表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/74

ディブトーニ・レーテリアの専守戦 その7

――東地区――


「まったく……。随分と派手に吹っ飛ばしたものだな。クルックー」


囲まれた兵士を、文字通り吹き飛ばし現れたレビィとレミールに、嫌み節にそう語りかけるレービル。その表情は安堵。


「助けるのが遅いアンタが悪いのよー、レービル」


「おや。助ける必要があるとは思わなかったぞ。クルックー」


「変に悪びれても無駄よー。助けようと動いてたの、上から丸見えだったし」


「むっ……」


「はいはい。要らない無駄口はそこまで。……レービル、敵は?」


「来ていた分は片付けたが……見ろ」


レービルが指し示す先には、大勢の敵兵。


「どうやら今日は休憩時間は無しのようだ」


「元よりあるわけないでしょ」


「……仕方ない。もう一働きするかー」


「レーちゃん、ちゃんと無事かしら……」


「信じるしかあるまい。我らはただ、戦うのみよ」


「バラバラに戦うわよー。さっきみたいにまとまって捕まるなんてオマヌケはもうヤだしー」


「そうね。金輪際、アンタと二人で戦うなんて勘弁だわ」


「クルックー。相変わらず仲は悪いままか。……ま、それがらしいか。行くぞ!我ら四砲手が相手だ!」


「アホが一人いないけどねー」


「元よりいないようなモンでしょ。あのバカは」


敵兵に向かい、バラバラに走り出す三人。まとまっていなくても、目指す場所は同じ。






――北地区――


「…………」


「……まだ、戦えるというの……!?」


北地区の戦い。それは他地区の激戦をもその他と捉えられてしまう程、凄絶なものとなっていた。


クミル・ロレットが率いていた軍二千と四百六名。その半数以上を率いて、北地区を守る番人、優柔剛健と戦っていた。


人数差は勿論、こちらは七紅魔が二人。戦力的に充分とクミルは考えていた。が、


「……!!」


未だ衰えぬ暁光。双眸は真っ直ぐクミルを見据える。兵は八割以上倒れ、七紅魔の相棒、ロレットも死んでこそいないが、力尽き伏している。が、剛健は立っている。


いつ倒れてもおかしくない程の血を、いつ使い果たしてもおかしくない程の魔力を使いなお、立っている。自分の見立ては甘かった。そう思うクミルだが、


「……」


同時に彼女は見切った。もうすぐ終わると。


ロレットの魔法が効いている兵士に、クミルは命令する。


「……剛健を、倒しなさい」


走り向かう兵士。クミル自身も、いつ気を失ってもおかしくない程に傷つき、疲弊していたが、倒れる訳にはいかなかった。


「……私が倒れれば、戦線は完全に乱れる。そうなれば……」


――ロレットを、守れない。




――……。


兵士が向かってくる。動きがやけにスローモーションに映る。これが死の間際の瞬間、というやつか。


もう、魔法で避ける魔力ちからと、逃げる体力ちからも、攻撃に耐える生命力ちからも、何も残っていない。


……生きるために、無我夢中で駆け抜けた十代。幸せだった二十代。戦いに明け暮れた後年――。


戦いに生き、戦いに死すが俺の定命さだめ、か。その人生に悔いは――、


(――……)


……?…………ああ、そうか。


「悔いは……あるか」





(おかえりなさい、あなた)


(ぱーぱ、ただいま!)





……もし。もし、叶うのであれば。


「お前達と、また……――」


ザシュッ。





……。……?


予期していた痛みが、訪れない。ゆっくりと目を開ける。


「あーもー!まだこんなにいる訳!?うっとうしいったらないわ!」


「ひ、ひぃっ!こ、怖いよぉ……!」


「!お、お前ら……!?」


俺を庇い立つ、二人の人影が、そこにあった。


「なんで、ここに……!!」


「あのねー、国の危機がどうとか、捕まったわたくしには関係ないし、知らないけどね。“命の恩人”であるアンタを見捨てるほど、義理人情に疎くないわよ、わたくし!」


「ぼっ、ぼくももう、ホントは怖いし戦いたくない。けど……助けてもらった恩は返したい。それにあの人の為にもなるし……」


「……」


ワァーー!!


「っ!」


後ろから大勢の声と共に兵が雪崩れ込んだ。……敵兵ではない。


「兵士の皆さん!とにかく敵の方々の無力化を!三連凶の方々も、お願いします!」


「はいはい、分かってるわよ。……こんなに大勢で戦うなんて久しぶり♪暴れてやりましょ、ウンバ!」


「う、うんっ!ウッホー!!」


「…………」


何で、こいつらは……何で……?


「剛健さん」


兵を率いてきた伝達兵、ハドソンが側に来る。ある人物を伴って。


「アナタは確かにこれまで多くの人を傷つけ、命を奪ってきた。……けれど、それに等しいくらい人々の想いを、命を、そして」


連れてこられた彼女は、涙を溢れさせ、近づく。


「家族を、守ってきたんです」


「……お父、さん」


ハルがゆっくり、ゆっくり一歩を踏み出し、


「……お父さん!!!」


俺に抱きついた。


「お父さん、お父さん……!!!」


「………………」


言葉が出てこない。突き放す体力ことばも、受け入れる度胸ことばも、抱き締める愛情ことばも。


唯一、口から溢れたのは。


「……すまなかった」


今までの、すべての行いに対する懺悔。その言葉で気づかされた。それが俺の本心だったのだと。俺の気持ちはずっと……ハルと、共にいたかったのだと。


「ううん、ううん……!!いいの、いいの……!!ぱぱ、ぱぱ……っ!!!」


「……っっ!!」


涙が止まらない。ここは戦場で、最も気を許してはいけない場なのに。


「…………っっっ!!!」


涙が、止まらない。





「皆さん、彼らの護衛をお願いします」


『はっ!』


「……家族、か」


一人呟くハドソンの言葉は、誰にも届かない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