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敗者の末路

ズザッ、ガッ、ドッ……!!


ガースの身体が横に吹っ飛んでいく。その身体にはもう、力は宿っていなかった。


「はっ、はぁ……くっ……!」


やっべ、力抜ける……!


「レンド!!」


フウヤ達が駆けてくる。……勝利のVサインとか、堂々とやりたかったなぁ。


「大丈夫、レンド!?」


「ミレンちゃん……うん、大丈夫。ごめんな、心配させて」


「……バカっ」


ジト目で睨まれる。あっ、なんかいいかも……。


「……ガースが倒された事で、バリアは解除されたみたいだな」


「みてぇだな、っと」


「レンド、どこに……?」


「まあ、ちょっと。ミレンちゃんにも聞きたいことあるけど、それよりも先に、な」


力が抜けきった足をどうにかこうにか動かして、ぶっ倒れてるガースに近寄る。


「ごふっ……。いい拳だったにござるよ、レンド氏」


「……何故だ?」


力を使い果たし、何の未練も残っていないと訴えたげな眼に問いかける。


「お前、奥の手があったんだろ?」


「……」


「それが何かは知らない。けど、あの瞬間、お前はそれを使おうとしてやめた。何故だ?」


「……簡単なことにござるよ。レンド氏」


満足げに笑ったガースは、かすれ声で続けた。


「拙者の持ち札はアンデッドと地獄弾ヘル・ガン……。そこにイレギュラーな持ち札を使っては反則にござる」


「……」


「ましてや、そちらの持ち札を全て知った上で対戦に挑んでる。その時点で有利点アドバンテージはこちらにあった。……持ち札で負けた時点で、拙者の負けにござる」


「……」


「二度も敗北するとは思わなかったにござるよ。レンド氏、主は立派なもののふにござる」


「……ガース」


『あーあ。負けたか。というか負けてあげちゃったか』


「っ!」


どこからか聞こえる声の主。振り返ると、中央に女性が立っていた。


「誰だ!?」


『えー、わかんないー?私を可愛いって言ってくれたんだけどな、レンドくん』


その女性は赤毛の茶髪で八重歯を生やしていた。……あれ、この子。


「……やっぱ敵だったか。キッシュ、だったか?コンテストに参加してた」


『さっすがフウヤくん!覚えてたね!ボクが見込んだだけあるよ!』


「……なに?この沸き上がる強烈な殺意。フウヤくん、殺っていい?殺っちゃっていい?」


「ムダだよ、アキハねぇ。……ホログラムだろ、それ」


『ピンポンピンポーン!大正解~!!』


「……ホログラム?」


フウヤに尋ねると、険しい顔つきで答えが返ってきた。


「実体のない映像だ。リアルタイムのな。……お前、どこでそんな技術を?」


『おっと。ボクは質問に答えに来た訳じゃないよ。お別れを言いに来たのさ』


「お別れ?」


『そう。そこのボクの“元”仲間にね』


「キッシュ氏……」


『へーんな感じすると思ったら、やっぱり手抜いたか。知り合いがいるって分かった時点でキミには期待してなかったけど、残念だよ。キミ、けっこー気に入ってたんだけどな』


「……後悔はないでござるよ、キッシュ氏」


『そ。じゃね』


キッシュ、と呼ばれた少女が指を鳴らした瞬間、ガースの姿が消えた。


「……今、何を?」


『バリアのルールに従っただけだよ、ミレンちゃん。弱者に明日はない。この世から消えてもらったのさ』


「なっ……!」


「……」


『んー。そんなに驚くことかな?ボク達に弱い輩は必要ない。むしろ逆。力が欲しい。だから消してあげたんだよ。より強い力の贄とするために』


「贄……?」


「……」


『そう思うでしょ?さっきから険しい顔したフウヤくん?』


「オレはそう思わない」


ハッキリと睨み付け、フウヤが低く、強く主張する。


「弱かろうがうっとうしかろうが、憎んでようが……仲間に変わりない。オレはお前に賛同しない。そしてお前も、オレに賛同しない」


『……いいね。やっぱりボクの思った通りだ。楽しませてもらえそう』


「あぁ、あれ?オタク、負けても楽しめる派?」


『ふふ。勝負は勝ってこそ楽しいのさ。……さて、キミ達にこれからのルールを説明してあげるね。じゃないと不公平だ』


「ルールだと?」


『シンプルだよ。負けたらこの世から消滅する一対一のデスゲーム。今回は分かりやすくボタン式にしたけど、次からは自動適用だ。今、流行りの理不尽系デスゲームに則った形さ。その代わり、試合は平等だけどね』


「平等、ねぇ……そっちはオレらの手の内知ってんだろ?ズルくね?」


『ズルくないよ。一度だけ、外部からのパワー……能力値アップをそっちには認めてるもん。さっきのミレンちゃんの奴みたいなね』


「へぇ、寛容なこった」


『……。あー、そうそう。ボクは最奥部一歩手前にいるから、会いたければそこまで来るといいよ。それじゃ、ご武運を』


ホログラム、とやらの映像が消え、明るい声が消失する。


「……デスゲーム、か」


「フウヤ……」


「……全員、死んでも勝とう。そして、戻ろう。あの平穏な日々に」


「ものすごくフラグ臭しない、それ?」


「フラグを立てて折る。そうすることによって負ける確率がだな」


「あの、お二人は何の話を?」


「気にしなくていいよー、コイスさん。……さて、と」


「?アキハさん、何を?」


「……あった」


チャリッと音を鳴らしてアキハさんが拾い上げたのは何かの鍵。


「多分、次のエリアへの扉の鍵だと思う」


「な、なるほど……どうしてそれがここに落ちてると?」


「向こうがどうやら“平等に”物事を進めたいらしいからね。無いと不公平だもん。……フウヤくーん」


「なげっほげほ!!」


「思い出したように咳するのやめてくれる?地獄に落ちて糸登ってもう一回地獄に落ちて」


「それなんて蜘蛛のいげっほげほ!!」


「……。アレスタ・フォートレス、想像抗生クリエイション・ワクチン


「げっ……あれ?」


「ウィルス消しといたから。これで咳止まるでしょ」


「てんめぇぇ!!そういうのあんだったらとっとと」


スッ


「……。治して頂きアリガトウゴザイマス」


「分かればいいのよ」


「…………」


スッ、スッ。


「?」

「アキハさん、今何を?」


「うん。後で話すよ」


「?」

「?」


「……ま、いっか。それよりもさっさと次に行ってこのくだらないゲーム終わらせましょ」


「ああ。……とりあえず、戻るか。おーい、レンドー。行くぞー」


「ん、ああ。……」


「肩、貸そうか?」


「ああ、いや。体力はもう大丈夫みたいだ。……。いつか酒でも飲もうや」


「えっ?」


「あーいや、なんでも」





レンドが立ち去る。ガースが倒れ散った場所に、一つのゲームソフトが置かれていた。


『リトル☆ティンクルス~ALL Star Version~ seasonⅡ』

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