい。戦争のない国に」



「ああ、彼の言うとおりだ。……三連凶を除くすべての兵士はみな、戦争に反対しながらも徴兵された者たちだ。高くなりすぎた税金を払えずに兵役に就いた者、家族を人質に取られた者、三連凶の力の前に屈服した者……みな、理由は様々だ。今回、三連凶を倒し、皇帝を打ち倒してくれたこと、誠に感謝する」



深々と頭を下げる隻眼の兵士。……マトモな人も残ってたのね。



「一つ聞きたい。三連凶を失ったこの国は、隣国から攻め込まれることになるのか?」



「こちらから和平を申し出るつもりだ。元々この国、いや皇帝が引き起こした戦争だ。彼の首一つ差し出せば済むだろう」



「……それで済むといいがな」



「なにか言いました、フウヤさん?」



「いーや、なんでも。……なあ、ミレン。少しこの国に滞在しないか?」



「別に構わないけど。……なにか理由でも?」



「ハルちゃんとイチャイチャした」



皆まで言わさずに殴った。



「……なんでお前に破壊の魔法効かねぇんだよ」



「知らないわよ。あーあ、疲れた。早くお風呂に入りたい」



コイツ、なにか思惑があるんでしょうけど、今は言えないみたいね。……後で意地でも聞き出すんだからね。



「……ミレンさん」



「なに、ハルちゃん?」



「先ほどは助けて頂いて……ありがとうございました」



「いいわよ、改めてお礼なんて。友達でしょ」



「……戦ってる時のミレンさん、輝いていて、凛々しくて……とてもカッコ良かったです」



「……え?」



顔を赤く染めるハルちゃん。え、ちょっと待って。ウソでしょ?



「ハルちゃんが、オレのハルちゃんが……年増に染められげぼぉっっ!!」



くだらない事を言う変態を回し蹴りで沈める。



「ミレンさん、いえ、お姉様。あたしの家に来ませんか?たっぷりおもてなししますし、お体もお洗いします……!」



「怖いわよ、目が!あぁもう、なんでこんな事に――!!」










「……そう。動きがあったのね」



「ああ。ディブトーニが落ちた。こりゃしばらく楽しそうだ」



「まったく、あなたは……」



「はは。私にはこれくらいしか楽しみがないものでね」



「で、次はどこに捕まりに行きますか?」



「おいおい。人を牢屋好きの老人扱いしないでくれ。私にだって考えがあるのだから」



「それは申し訳ない事をしたわね。で、どこの牢屋に行きます?」



「……まあいい。そうだな……レーテリア王国がいい」



「早くあの子たちが来るといいわね。それじゃ」




「……。来るさ。なんたって彼らは、私の見込んだ者だからね。……待ってるよ、フウヤ」

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