いーやーだー!!
「……戻ってきましたか」
激戦を制し、店に戻ると、暴言年増がいた。
「温泉は?」
「温泉?……ああ、あのハゲですか。さあ?どっか買い物にでも行ったんじゃないですか?」
「いや知っとけよ、受付」
「受付ならついさっき辞めましたよ」
「……は?」
オレが思わず間抜けな声を出すと、暴言年増は淡々と言ってのけた。
「あなた達に着いて行くと決めたので。今日から私も晴れて逆賊の徒というわけです」
「ちょ、ちょっと待ってくれライラさん。何で急にそんな――」
「いえ、前から決めてましたから。その様子だと、このエリアの七紅魔倒したんでしょう?」
「……」
「無言は肯定と受け取ります。そこのBLMブス男には言いましたが、私、天涯孤独なんですよ。仮に死んでも金の像が建てられ、親衛隊が悲しむだけです」
「……」
「戦力にはなりませんが、旅は道連れと言いますし、どうです?」
「ヤダ」
「ヤダと来ましたか。その根拠は?」
「オレの胃が痛くな」
「じゃ決定でいいですか、皆さん?」
「聞けやぁぁぁ!!」
根拠聞いといてスルーすんなや!
「いや、その……どうする?」
「危険ではないでしょうか。さすがに一般の方は……」
「え?」
「あぁいや!私もですが!!……それでも危険かと」
「私は賛成よ」
「ミレンちゃん?」
「だって……」
ニヤリと意地の悪いBL年増らしい笑みを浮かべ、オレをチラリと見た後、こう続けた。
「コイツの嫌がる顔見れるんでしょ?何の損もないわ。むしろ得ね」
「てんめぇぇ!!」
「そんな本音は置いといて」
「てんめぇぇ!!」
「着いていきたい人がいるなら、拒む理由なんてないでしょ?危険だから、なーんて理由じゃ引き下がらないでしょうし」
「……分かってるじゃないですか」
「まあね。私でもそうしたでしょうし。……異論ない?みんな」
「オレはあ――」
「そうですね。私も危険を承知で参加させて頂いていますし」
「私も賛成ー!フウヤくんを堕とす方法、色々知ってそうだもん、ライラちゃん」
「堕とすって……。まあ、ミレンちゃんがそう言うなら」
え、ウソやん?オレ以外みんな賛成?なんで?WHY JAPANESE PEOPLE?
「さ、アンタだけよフウヤ。観念なさい」
くっ、年貢の納め時か……!
「だが断る」
年貢?ああ、来年納めます。
「いいって。良かったわね、ライラさん。これからよろしくね」
「耳無し年増聞けやオイ」
「ライラ、でいいですよ。他の皆さんもそう呼んでください。ああ、そこの虫けらM男はライラ様で」
「やだやだやーだー!ライラが仲間はイヤなのー!」
『…………』
「……やーだー!!」
「やめない精神だけは凄いと思いました」
絶対零度の視線にさらされても、イヤなものはイヤなのー!!
「フウヤ、アンタの意見は聞いて」
「やだやだー!!」
「……もう決定事項で」
「やーだー!!うわぁぁーん!!」
「……アレスタ・フォートレス、スリーピィー・ゴーレム」
「ふわ……なぁに、ご主人……?」
「……儚い系美少女ゴーレム、だと……!?」
突如現れたのは、眠たげな眼をこする薄衣を着た可憐な美少女。年齢は……13、歳。
「I LOVE YOU!」
「……スリーブ・ブリザード」
「アイ……あれ、おかしいな。パトラッシュ……ボク、なんだ……ぐー」
意識が途絶えた。
――……。
「……ご主人、今のなにー?」
「変態よ。あなたを呼んだのはアイツを黙らせるためだったんだけど……」
「もう静かになってるから……寝ていいー?」
「……そうね。おやすみなさい」
スリーピィー・ゴーレムを土に還す。……やっぱ変態、スリーピィー・ゴーレムにも反応するのね。薄々感じてたけど、使いづらくなっちゃったわね。
『……』
皆が唖然として口を開いてる。な、なに?
「ミレンちゃん。ここ、貿易ギルド……」
「……あ」
みんなが一様に私を見てる。……もしかしてこれ、まずい?
