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紅《あか》の少女

――ある国に二人の姉弟がいた。姉の名はキッシュ。弟の名はサンスィヤ。仲睦まじい姉弟だが、彼女らには異質な箇所があった。


姉は燃えるような紅の髪。サンスィヤは金髪。髪の色が致命的とまで言える程異なるその姉弟は、生まれ育った村で迫害を受けていた。守ってくれる親はいなかった。


二人を生んだ母も、父も。二人の姉弟の髪色が違う。それだけで

二人を蔑み、置いて出ていった。


親を恨むキッシュだが、サンスィヤはそうはならなかった。彼はいつも姉にこう言っていた。


「お姉ちゃんがいてくれるだけで幸せだよ」、と。


キッシュも同じ思いだった。二人はかけがえのない姉、弟として互いを支え合い、生きていた。


そうして二人は成長し、キッシュが20、サンスィヤが17の時、二人は村を出て、町に出た。村の迫害は一向にやまず、なけなしの金はもう底をついていたからだ。


二人は共に雇ってくれる所を探し、そして見つけた。下劣な働き場、見世物小屋だ。


珍しい生き物や人間を笑い者にし、観客を喜ばせ、収入を得る。その仕組みを理解した上で、二人は働いた。他の働き口など、無かったから。


収入はその街の最低レベル以下で、その日暮らしがやっとのもの。けれど、二人は幸せだった。笑われる事はあれど、ここには迫害はない。隣には最愛の人がいる。それだけで充分だったのだ。


そんな二人に、小さな奇跡が訪れる。二人を養子にしたいという人物が現れたのだ。その者の名は「刈宮かりみや 陽人はると」。キミの父だ、フウヤ。


見世物小屋を営む男は難色を示した。二人が稼ぎ頭だったからだ。が、陽人は膨大な金で説得し、二人を迎え入れた。


当然、二人は警戒した。見知らぬ男が突然、自分達を引き取ったんだ。陽人もそれは承知の上。彼は同じ街の部屋を借り、二人と共に生活した。


彼の面倒見の良さは知っているだろう、フウヤ?二人は徐々に心を開いていくどころか、陽人をうっとうしいとさえ思うようになっていった。二人にとって彼は、恩人となった。


その後、陽人は会わせたい人がいる、という事で二人と共に日本に帰国した。二人は緊張しながらも楽しみでいっぱいだった。人生、生きていればこんなに幸せな事があるんだと。二人の未来図は希望に溢れていた。


だが、残酷な運命が二人を引き寄せる。


通り魔。某所にて起きたその事件の概要はこうだ。


一人の男が車を暴走運転し、歩道にいた人々をはね、その後、銃を乱射。犯人は警察に取り押さえられたが、車にはねられそうになった少女を助けようとして、高校生が二人、銃の乱射で弟を庇い姉が、そして弟が亡くなった。


前者の高校生はフウヤ、キミとミレンちゃん。そして後者はキッシュちゃん、そしてサンスィヤくん。


この事件は人的に起こされたものではない。犯人は狂ったようにこう言ったそうだ。


「全ては、全ては冥神の導きによるものなり」と。


この事件を引き起こした張本人、そしてキミ達の真の敵は冥神。天界にいながら世界の全てをんがため、暴虐の限りを尽くして幽閉、後に脱獄し、今も逃亡中の神だ。


彼は同時期に様々な場所で事件を起こしてね。その後始末に終われていた我々の隙をつき、冥神はキッシュちゃん、そしてサンスィヤくんの魂を奪い、自身の元で転生させた。


キッシュちゃんは障害なく転生したが、サンスィヤくんは違った。死の前に、姉が自分を庇い死んだ。その事実を受け止めきれないまま、発狂状態で転生した。発狂状態の彼の耳には誰の言葉も届かなかった。大切な姉の声でさえも。


変わり果てた弟を前にしたキッシュちゃんに、冥神は言った。


「私の言う通りにすればサンスィヤは元に戻る」と。


彼の言葉を信じるしかなかったキッシュちゃんは、転生時に得た能力で自分の手を血に染めながら頭角を現し、クラットスを支配した。自分の弟、サンスィヤを守るように、奥のエリアに配置させ、七紅魔と呼ばれる存在を率いて。


「――以上が、彼女の過去だ」


「……質問がある。その話だと、キッシュやサンスィヤよりも先にオレとミレンが死んでるはずだ。そうなると齟齬が出る。オレらが転生した時にはもうクラットスが手を出し、ディブトーニとレーテリアが戦っていた。つまり、キッシュやサンスィヤが既に暗躍していた事の証左だ。どうしてそうなったんだ?」


「うん。予測済みの質問とはいえ、そこを突かれるのは辛いなぁ。まず、冥神が各地で事件を起こし、その後始末に私達は追われていた。この事はもう話したね?その中でもキミやミレンちゃんの魂だけは先に確保した。キミ達の魂を冥神に奪われる訳にはいかなかったからね。……けど、他の事件で亡くなった人々も冥神に奪われる訳にはいかなかった。勿論、キッシュちゃんやサンスィヤくんもだったが。……私達は被害をこれ以上拡大させない為に対策する班と、魂を保護し転生させる班に分かれた。そうした結果、仕事に遅れが生じる。その遅れの間に冥神はキッシュちゃん達を転生させ、暗躍。私達はそれから遅れてキミとミレンちゃんを転生させ、解決に当たらせたんだ」


「……納得はしたけど、腑に落ちない。じいちゃんがそんな後手に回るなんて」


「まあ、私にも色々あるのさ」


「……?」


「さて、これらの話を聞いて、キミはどうするのかな?」


「……そんなの、決まってる」


手を血に染めてでも弟を、幸せな時間を取り戻そうとしてるなら。


「……キッシュを、倒す。そして、こんな残酷な運命から解き放つ」


「それは想像以上に苦しい道だよ。二人の想いを斬って進む事に他ならないんだから」


「かもね。……けど、オレもたくさんの想いを背負しょってここに来た。いろんなもんを犠牲にして、ここまで来た」


「……」


「オレが正しいなんて思わない。けど」


思い返す。パミッタで会った住民、ハミルさん、ウィルちゃん、コイスさん……。そして、オレらの帰りを信じ戦ってる皆の事。


「オレに託された想いだけは間違ってない。……だから戦う。この戦争を仕掛けた張本人を倒すために」


「……キミが悩んでたどり着いた答え、だね。なら私はそれを応援するよ」


白の世界の一部、じいちゃんが触れた所がボヤけ、鮮明になる。そこから見える景色は、倒れたオレとそれを憐れむように見るキッシュ。


「ここから行きなさい。全部回復した状態で生き返る」


「ありがとう、じいちゃん。……行ってくる」


「……最後に一つ、聞いていいかな?」


くぐり抜けようとするオレを呼び止め、じいちゃんが問いかける。


「キミはキッシュちゃんを救いたいと思うかい?操り人形だったとはいえ、彼女のやった行為は到底許されることではないが」


「……そうだね。やったことは許せない。けど」


じいちゃんの眼をまっすぐ見て、笑って答える。


「救いたい。キッシュも、弟のサンスィヤも。救って、怒って、そんで会いたい。敵じゃなく、友達として」


「……」


「こっ、この事誰にも言ったりしないでくれよっ?……そんじゃ!」


あーはっず!!なんだコレ、はっず!!……でも、正念場だ。もう負けねぇ!!






「……敵じゃなく、友達として、か」


「……救うという答えまでは予想してたんだけれどな」


「……キミは本当に底無しの阿呆だよ、フウヤ」

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