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消失剣

「ん?その呼び方……もしかして、フウヤか!?」


「う、うん。水にぃ、どうしてここに?」


「……まあ、色々あってな」


「……なんだこれは。聞いていないぞ」


見た目が全然変わってるが、フウヤだと分かるその少年の前に立ち尽くす奴は、唖然としてこっちを見てる。……。


「フウヤ。コイツ、敵ってことでいいんだよな?」


「うん」


「オッケー。んじゃあ一層遠慮なく戦える」


「……」


怪訝な顔を浮かべる目の前の奴。


「そんじゃおっ始めよーぜ!」


「っ!」


地神って神から頂いたろくでもない剣で斬りかかると、なんか無機物が邪魔してきた。……ゴーレムか、これ?多分そうだろうな。


「っ」


真っ二つにしようと切り裂くも、感触が悪い。……全然斬れてないな、これ。


「何者か知らんが、この攻防において最高峰のレシェフ・ゴーレムを破れるとは思わんことだ。そして」


パチンと前の奴が指を鳴らすと、同じ見た目のゴーレムがわんさかと現れた。10、20……60か?


「同機のゴーレム、しめて66機が貴様を潰す。そこの二人はどうせ逃げれん。後でいたぶってやる」


……おれを潰すのは前提っつー訳ですか。


「やれやれ、参ったな」


「勝機はないと悟ったか?」


「ちげーよバカ。舐められすぎてて参ったんだよ」


「……なんだと?」


「66?……少ねぇだろ」





「ち、ちょっとフウヤ。大丈夫なの、あの人?あんなに煽って」


「大丈夫。っつーか敵が哀れだわ」


「えっ?」


「水にぃ、ちょっとキレてる。……少し本気が見られそうだ」





「少ないとは抜かす。一機でも倒してからそういう事は――」


一閃。刀を一振り。その瞬間、ゴーレムはその胴体を失っていた。


「……はっ?」


「……消失剣とは名前の通りだな。斬った部分を消すとか。ぞっとしない。……ま、相手が無機物だからこそ遠慮はいらないわけだが」


「かっ、かかれかかれー!!」


ゴーレムがわんさかとやってくる。相手が美女・美少女なら大歓迎だったんだが。


「生憎、てめぇらは歓迎してねぇよ」


技を使うまでもない。ただ専心し、一つ一つ目の前の物体を斬る。


「ばっ、バカな!我が国の最新鋭のゴーレムが……!!」


一つ一つ一つ。消していく。斬っていく。残ったのは男ただ一人。


「最新鋭、ねぇ……。どんだけ最先端を追い求めようが、古来のものに何の敬意も抱いてない時点でアンタの負けだよ」


「こ、古来だと……?」


「っつー訳だ。悪いが、くたばれや」


「……。くっ、くっくっはははは!!」


狂ったように笑いだす男。さっきの悲壮感はもう振り払われていた。


「愚か者!!ああ愚か者よ!!貴様らはあの方の偉業を何一つ知らずに軽んじる!ああ愚か者!!この地はあの方の造りし物というに!!」


「……?」


「貴様らは後悔する!!あの方に立ち向かった事を!歯向かった事を!!蟻が何億匹集まろうがムダムダムダぁ!!あの方は必ず蹴散らす……!!」


「っ!フウヤ!」


「ああ!」


「へっ、きゃっ!」


フウヤが女の子抱き抱えて離れる。おれも同時に。


「ムダだ!――――様に栄光あれぇぇ!!」


目の前が爆ぜる。歪な空間が朱く染まる。部屋を囲んでいた壁が崩れる。


「……ってて……あれ、おれ生きてる?」


「みたいだね。セーフだよ、水にぃ」


ケホッと短く咳き込みながら、瓦礫の中からフウヤが顔を覗かせると同時に女の子も顔を出す。


「……死んだかと思ったわ。今のなに?」


「敵の自爆だ。打つ手が無くなった途端にコレとか……後味悪いったらねーぜ」


「……フウヤ。もしかして今、何かしたか?」


「ありゃ。水にぃにはやっぱ分かっちゃうか。まあその辺の話とかは後で――」


