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ディブトーニ・レーテリアの専守戦 その3

――少し前、西地区――


『うぉぉぉぉーー!!』


「怯むなー!押し返せー!」


『うぉぉぉぉーー!!』


ディブトーニ・レーテリア連合国(仮)の西地区。軍勢対軍勢による白兵戦が幕を開けていた。


「ぐぁっ!」


「がっ!」


武器がぶつかる音。剣戟、銃声、悲鳴が入り交じる。


「誰一人死ぬな!そして、死なせるな!!」


『おー!!』


「……やっぱ変わってるっす」


「何がだ?」


「とぼけても無駄っすよ、レールさん」


騒音の中、迫り来る敵一人たりとも国の中枢に踏み込ませず、一人一人峰打ちしながら、ビードルとレールは言の葉を交わす。


「誰一人死なせない……敵も、なんて。従来の戦争じゃ考えられない、ありえないことっす」


「……かもな」


「かもじゃないっす。前のアンタなら敵の安否なんて気にも留めない、むしろ息の根を止めてたはずっす」


「人を非道のように……」


「事実非道だったっす。……何がアンタを変えたんすか?」


「……何が、か。そんなもの、私にも――」


ザシュッ


「え……っ!?」


「……」


戦場において一瞬の気の緩みも許されない。そんなことは戦場に出る者にとっては常識であり、歴戦のレールにとって、もはや言うまでもなく身体に染み付いた事。


にも関わらず、その身が刀剣に貫かれているのは重ねた年齢けいけんに体がついていかなかった故か。あるいは――


「ちっ……父上ーーーー!!!」


――自身でも気づかなかった、変化故か。




――東地区――


「クルックー。この程度か雑魚共ー!!」


『ぐぁぁー!!』


「ちょっとー、殺しちゃダメよー」


「クルックー。分かっているともさ。きちんと加減はしている。面倒だが、陛下の仰る事だからな」


「……アンタ、そのなりで何気に忠誠心は人一倍よね」


「クルックー。私を拾い上げて下さったお方だぞ。感謝しかないわ!」


「ふーん。ま、どうでもいいけど」


「クルックー!だろうな」


「……」


マイペースなレビィ。話しながらも敵を無力化するレービル。黙々と目の前の敵を薙ぎ倒していくレミール。方法・手段は異なれどその勢いは止まらず、敵の猛攻を削いでいく。


「……過剰戦力だったかしらね。こっちは」


「……。そうでもないみたいよー」


「っ!?」


『うぉぉぉーーーー!!』


「っ伏兵だと!?いかん、囲まれるぞ!!」


一般兵と分断されるように、三人が囲まれかける。


「まずい、このままでは……!!」


「……せーのっ!!」


「ん?ぷぎゃっ!!」


囲まれる寸前、レビィがレービルを思い切り蹴飛ばす。


「ぐはっ!何、を……」


レービルが振り返った時にはもう、二人の姿は敵兵に囲まれ、見えなくなっていた。


「…………っ!!バカ者め……!」


「レービル様!!レミール様達が……!!」


「分かっている。……全軍、引き続き目の前の敵を無力化せよ!壊滅次第、あちらに合流する!!」


『は、はっ!』


「……これでいいのだろう。バカ者」


――……。


「どういうつもり?」


レミールと二人、敵に囲まれた状況下。真っ先に口を開いたのはレミールだった。


「三人仲良く囲まれたんじゃ、兵の指揮なんてできないでしょー。指揮に向いてるのはアイツだから放り出しただけよー」


「……アンタと二人とか、最悪だわ」


「奇遇ねー。私も同じ気持ちよ」


「仲良く力合わせて戦うなんて最悪中の最悪よ」


「そうねー」


「……けど、アンタとこんな所で仲良くお陀仏なんて地獄すら上回る最悪さだわ」


「……そうね」


レミールが敵を睨み、そっぽを向く。合わせて私も反対方向を向く。


「……背中は任せたわよ」


「ええ。……私も背中くらいは預けるわ」


「……終わったらお茶でもしましょ」


「ついでにお菓子もねー。あのバカ持ちで」


「いいわね。……」


「っ!」


同時に駆け出す。恐れるものなんて、何もなかった。

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