ディブトーニ・レーテリアの専守戦 その8
「…………」
「……我らの勝ち、ということで構わんな?七紅魔」
戦争が終わりを迎えようとしていた。各所の敵兵が概ね無力化され、隻眼の兵士ゲンさん、そして四砲手の方々が集結していた。
「ざっけんなよ……。俺達は、まだ負けちゃ……!!」
「……。いいえ、私達の負けです。ロレット」
「クミル……!?」
「あなたはもう瀕死。強がっていても誰の目にも明らかな程。……私も重傷です。そして兵士も粗方やられました。この戦、私達の負けです」
「てめぇ……!!なに腑抜けた――!!」
「なにより!!……なにより、あなたに死んでほしくない……!!」
「っっ!」
「……あなたは、違うのですか?ロレット……」
「……~~っっ!!くそっ……くっそぉぉぉぉ!!」
「……」
少し離れた所。布に包まれた遺体を前に、四砲手のレービルさんが膝を着く。
「馬鹿者……。貴様は私の活躍を記録に残さねばならんのだぞ……!!」
「レービル……」
「……」
「レビィ……」
綺麗なまま、布に包まれる間もなかったのか、安らかな顔で横たわるキースさんを前に、レビッチェルさんが呟く。
「……あんたらしいわよね。最後まで人を助けてたんだってね。……けどね」
その目から、一滴の涙が溢れた。
「自分を大事にしなさい。そう言ったわよね……っ!?」
「……レビィ」
「……皆無事、とはいかないか」
「レーちゃん!!大丈夫だった!?」
「うむ。……姉上、無事で良かった」
「……前皇帝はどこ?」
「父上と言ったらどうだ、姉上。……敵の襲撃に遭い、療養中だ」
「!!」
「幸いにも命に別状はない、との事だ。気に病む必要はないぞ、姉上」
「っ!?べ、別に心配なんて……!!」
「ふふ。……皆がそうであれば、どれほど良かったか」
「……」
四砲手の方々が悲壮に包まれる。一方、ゲンさんの昔馴染み、ナヴィスさんが一人、国の方へ歩き出した。
「どこへ行く気だ?」
「戦の対局はついた。そうは言っても小競り合いは止まらんじゃろうて。雑兵同士の諍いを止めてくるだけじゃ」
「……何故お前がそこまでする?」
「少々頼みたい事があってのう。この国を変えおった者共に。これはその前金、というやつじゃ」
「…………」
ナヴィスさんが翼をはためかせ、国の方に飛んでいく。……。
「放っておいて大丈夫なんでしょうか?」
「全面的に信用した訳ではない。が、嘘をつくような奴じゃない。今言った事以外はしないだろう」
「……」
「それよりもハドソン。被害の全容は?」
「……現状まとめている最中です。が、家屋の倒壊などが今までの比ではなく、味方の死傷者も民間と兵を含め千はいくかと……」
「……。そうか」
「…………」
「そんな顔をするな、ハドソン。……皆、分かってたはずだ」
「……」
「あの人数差で勝てたのだ。四砲手、そして剛健殿がいなければこちらが全滅することすらあり得た」
「……けれど」
「戦とはそういうものだ。得る物は少なく、失う物は多い。そして権力者はそれに気づかない」
「……」
「……四砲手達も、そしてフウヤ殿達も。その覚悟はあったはずだ」
「……」
覚悟はあった。確かにそうかもしれない。ううん、きっとそうだ。望みながら覚悟をしていたんだろう、あの人は。――それでも。
「……なに、あれ」
『!!』
レヴィさんがそれを見、震える。同時に全員が目撃し、半数は構え、半数はレヴィさんと同様に震えた。
「な、なんだあれは……!!っ、どうしたレヴィ!姉上!」
「……わかんない?陛下」
「っ?」
「なんて、魔力量……!!」
「……私よりも上、とは……!!」
「!!」
全員が畏怖ないしは戦闘態勢に入る中、国の中央に浮かぶ人間の形をしたそれは、遠く離れたボク達にも聞こえる不思議な声でこう言った。
『――恩返し。ボクがキミ達を、助ける番』




