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誕生日、おめでとう

「サラマンダー・ゴーレム!」


「ヒィッハァーッ!地獄の業炎!」


っ危なかった……!!ちょっとでもタイミングずれてたらやられてるところだわ。


(――――)


「?」


サラマンダー・ゴーレムが相手のゴーレムを迎撃した時、誰かの声が、響いた。


「主人!」


「っ!!次、あっち!」


「了解だヒャッハー!!」


戸惑ってる暇はない。向こうも何か様子が変だけど……少しだけ。指示もゴーレム生成も休むことなく続けてる。


「ウッド・ゴーレム!」


「むぅ!」


前方から斬りかかってきた身軽な少年ゴーレムの動きを、ウッド・ゴーレムに止めてもらう。


「少年、ここから先は」


「っ」


「むっ!?」


止めてもなお、少年ゴーレムは斬りかかり、ウッド・ゴーレムが倒れる。


「っ!ガード・ゴーレム!」


「かしこまり~」


今のうちに……!


「サラマンダー・ゴーレム、ホモ・ゴーレム!!一気に相手に突撃!!」


「っしゃ任せろッハァー!!」


「任された(イケボ)」


「こっちはっ!」


「……」


「アレスタ・フォートレス、四本角闘牛クワトロ・バイソン!!」


「っ」


四本の角を携えた闘牛が、少年ゴーレムを倒す。……ちょっと、良心が。


(――ちゃん)


また聞こえる。さっきよりも鮮明に。


「なっ……!」


「……主人、すまな……」


「っ!!」


声に気をとられていた間に、七紅魔の前にサラマンダー・ゴーレムとホモ・ゴーレムが倒された。


「ゴーレム二体程度じゃ……私は倒せないよ?」


「っ!!」


大小様々なゴーレムが一気に私に襲い来る。


「ガード・ゴーレム、背中を!」


「かしこまり~」


「アレスタ・フォートレス、サウザンド・ブレード!!」


千本の刀を創造し、半分近くのゴーレムの形を崩す。そして、


「アレスタ・フォートレス、火炎地獄フレイム・ヘル!!」


目の前のゴーレム達を溶岩のように煮えたぎる炎の海に沈める。


「……」


「アレスタ・フォートレス、氷結地獄コールド・ヘル!!」


そして後ろのゴーレム達を氷漬けにし、その機能を停止させた。


「…………」


「ゴーレム何十体押し寄せようと、私は倒せないわよ?」


「……みたい。なら」


再び何十体ものゴーレムを同時に生成し、


「……これで、どう?」


もう一体、いや一匹。ゴーレムと大きく異なる個体、そして巨大な生き物が現れた。


「……ドラゴン?」


「……違う。この子は水竜レータニア。……私の従竜しもべ




「ウィル、キミはやはりこの子を……!!」


コイスさんの呻く声が聞こえる。……水竜って確か町を守ってるどうこうの謂れがあったやつじゃなかったっけ……?


「なんでそんなのが……!!」


「……行って、レータニア。目の前を海原ゼロに変えて」


「ゴアッ!!」


「っ!!アレスタ・フォートレス、火炎弓フレイム・アロー!!」


っ、ダメだ足りな……!!