「今の……魔法、だよな?」
「魔法を使える奴が、なんでこんな所に……?」
「他国から来た奴か?でも魔法使うってんなら危険じゃねぇか……?」
ザワザワと囁き合うギルドの人達。
「ミレンちゃん、離れよう」
「そうだね。すぐ捕まえる流れになってないにしろ……この視線にはあまり晒されたくないかな」
「……はい」
「落ち込まないでください、ミレンさん。誰しもミスはあります」
「そ、そうです。あまり気を落とさず」
ライラさんとコイスさんにも励まされる。……それもこれも。
「アンタのせいなんだからね、フウヤ……!」
目覚めたら絶対一発いれてやる!
そのまま扉の所に行くかと思ったけど、レンドが立ち寄りたい場所があるみたいで、着いていく。
「……あ」
着いたのは、ゲツさんの宿屋。
「……暫く来れなくなるかもだから。最後に改めて挨拶を、さ」
「レンドさん、死ぬんです?」
「いや、死ぬ気はないけどっ。……念のため」
「あっ、レンドくーん!!」
「ちょっ、カザずるい!!」
真っ先にレンドに抱きつく二人。フウヤが寝てて良かったわ。
「ぐ……ぎ……おのれ、レン……ド……!!」
「夢でうなされてますね。さすが超ド級の変態ロリコンです」
「今のが夢に反映されたんだねー。……」
「アキハさん、ストップです。それは後にしましょう」
……何をしようとしてたのかしら。ううん、それより。
「レンド」
「うん。……ごめんな、二人とも。当分ここには来れそうにないんだ。だから改めてのさよならだ」
「え……。そんなのやだやだ!」
「カザもヤダ!レンドくんとまだもっと一緒にいたい!」
「こーら二人とも。ワガママ言うんじゃないの」
「ゲツさん……」
ゲツさんが泣き出しそうな二人をたしなめ、レンドと私達に笑いかけた。
「薄々そんな気はしてたよ。……大変だろうけど、頑張んな」
「ゲツさん、まさか気づいて……」
「さてね。……元気でやんな。ほらカザ、ヒナ」
「……!レンドくん、絶対絶対また会おうね!」
「その時はヒナをお嫁にしてね!」
「ちょっ!カザもお嫁にしてね!絶対の絶対だよ!」
レンドはそれに頷かず、苦笑いで返し、私達もそれぞれ頭を下げ(フウヤは無理矢理頭を下に下げさせ)、その場を離れた。
「……さーて。カザ、ヒナ。これから忙しくなるよ!」
「……で、いつまで寝てるつもり?」
「……バレたか」
「フウヤさん、起きてたんですか?」
「ついさっき」
「なーにがついさっき、よ。ゲツさん達の時にはもう起きてたでしょ」
「やれやれ。めざとく空気読まない年増だぜ」
「ホントに空気読めないならとっくに起こしてるわよ。アンタ本当に別れるの苦手ね」
「ほっとけ」
「え、何ですか。強がってカッコつけて別れを悲しまないタイプの人です?うわー、引きます」
「勝手に引いてろ。いーだろ、苦手なもんくらい誰にでもある」
「…………」
「もうホントにヤダ!この人!」
フウヤが心から嫌がるのを見て、本当にライラさんがいて良かったと思う。愉快だわ。
「なんだてめー、年増ぁ。愉快神父みてぇな面しやがって。麻婆でもキメてんのか、おぉ?」
「うわ、完全に八つ当たりです。これが現代のコミュ障ニートによる社交術って奴ですね」
「おう、すごいだろ?」
「開き直ってる辺り頭やられてますね。え、冗談ってご存じないです?」
「……」
「その辺にしてやって、ライラさん!!」
フウヤをいじりながら歩いてると、大きな扉の前に来た。……本当に大きい。見上げても上が見えない。
周囲に人はいない。やけにここだけ閑散としていて、建物一つ建ってない。
「フウヤ、鍵だして」
「へいへーい」
鍵穴に差し込まれる鍵。それはピタリと当てはまった。
「……じゃ、開けるぞ」
ギィィ……とゆっくり扉が開かれる。私達は一歩、足を踏み出した。