「っ!それよりフウヤ!緊急事態とはいえ、乙女の身体に無遠慮に触るとか、どーいう神経してんの、アンタ!?」


「いや緊急事態なんだから仕方ないだろ。はーあ、後で全身消毒しなきゃな」


「消毒じゃなくて消滅なら手伝ってあげるけど?私が」


「……。もしかして、二人付き合ってんの?」


「…………は?」

「…………は?」


めっちゃ剣呑に返された。フウヤ、兄ちゃんその目やめてほしいぞ……。


「誰が好き好んでこんなBL年増女を――」


「ホモ・ゴーレム」


「お、飯の時間か?」


ヌッと現れたのは謎のでっかいゴーレム。……身体の震えが止まらないのは不穏なワードを聞いたからかな?そうだ、そうに違いない。フウヤが襲われてるけど気のせいだ。きっとそうに違いない。


「水にぃ助け……ギャアーーッ!!」


……南無。


「……えっと、聞いていい、ですか?」


「なんなりと。麗しのレディー」


うん、フウヤの彼女じゃないなら狙っていいな!可愛いし!勿論おれのストライクゾーンだ。


「……。あなた誰ですか?どうして私達を助けてくれたんですか?」


「まあそっからだよねぇ、うん。……おれは水弥。フウヤの剣の兄弟子だ」


「……兄弟子?」


「し、しぬかと……思った……!!」


フウヤがさっきのゴーレムを倒してやって来た。


「……フウヤ。この人がアンタの兄弟子って本当?」


「おう、まずてめぇは謝罪して靴を舐めてからそういう質問を――」


ヌッ。


「おう、本当だよ。転生する前に一緒に剣を習ってたオレの兄弟子だ」


さっきのゴーレムが現れた途端、フウヤは態度を180度回転させた。うん、気持ち分かるぞ、兄ちゃん。


「よくしてもらってたんだよ。色々と。けど……」


「え、なんで急に悲壮感漂ってんだ、フウヤ?」


「……そっか。立派な男になる前に死んじゃったんだな……あんなに女好きだったのに」


「おいドコ見て言ってるやめろバカ。女の子の前でそういう事言うのやめろバカ」


「……最ッ低」


女の子が蔑む。やめて、その視線は効く!童貞にはつらい!


「水にぃは女性なら誰でも大好きで、性別が女なら誰でも口説くオレをも上回る変態だ。召される寸前のばあさんから生後一日の赤ん坊まで。ゆりかごから墓場まで愛するが信条だな」


「…………」


女の子が離れた。


「フウヤ。誤解を与えるような発言は控えような。な!?」


「ぐにぇっ。ふぁ、ふぁっふぁ」


「……で、ここからどうやって出るのよ?まだ幻術かかってるみたいで扉も何にも見えないけど」


「んー……どうしようか考えてたけど、必要なさそうだわ」


「えっ?」


ッこの気配は!!


『フ~ウ~ヤく~ん!!!』


バリィン!!と何かが壊れる音がした。と同時に現れた複数の人物。


そのうちの一人、幻術を物理こぶしで壊した少女を目にした途端気づいた。アイツだと。


「フ~ウ~ヤく~ん!!」


「ぶべしっ!!」


その少女は一番にフウヤに抱き着いた。


――……。


「フウヤくんフウヤくん。心配した!すっごく心配したようえ~ん!!」


「大袈裟だっての」


「だって!だって~!」


涙が止まらないアキハねぇを渋々ながら泣き止まそうと背中をさする。


「アキハさん、すっごく心配してたのは本当だぞ。半狂乱になってゴーレム達潰してるその姿は怖かったけど……」


「家族をくしたくない気持ち、とても伝わりました……!」


「BLデブ男は心配してくれた事の感謝と謝罪が先では?」


「む……」


暴言年増の暴言はさておき、言ってる事は正論だ。……。


ポンッ


「心配してくれてありがとな、アキハねぇ。オレは大丈夫だから」


「ぐすっ、ホントぉ……?」


うっ、美少女涙目上目遣い……!!いかん、我に返れ、オレ。これは姉これは姉……。


「ホントにホント。……心配させてごめんな」


「……ううん。無事ならそれで」


キュッと優しく抱き締めるアキハねぇ。……ほぁぁぁぁ!!!