「きゃあぁぁぁっ!!」


「…………!!」


目の前に展開していた火炎地獄も、後ろでゴーレムを凍らせていた氷結地獄も、何もかも消え失せた。


「……っ!」


「……。ガード・ゴーレムだっけ?あれが最期まであなたを守ってくれたみたいね」


「……」


「……諦める?」


「諦め、ないわよ……!!」


吹き飛ばされて、身体中が痛いけど、立ち上がる。蹲ってる場合じゃない。


「皆が……コイスさんが、フウヤが……私を送り出してくれたのに……諦められる訳ないでしょ……!!」


「……そう。じゃあこれで終わり」


再び水竜レータニアがブレスの体勢に入る。反撃を警戒して、よりにもよって空を翔んで距離を取って。


生成された何十体ものゴーレムはウィルの周りを囲って守りの体勢。……微塵も油断なんてないわね。


「アレスタ・フォートレス……」


「ゴアッ!!」


激しい水流が水竜レータニアから放たれ、水の弾丸となって私に一直線に向かう。……。


全反射鏡オールリフレクション・ミラー!!」


巨大な鋼鉄の鏡を形成し、水の弾丸を跳ね返す。


「ゴアッ」


「……水竜に水なんて効かない。所詮は一時しのぎ」


「アレスタ・フォートレス!」


「っ」


「アレスタ・フォート 電気銃サンダー・ショック・ガン!!」


跳ね返した水流に乗せ電気の銃を放つ。この魔法をレンドは知らない。この世界にない。だから、私は使える。


水の流れに乗って流れた電流は、


「ゴアッ!ガァァァァ!!」


水流を放った水竜レータニア、そして、


『……!!』


水飛沫を浴びたゴーレム達に感電する。


「っ!アレスタ・フォートレス、灼火槍ヒート・スピア!!」


灼熱を帯びた槍を精製、そして墜落していく水竜レータニアに投擲する。これで……!!


ヒュンッ!!


「えっ……?」


ガキィン!!


正確に放った槍は、同じく正確に放たれた剣に弾き返された。


ドスゥゥン……。


「……予想以上。あなたが、ここまでやるなんて」


「……」


ウィルが、自身の投げた剣を拾い、無表情のまま呟く。


「……流石、キッシュが警戒してるだけある。……」


水竜レータニアを愛おしげに撫で、ウィルは囁く。


「……お疲れ様。……もう、休んでいいよ」


「……ゴァ」


水竜レータニアが反応すると同時に、水竜レータニアは光に包まれ、消えていった。


「……もう魔力もあまり残ってない」


「……負けを認めるってこと?」


「……。守護忘呪ガーディアン・カースト


「っ!」


全身から力が、抜け……!?


「……安心して。少しの間、魔法が唱えられなくなるだけ。脱力感も一瞬のはず」


「……」


確かに、一瞬だった。もう力は入る。


「……一体どういう」


カラン、という音と共に槍が転がってくる。


「……確かめたいことがある。……あなたとぶつかれば、分かる気がする」


「……剣と槍の勝負ってこと?私、経験ないけど」


「……ううん、ある。……そんな気がする」


「……」


静かに槍を持ち上げる。……確かに、妙な感じはこの世界に来てからずっとあった。


銃も、剣も、槍も。前の世界で縁なんてこれっぽっちもなくて、持ったことも見たこともないのに。


「……」


手に馴染んでいた。私の中に確かにある違和感。


「……行くよ!」


「っ!」


ウィルが剣で斬りつける。槍の使い方なんて知らないはずなのに、体はそれを捌き、反撃に出ていた。


(――ンちゃん)


聞こえてくる声。懐かしい声。


「……声、聞こえる?」


「っ!?」


「……私は聞こえる。……この声が何なのか、確かめたい」


「……」


剣と槍、せめぎあう中で声は次第にその音量ボリュームを上げていく。


(――ミレンちゃん)


声が一致する。抑揚こそ違う。けど、声の主は目の前にいる。




(――ミレンちゃん)


(――ミレンちゃん、今日ね)


(――ミレンちゃんが笑うと、私も楽しい)


(――ミレンちゃん、ずっと一緒)




「なんなの……なんなのよぉぉぉっっっ!!!」


「っ!」


叫びと共に声が止む。剣と槍の剣戟も止む。


私の槍の切っ先は、ウィルの胸を貫いていた。


「……そっか。あなたは――」


崩れ落ちるウィル。障壁が解かれる。


「ウィル!!」


コイスさんの駆けつける音が遠くで聞こえる。私の視界は、透明に歪んでいた。




「……ミレン、お前もしかして……」




「ウィル!ウィル!しっかりしろ、ウィル!!」


「……お父、さん?」


「ああ、ああ!!そうだ、私だ……!!」


「……どうして私、ここに?ここは……」


「いい!!何も、何も……!!」


「……そっか。私、お父さんと……」


「いい、いい……!!何も、何も思い出さなくていい……!!」


ウィルをギュッと抱き締めるコイスさん。拭っても、拭っても。私の視界は透明に歪んだまま。歪んだ視界でしか目の前の光景を見られない。


「……ごめんね。心配……かけちゃって……」


「いい、いい……!!私が、私が……っ!!」


「……お父さん。私ね……言わなきゃいけないことがあるの。……最期に、聞いてくれる……?」


「……っ、っ……!!」


「……お父さん、誕生日、おめで――――」


ウィルの声が、光と、体と共に消えていく。私の脳裏に懐かしい記憶がフラッシュバックする。



(――ミレンちゃん、また明日ね!)


