創造もやっぱりチート
「……ミラージュ、解除」
私とハルちゃんを覆っていた透明な膜が、合図と共に何も無かったように消えていく。
「す、凄いですね。ミレンさんの魔法……」
「かなりチートよね」
創造なんて魔法、ファンタジーではほとんどご法度でしょうし。
「でもこの魔法、どうして最初から使わなかったんですか?」
「……。ま、魔力、割と使うから」
「忘れてたんですね……」
「で、でも使うのは本当なのよっ。だからこうして節約してる訳だし」
途中ですれ違った兵士が、サンレンキョウがどうのこうのって言ってたし。多分、ヤバいのがいる。こういうところで節約しなきゃね。後が怖いわ。
「フウヤさん、無事だといいですけど……」
「もし捕まってたら助ければいいし、大丈夫よ。うん」
この時、少し油断していた。敵の接近に気づなかった。
「おやおやまあまあ。こんな所に子羊が二人も。あらあらまあまあ」
「っ!誰!?」
和服を中華にアレンジしたような独特のドレスを纏った、濃い化粧の奴が現れた。……男?
「ふふふ。わたくし、ディブトーニ王国、三連凶が一人、旅歴と申します」
あ、男だ。
「アンタ、もしかしてオカマ?」
「まあ。出会い頭になんて事を。わたくし、りっぱな男ですわよ」
絶っ対ウソね。って、そんな事はどうだっていいわ。
「どいてくれる?この国のトップ、ディゼーニに用があるの」
「どいて。はい、そうですか。とはいきませんわよ。あなたたち、反乱分子かしら?」
「違うわ。この国に文句を言いに来た、流れの者よ!」
「文句……?もしや、この国を変えに来てくださったのかしら……!」
何を思ったのか、目の前のオカマは泣き始めた。
「わたくし、いつか……いつかこんな日が来るのを夢見ておりましたの……!兵役なんてもうウンザリ……!さあ、こちらへ。陛下は奥の間に」
「……じゃ、通るわね」
「み、ミレンさん!あの……!」
「大丈夫。信じて」
「…………」
不安そうな顔をするハルちゃんの手を引いて、オカマの横を抜ける。その瞬間、醜悪な声でオカマが呟いた。
「お嬢さんたち。一つ良いことを教えてあげる。世の中そんな……甘くはないわよぉぉ!!」
「消えっ……!」
背後を心配そうに見ていたハルちゃんが驚きの声をあげる。
「そうね。そんなに甘くないわ」
「なっ……!」
すばしっこく動いていたオカマを、ゴーレムが捕らえていた。
「な、なによこれぇっ!!」
「アンタに聞こえないように魔法唱えてたのよ。アレスタ・フォートレス、フェアリー・ゴーレム。妖精の速さで動くゴーレムよ」
「ゴーレム……!?なんでそんなものが!」
「私の魔法、創造なのよ。アンタが私たちを罠に嵌めてハルちゃんを狙ってたのも気づいてたわ。そこまで分かれば対策は簡単よね」
「そ、創造……!?」
「全部終わったら離してあげるわ。もちろん、その後は牢屋行きだけどね」
三連凶、ねぇ……。ううん、油断はダメ。気を引き締めていこう。
「ミレンさん!その……ありがとうございます」
「何言ってるのよ。当然でしょ?さ、行くわよ。皇帝に会いに」
「は……はい……!」
この時、私は気づかなかった。ハルちゃんの心の変化に。