「オイフウヤ?その手はなんだ?」


「む……無我の境地、天国ヴァルハラへと我至れり……」


「至ってねぇよ!?」


暴走しそうな手が誰かに捕まった。


「ほーい。そこまでだ、フウヤ」


「……。はっ!オレはここ!今は誰!?」


「転生しても幼女に興奮するのは治んないのな」


「……もしかして、水くん?」


「やっぱお前か、アキハ。なんだそのちんちくりんな身体は」


「えっへん!!フウヤくんの為に頑張りました!!」


「どこまで弟の為に体張ってんだこのバカ姉は!!そんなだから……!!」


「そんなだから?」


「……。イヤ、なんでも」


「……えっと、悪い。アキハさん、フウヤ。その人は?」


「んー……話長くなるだろーし、ここで野宿にしないか?」


「はっ!?ここで!?」


「敵は倒した。残党がいるかも分からんが、ミレンのゴーレムに見張らせとけばそうそう問題ないだろ」


「はっ!?敵倒したのか!?」


「ああ。……って訳で頼めるか、ミレン」


「そりゃまぁ構わないけど」


「じゃ決まりっつーことで。……水にぃ、先にそっちの事情話してもらっていいか?」





「あれはお前らが死んだことを知った次の日のことだ」


簡単にレンド達に自己紹介を済ませた水にぃは、ここまでの経緯を話し始めた。


「お前らが死んだことを知って、かなりショックでな。可愛がってた弟分と大好……長い付き合いだった幼馴染みが同時にいなくなったからな」


(今、大好きって言いかけなかった?)


(まあ、もう少し聞いてろ)


ミレンからヒソヒソ話が飛んできたが、短く切った。オレが言わなくても水にぃならきっと自爆する。


「フラフラと外に出たおれは……トラックの前に出てそのまま」


「おばかー!!」


「どべし!!」


アキハねぇのビンタが炸裂した。


「どうしてもっと自分の命を大切にしないの!?」


「そりゃお前もだろが!!聞いたぞ、フウヤの後を追ったんだってな!」


「私はなによりもフウヤくんが大切だからいいの!!でも水くんは違うでしょ!!」


「違わねぇよ!!おれだってお前が大――!!」


「たい、なに?」


「……っ何でもねぇ!とにかく!自分の命を大切にしなかったお前にあーだこーだ言われる権利はねぇ!!」


(……フウヤ)


(分かったろ?水にぃはアキハねぇが好きなんだよ)


(よくあれで今までバレてねぇな)


(ですです)


レンド、暴言年増も参加してきた。


(アキハねぇと水にぃは幼馴染みで付き合い長いんだけど、アキハねぇは自分の色恋に関しては超鈍感で、水にぃはみなまで言い切れないヘタレのツンデレ。それがここまで水にぃの初恋を引っ張ることになっちまったんだよ……)


(なんて残酷な……)


(言いきればいいのに。ツンデレは損するだけよ)


(…………)


(なにその、私が言う?みたいな顔?殴っていい?フウヤだけ)


(どうぞどうぞ)

(どうぞどうぞ)


(お前ら、オレだけ売ってんじゃねーぞ!!)


