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託される想い

「……」

「……」


数秒、間があった。こらえようとしていたが、足がもたなかった。


「……見事、だ」


そう、掠れ消え行くような声でグレンは呟き、崩れ落ちた。


「……ふぅ。間一髪だな」


「フウヤくん!!」

「フウヤ!!」


バリアが解かれ、皆が駆け寄ってくる。……幼女がいればなあ。


「フウヤくん、大丈夫!?」


「ん、あぁ平気平気」


「平気ってアンタ、怪我してるじゃない」


「こんなん擦り傷だよ。ツバでもつけときゃ治る」


「汚っ」


「……化膿してはいけませんし、手当てしないと」


「……分かった。ちょっと野暮用あるからその後頼むわ」


「野暮用?」


「……一人、違う所にいるだろ」


視線を飛ばして立ち上がる。向かう先には伏したグレン。その側にはライラの姿。


「……」


「……何、してるんですか。こんな所で」


「…………」


「みんな……みんな、待ってますよ」


「…………」


「フウヤ……?」


ミレンの問いかけに、オレは答える。


「……グレン。七紅魔の一人。そして、かつて連れ去られたゲツさんの旦那、ハミルさんだ」


「!!」


「……。やれやれ。これだから裏社会は嫌いなんだ」


「ハミル、さん……」


ゆっくり体を起こすハミルさん。


「……大きくなったな、ライラ」


「……なんで。なんで、あなたが……!!」


「……簡単な話だ。私の刀魔法に気づいたアイツらが私を利用したんだ」


「娘さん達とゲツさんを人質にか」


「ああ。……守るもののためにと、非情になって戦ってきたが、ここらが潮時だったか」


「……何、言ってるんですか」


ハミルさんの肩を担いで、ライラが立ち上がる。


「なんでもう、全て終わったみたいな言い方するんですか。……らしくないじゃないですか」


「……」


「どれだけ絶望的な状況下でも、私達に希望を与え続けてくれた……太陽みたいに私の、私達の心を照らし続けてくれたあなたが……どうしてもう、諦めてるんですか」


「……諦めてはいないさ」


そのしっかりとした穏和な双眸で、ハミルさんはオレを見、ライラに笑いかける。


「後を託せる者が来てくれたんだ。……もう、私一人で戦う必要はない」


「……」


「それに、ライラ。キミがこんなにも頼もしく成長してくれた。……親代わりとしてこれ以上ない幸せだ」


「……何、言ってるんですか」


瞳から雫がこぼれ落ちる。拭うことも隠すこともなく、ライラは震える声で言葉を繋ぐ。


「私……まだ口が悪いんですよ。礼儀も、作法もまだまだだし……性格だって、矯正しなきゃなんです。カザちゃんもヒナちゃんも、まだ父親が必要なんです。……あなたが必要なんです。あなたがいなきゃ……あなたじゃなきゃダメなんです……!!」


「……参ったな」


ライラの涙をそっと指で拭い、頭を撫でながらハミルさんは悲しげに笑い、


「……負けたその時、いやこの地位に就かされてから……死ぬ覚悟はいつだってできている。そう思っていたのに……」


静かに涙を流した。


「……死にたくない。カザやヒナ、ゲツにもう一度会いたい。そう、思ってしまう……」


「ハミル、さん……!!」


「……けれど、その願いは叶わないんだ」


「えっ?」


『その通り~』


ホログラムが現れる。真っ赤な髪色の少女、キッシュ。


『残念だったね~、グレン。いや、ハミル。いい線いってたんだけどね~。今一歩足りなかったか~』


「……随分と良心的だな、キッシュ。最後に会話をさせてやる程優しいと思わなかったぜ」


『おろ?もしかして私、非道だと思われてた?悲しいな~、これでも人の心はあるつもりだよ』


「……」


『でも、そろそろ会話は終わりだよ、ハミル。敗者は消えなきゃ』


「……ああ」


「いや!待ってください!!」


『んー、いい悲鳴ー。感動的ね』


「……」


『……フウヤくんもその憎悪の視線、バッチリと受け取ったよ。……最後にハミル、一言どうぞ』


「……」


オレに向き直り、ハミルさんは強くこう言った。


「……敵は隣の大陸にいる」


「!!」


その言葉を最後に、ハミルさんは消えた。


「…………ハミル、さん」


『んー、重い空気。それじゃ私は』


「キッシュ」


いつまでものらりくらりとした態度のキッシュ。一言言ってやらないと気が済まなかった。


「待ってろ。必ずてめぇをブッ倒す」


『……楽しみにしてるよ』


映像が途切れる。悲しみが空間を支配する。


「…………」


「ライラさん……」


「行こう、ライラ」


手を差し出す。自分で立ち上がるのを促す。


「……フウヤ、さん……」


「……落ち込むな、なんて言わない。けど、いつまでも落ち込んでもいられない。……オレ達は進むしかない。辛い現実が待ってても、歩みを止めちゃいけない」


「……」


「……ハミルさんの気持ち。想い、きちんと繋げよう」


「うっ…………わぁぁぁぁぁぁん!!」


耐えきれなかった想いが爆発する。最後、枷を止めていたものが外れ、溢れだす。


オレにはそれを受け止める義務があった。想いを受け継ぐ者として。

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