(――うんっ、約束よ!)


透明な視界が更に歪んだ。



――……。


ウィルが消えていく。天に戻るはずの魂がどこかへと吸い込まれていく。


「……ガーディアン・アンディスペル」


ウィルさんが一つ、呪文を唱える。


「コイスさん、今のは……?」


「……やはり、あなたには効きませんか。でも、皆さんなら……」


「……」


レンドの問いかけに応じず、独り言のようにコイスさんは語りだす。


「…………。ウィルは、とても優しい自慢の娘でした」


ポツリと語り始めるコイスさんの背中は、悲しみと悔しさに震えていた。


「優しく、可愛く、愛らしく。正に天使を体現した娘でした。……あの日、つまらない事で口論になり、家を出て地上へと降り立ったウィルは、行方が知れなくなりました」


「……」


「ウィルを探して連れ帰るまで。その条件でここまで来ましたが、叶いませんでした」


振り返るコイスさんの顔は涙でグチャグチャで、それでもオレ達を慮って、笑顔で。


「……最後に、一つだけワガママを。……どうかあの娘の仇を――――」


笑顔で、それでも残してしまった悔恨おもいをオレ達に託し、コイスさんは還っていった。


「……どうなってるんだ?なんで、コイスさんが……!!」


「……時期タイムリミットが来たんだ。天使はこの世に長く留まれないから」


「天使?どういうことだよ、フウヤ!!」


「……。ウィル、そしてコイスさんは神に仕える天使だったんだ。天使は神の許可無しでは下界、つまりこっちに来れない。……家出したウィルを探してコイスさんはここに来た。連れ帰る、もしくはそれが叶わなくなるまでの条件付きで。でも、ウィルは精神こころと魂を奪われていた。……今も魂は奪われたままだ」


「っ!そんなのって……っ!!」


「……。フウヤ、誰が奪ったのか心当たりは?」


「見当しかつけられてないんだ、水にぃ。確信は持ってないし、そもそもソイツの居場所すら分からない。……でも、オレ達が戦い続けることできっと、見つけられる」


「……。じゃあ、やることは変わらないな」


「うん。……」


号泣するアキハねぇ、涙を流すライラの間を抜け、崩れ落ちたままのミレンの隣に膝をつく。


「ミレン……」


「…………」


『あ、あー。ハローハロー。聞こえてるー?』


場を乱す、不相応な明るい声が響く。ホログラム映像が現れ、赤毛のそれは姿を現す。


「……キッシュ」


『いやー、まさかウィルちゃんが敗れるなんてねー。あの娘、ほぼロボットみたいな状態だったから手なんて抜けない、強敵だったはずなんだけどなー』


「……」


『で、ここまで来た感想はどう?かつての仲間を、恩人を、仲間の娘を手にかけた感想。是非とも聞かせ――』


もう、うんざりだった。コイツの調子に付き合うのも。こんなふざけたゲームに参加するのも。殺し合うのも。――大切な仲間がいなくなるのも。


ホログラム映像に一閃、剣閃を走らせた。


「感想を聞きたいなら聞かせてやるよ、キッシュ。……お前の屍の上でな」


『た……しみ……て……よ』


ホログラム映像が切れる。皆がこっちに集まり、ミレンに手を伸ばす。


「ミレンちゃん」

「ミレンさん」

「ミレンちゃん」

「ミレンちゃん」


「……ミレン」


「……みん、な……」


「……お前に何が起きたのか。話すのはずっと後でいい。……行こう。こんなくだらないこと、終わらせよう」


「…………」


静かにオレの、皆の手を取るミレン。涙は止まっていた。


「…………」


ステージ上に転がる冷たい鍵を拾い、進む。第六のエリア、キッシュとの対決へ。

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