「――と、話戻すぞ」


冷静になった水にぃがオホンと咳払いした。


「まあそんな訳で死んだんだが、フウヤ達を転生させたっつー地神に助けてもらってな。何か欲しい物一つ持ってけるからこの世界を救えだの言われたんで、この剣貰った」


そう言って水にぃが見せたのはさっき使ってた剣。なんとこの剣、魔剣となっておりまして、通常100円のところ、タイムセールと致しまして99%OFFの1円!お電話はこちらまで!!(大ウソ)


「魔剣っぽいね」


「ああ。消失剣っていう斬った部分を消すおっかない武器だ。剣ならなんでもっつったがコレはなぁ……」


短くため息をついた水にぃは続けてこう言った。


「次はそっちの事情だ。あと、メシもくれ」





「なるほどねぇ……。そんな敵地のド真ん中だったのか、ここ」


よほど腹が減ってたのか、尋常じゃない勢いでメシを平らげた水にぃ。


「そゆこと。当面の目的はこの国の敵を倒すこと。協力してくれる、水にぃ?」


「当ったり前だろ。おれは正義のヒーローになる男だぜ?」


「……ボクはね、正義のヒーローになりたかったんだ」


「急なフェイトやめろ。古参に怒られっぞ」


「月姫リメイクはよ」


「この間来たんじゃなかったか?」


「マジで?やんなきゃ」


「……で、だ。フウヤくんよ」


ふー、とため息をつきながらオレの肩に手を回す水にぃは、そのままギュッと力を強めた。


「ぐがが……」


「いきさつは分かったよ、兄ちゃん。うん、大変だったのも分かった。けどさ……女の子侍らせすぎだろぉぉ!!兄ちゃんだって、今までそんな事なかったぞ!?」


「水にぃ、モテなかったもんね」


「…………」


「ぐがががが……!!」


「あ、水弥さん」


「水弥お兄さん、と呼んでくれてもいいんだよ。ミレンちゃん?」


「水弥さん」


「くすん。……何?」


「フウヤ、彼女もできましたよ」


「貴様は殺す。絶対にだ」


「ぐげぼ……!!」


タップするも手を緩めない水にぃ!!ミレン、てめぇぇ!!


「ふっ」


ざまあみろ、と嗜虐的な笑みを浮かべる年増。ぜってーなんか仕返ししてやる!!


「もー、水くん。嫉妬も程ほどにしないとダメ、だよ」


アキハねぇがオレと水にぃを引き離す。た、助かった……!


「お前がそれ言う、アキハ?」


「私は成長したのです。お姉ちゃんは日々弟のために成長するのです。……私、知ってるもん。フウヤくんは必ず私の元に戻ってきてくれるって」


「成長のカケラも見受けられないな」


「……ね?」


「なにが?ねぇなにが?」


あ、ヤバい。アキハねぇの目がアレだ。ヤンデレだ。ボク知ってる。大体こういう時の主人公は刺されてデッドエンドなんだー。……話を変えよう。


「ところで水にぃ。なんで空から落ちてきたの?」


「……落とされた街、ニーベルって所で親切にしてもらったおれはその街で食糧をもらい、旅立った」


おっとこれ、長くなりそうだぞ?


「どこへ行ったもんか。とりあえずでかい街を、と教えて貰ったこのクラットス目指して歩いてると……奴に出会ったんだ」


「やつ?」


「でっかいニワトリ」


「……はい?」


「そのニワトリはどうやら野良で、体長はゆうに3mあった。そんなでけぇニワトリはおれをエサと認識することはなかったんだが……持ってたリュックの中の食い物に気づいて飛びかかってきたんだ」


「う、うん……」


「で、あろうことかリュックごとおれを持ち上げて飛んで、途中でおれとリュックを引き離して、足で蹴ってポイ捨てされた」


「それ、なんて緑髪の剣士?」


まんま空島のアレだよね?リュック奪われたのは違うけど、シチュエーションまんまアレだよね?


「あんのくそニワトリ、今度会ったら承知しねぇ……!!鶏肉のソテーにしてくれる……!!」


水にぃと巨大ニワトリの(どうでもいい)運命フェイトが誕生した!!

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