ディブトーニ・レーテリアの専守戦 1
「おっ、よーやっと見えてきた」
アクセサリーをジャラジャラ鳴らし、馬に乗ったロレットが気だるそうに呟く。
「アレだよなー?今回攻め落とすディブトーニとレーテリアってのは」
「そうです。……ですがロレット、もっとしっかり気を張り詰めてください。実力ある七紅魔とはいえ、足元掬われますよ」
「へーへー。ったく、クミールはお堅いねぇ、昔っから。色気の無さは変わらねぇっての」
バシン!!と鞭がロレットの馬に当たる。
「あっ、おいバカ!馬に当たんな!」
「くだらない事を言うあなたが悪いのです」
「……短気め」
「そろそろ兵士にあれを。もう近いですから」
「おーう。んじゃ、やっとくわ」
ロレットが後ろを向いている間、私が前に出る。
「……っ、ロレット」
「あん?なんだよ」
「……予定を変更します。私達は西からではなく、北から崩します」
「……なんだよ。やべぇのでもいんのか?」
「ええ。キッシュですら警戒する相手です」
優柔剛健。……気迫で分かります。噂通りだと。ただ……、
「……一人?」
何か狙いが……?
――ディブトーニ・レーテリア陣営――
「レール殿達は西東を!私達は南北を守る!」
「了解した。……皆の者、必ず生きて戻るぞ!」
『うぉぉぉー!!』
「クルックル。出番か。腕が鳴るな」
「気ぃ抜くんじゃないわよー」
「アンタが言う?それ」
「レービル、レビィ、レミール。キミ達は東を守ってくれ。私は父と共に西を守る」
「ちょ、レーちゃんも出るの!?」
「ここで戦わねば皇帝とは言えまい。……頼めるか、レミール」
「っ、そ、そりゃレーちゃんの頼みなら死んでも守るけど……」
「大丈夫だ。父上もいるし、ビードル殿もいる」
「任せてください。レールさん達は死んでもお守りするっす!」
「……約束して。生きて戻ってくるって」
「勿論。妻にもう一度会うまで死ぬつもりなどないさ。……ところで誰か、サウダールを見なかったか?」
「宮殿の広間にいるわ。待ってるように伝えてる。お利口さんだから大丈夫よ」
「そうか。助かった、レビィ」
「はいはーい」
「……」
「クルックル。なにやら剣呑な雰囲気だが戦は待ってはくれんぞ?さあ我が優秀な部下達よ!我の勇姿、後に語り継ぐため参るぞクルックー!!」
『うぉおー!!』
「……私達も行くわよ、レミール」
「……。ええ」
レール達、レーテリア側の兵士が戦線に向かう。
「私達は例の作戦通り、南を守るぞ。北は彼に託そう」
「……すみません、隊長」
「なんだ、ハドソン」
「……言うか言うまいか、ずっと迷っていました。……実は――」
「――――っ!!」
ハドソンが隻眼の兵士達に伝えた真実。それが後の戦局を大きく変えた。
――ディブトーニ・レーテリア国、北側の壁――
「……始まったか」
フウヤの作戦。それは四方のうちの一つ、北側を俺に守らせるというもの。……ふっ。
「……同情なんてものではないな。アイツの目から分かる。あれは単に誰も死なせたくないだけ。その為に持てる戦力を使う。ただそれだけ。……が、見誤ったな」
フウヤの作戦には一つ、条件があった。それは窮地と判断したならすぐに応援を呼ぶこと。その為に兵を三人つけていたが。
「……すまんな」
兵はもういない。ここに居るのは俺だけ。
「……」
馬の駆ける音が響く。……百、千か。
「…………」
待たず、駆け出した。己の罪を清算する為に。




