ディブトーニ・レーテリアの専守戦 その4
「はぁっ、はぁっ……っ!!」
「……っ」
「……!!」
北側地区。七紅魔の二人、ロレットとクミル、そして三連凶、優柔剛健の戦いは死闘と化していた。
血が流れ、衣服に滲む。息はあがりきり、互いの体力が底をつきかける。
「……今、です。兵士達、彼を……!」
「……俺らで弱らせた。てめぇらでもいける」
「し、しかし……!!」
兵士が躊躇する。弱らせた、そう言ったロレットの言葉に嘘はない。が、
「……!!」
剛健の双眸。まだ諦めていない、獰猛な獣を彷彿とさせるその気迫が兵士を留まらせる。
「……ったく、世話が焼ける」
「ろ、ロレット様」
立ち上がるロレット。夥しく流れる血の量は既に気を失っていても不思議でない。彼もまた、気迫で立っている。責任、そして、惨めな姿を見せたくない一心で。
「……奴を倒せ」
「……」
兵士達の目が虚ろになる。ここに来る途中、ロレットがかけた魔法、暗黒催眠。効果を受けた者を一度だけ、強制的に命令に従わせる魔法。その効果が発現した。
「……兵を強制的に、か。効率的だ」
自嘲気味に笑う剛健に、数百人の兵士が押し寄せる。
「だが」
残り少ない体力・魔力を振り絞り、迫りくる兵士を迎え撃つ剛健。兵士達が崩れ落ちていく。
「……俺の好みではないな」
多勢に無勢。正しく当て嵌まるその現状に、剛健は不敵に笑う。
その後ろ。味方の兵士が二人、気絶していた。
――西地区――
「レールさん、大丈夫ですか!?」
戦塵が収まりを見せる中、聞こえてくる声に耳を傾ける。
「……大丈夫に見えるか?」
「……」
「とはいえ、死にはせんがな。……すまん、戦線離脱だ」
「……敵は?」
「粗方、無力化したっす」
ビードルの声がし、駆けつけてきたハドソンに返す。
「……すみませんっす。自分がしっかりしてれば」
「なにを謝る。謝るのは私の方だ」
「父上!まだ動いては……!」
「大丈夫だ、レーテリオン。……自分の身は自分で護る。そんな当たり前の事ができなかった私に、何を謝るか、ビードル」
「レールさん……」
「……ハドソン、状況は?」
「北地区、東地区ともに人員不足です。戦局は……今は有利ですが、いつ変わってもおかしくないかと」
「……レーテリオン」
「は、はい!」
「兵を二つに分けろ。東地区はビードル、北地区はお前が兵を率いて向かえ」
「……お断りします」
「何、をっ?」
レーテリオンに担がれる。……傷が痛む。
「東地区をビードルに委せるのは賛成です。が、北地区はハドソンさんにお任せします」
「ぼ、ボクですかっ!?」
「私は、無茶をしがちな父を見張らなければなりませんから」
「……」
「いいですよね、ハドソンさん」
「……分かりました」
「ビードル、お願いします」
「分かったっす!この勅令、命に代えても!」
ビードルとハドソンが兵に伝達を行う中、レーテリオンが私を担ぎながら国の中央へと向かう。
「……医療班の所、か」
「ええ。母もいますし、これを機に説教してもらおうかと」
「傷よりも深いダメージを負いそうだからやめてくれ」
「自業自得です。戦場での油断は命取りと口酸っぱく言っていたのは父上ですよ」
「……返す言葉もない」
「ふふ」
「……。大きくなったな、レーテリオン」
「もう大人ですし。……育ててもらった恩、まだ返しきれてないんですから、死なないでくださいよ」
「死ぬものか。死んだらティファニーに何をされるか分かったもんじゃない」
「あははっ」
「……少し寝るぞ」
「ええ、おやすみなさい」
目を瞑る。歩く度に揺れる感触が、どこか懐かしかった。




