ディブトーニ・レーテリアの専守戦~side tale~
「……敵の兵士さんが退いていきます」
西地区郊外。敵兵を相手にし続けたサキュバス姉妹は一息ついた。
「人間達がうまくやったみたいね。はーぁ、疲れた」
「お疲れ様です、姐さん」
「……魔物がチラホラいるけど危害は加えてこなさそうだし、この地区はもう平気ね」
「中央に行きます?人間の方がたくさんいましたし」
「……。いや、妾達が行っても混乱するだけよ。他の地区でゆっくり信用を得てから――」
「他の地区の兵も撤退しておったぞ」
バサリ。金髪の美女が愉快そうに舞い降りた。
「げっ。あんたもいたの?」
「当然じゃ。ここはわっちの管轄区じゃからな」
「姐さん、誰です?この人」
「……顔馴染みよ」
「ゆうてくれるわ。どうした?やけに力が衰えておるようだが?」
「それはあんたもじゃない。第一、敵のあんたに内情を話すと思って?」
「そこのサキュバスが理由か?」
「……」
「?」
「久々に死合いたいし、どれ軽く」
「動くな」
魔力が増幅する。辺りの生物の息が止まりかける程に濃く。
「冗談じゃ。今更、そなたと決着をつけようなどと思わんよ」
「……」
溢れ出した魔力が静まる。射殺す冷たい眼差しも息を潜めた。
「あ、姐さん……?」
「……行くわよ。ここには居たくないわ」
「は、はい……」
「……」
サキュバス姉妹が去る。ナヴィスはそれを満足げに見た後、翼をはためかせた。
「……はぁ。ごめんね、ビックリさせて」
「い、いえ。……仲が悪いのですか、あの人と?」
「ええ。最悪中の最悪ね」
「……」
不安げに見つめる妹の頭をポンッと叩き、サキュバス姉は笑いかけ言う。
「一応、人間どもの無事を確認して、それからこの地区でお世話になりましょ。人間の言葉に恩返しってものがあるらしいし、怪訝な顔はされないでしょ」
「は、はい!」
――北地区――
「丁重に運べ。怪我の治療後は拘束せよ」
「はっ!」
「……」
七紅魔の二人が運ばれていく。剛健さんも運ばれようとしている。
「お父さん、大丈夫……っ!?」
「……ああ、大丈夫だ」
「どう見ても大丈夫じゃないですよ!救護班の方々のおかげで少しはマシになってますが……!」
「これでくたばるなら、とうの昔に死んでいるさ」
「……。とはいえだ。剛健殿、貴殿は暫く救護室だ。家族以外の面談は謝絶とする」
「!!」
「……処遇についても改める。他の三連凶の方々もな」
「あたくしらも?」
「ほ、ボクもですかっ?」
「無論。……どのように改めるか、フウヤ殿やミレン殿とも話すが悪いようにはしない。このゲン、強く誓おう」
「……」
「かけがえのない肉親とゆっくり話すといい、剛健殿」
「……感謝する」
救護班、ハルさんと共に歩き去っていく剛健さん。
「……いいんですか、隊長?フウヤさんの相談もなしに」
「なに、彼なら理解してくれるはずだ。……それよりもハドソン、被害の再確認を頼む」
「はい。“彼”が現れて大きく変わったのは間違いありませんから」
「うむ。……軽傷の兵士は復興、並びに残党の無力化へ!重症の兵士は治療班のテントへ!伝達兵は住民の誘導に!」
『はっ!』
隊長、ゲンさんの指示のもと、ボク達は各々の任務に就く。
避難所でのハルさん探しの騒動、西地区郊外での援護の存在、そして上空に現れた“彼”の影響を知るのは、もう少し後の事。




