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すごくどうでもいい因縁

「む、あれは……」


この地域を歩いていた拙者は、その日発売のゲームソフト、『リトル☆ティンクルス~ALL STAR VERSION~』を求め並ぶ長蛇の列を発見した。様々なルートに対応し、ギャルゲーとしてもエロゲーとしても楽しめるという逸品にござる。


話題作ゆえ、この長蛇の列は納得にござった。戦に明け暮れている国にござるが、それはそれ。戦だろうがなんだろうが、紳士の嗜みは誰であろうと何であろうと止めることはできぬことをご承知頂きたく。


「むぅ……潔く最後尾に並ぶでござるか」


ま、予約してるから大きな問題はござらん。なら何故並ぶかと?そこに意味など求めてはいけないにござるよ。


「…………」


暇にごぞる。前の同志に話しかけるか。


「すまぬ、少しよろしいか?」


「?誰だ、アンタ?」


「ああ、すまぬ。拙者、ガースと申す者。待機は暇にござるから話し相手が欲しく、話しかけた次第にござるよ」


「あー、なるほど。いいよ、俺も暇だったし。俺はレンド。よろしくな、ガース」


この時、運が良かったと思ったでござる。拙者が話しかけて答えてくれる人物など稀。大概は通報されてしまうにござる。そこをきちんと答えてくれたばかりか、相手は超がつくイケメン!コレはイケメンのツテで美少女と……などと妄想していたにござるよ。





「なるほど。レンド氏はギャルゲーメインで買う気なのでござるな」


「ああ。知り合いはエロゲーメインらしいが……ガースは?」


「拙者もエロゲーメインにござる。少し畑が違ったにござるか……」


「ちょっとくらいたいしたことねぇよ。人それぞれの楽しみ方があるんだ。気にせずいこーぜ」


何このイケメン。性格もイケメンにござるか。今まで畑が違うと分かった途端に戦争に持ち込んだ紳士崩れ共とは話にならないレベルにござる。この時、拙者は初めてヲタ友と呼べる者が出来た気がしたでござるよ。




「――レンド氏、分かっておられるな!そう、女性に一番大事なものは照れ・恥じらい!これは欠かすことのできない萌え要素にござるよ!」


「全くもってその通りだ。……お前とは最初の畑こそ違ったが、それ以外は一致してるな」


「唯一無二の親友を得た気分にござる」


「何言ってんだ。もう親友だろ?」


「レンド氏……!」


この時、拙者とレンド氏の想いは一つだったにござる。いや、アルファベット二文字に繋がる意味ではなく。……が、そんな幻想は現実リアルの壁に壊されたにござるよ。


「えー、お待たせしました。コレよりリトル☆ティンクルス~ALL STAR VERSION~の販売を開始します!」


野太い歓声が拙者らを含む待機組から上がる。


「予約組とそうでない方に分かれて販売を行います。左右に分かれて列を形成してください」


予約組だから拙者はこっち、と。予約には今回特別特典もある。故にレンド氏もきっとこっちに……、


「……」


「……」


左右に分かれた。まるでこの差に深い溝があるがごとく。


「……ガース。お前、予約組か?」


「うむ。特典目当て、で……レンド氏、まさか」


ここで拙者もレンド氏も気づいたにござる。拙者とレンド氏の嗜好には、絶望的な程に越えられない壁がある事に。


「……ガース。俺にはどうしても許せない嗜好がある。……●●●●●だ」


R18指定にされたくないので、適当な文字数と伏せ字でお送りしてくでござるよ。


「……レンド氏、それは拙者にとってのケンカ文句とみなしてしまうでござる。今すぐ撤回して頂きたい。拙者は●●●●●が好きでござるからな」


この時、レンド氏の青筋がピキッとした気がしたでござるよ。


「……。撤回、だと?●●●●●が苦手なやつもいる。俺もそのうちの一人だ。それを許せない、といって何が悪い」


「●●●●●も文化の一つにござる!それを許さない、受け入れないとは紳士にあらず!ヒロインの●●●●●を受け入れることが紳士道でござる!」


「真の紳士道はそんなもん必要ない。純心、純愛、純情……それが全てだ」


拙者達二人の間に冷たい風が巻き上がる。やがて動き出す行列に倣い動き出しながら、どちらからともなくこう言ったでござるよ。


「……後で屋上に来い」


――……。


「その後、熱い決闘の末、拙者は完敗したにござる。命は辛くも繋ぎ止めたが、プライドはズタズタだったにござるよ。……その借りを今日、まさに今返せているのは僥倖にござるよ」


「てめぇ……!」


「おーやおや。随分とボロボロではないかにござる。きっとお仲間もハラハラしていなぃぃ!?」


ガースの驚愕の声に振り返れば、コイスさん以外まったり茶をしばいてやがった。……てめぇら……!!


「おい!こちとら真剣勝負してんだぞ!ちっとは関心見せろや!」


「いや……想像の遥か斜め下をいくどーでもいい因縁だったんで」


「うん。今回はフウヤくんに同意かな」


「……悪いわね、レンド。珍しく私も覗き魔と同意よ」


「その代名詞、いつになったら取れんの?」


「地獄に行ってからかしらね」


「お前が?」


「地獄に堕とすわよ」


「関係ねぇよ!てめぇも一緒に地獄に堕ちろ!」


「わかった、堕とすわ」


「ネタが伝わらないと悲しいよね。人間だもの。フウヤ」




「随分と信頼されてるようにござるなぁ、レンド氏」


「……今のどこを見てそう思いやがった」


「だが、拙者のゾンビを跳ね返せていない現状の逆境からどう逃れるか……見物にござるなぁ!」


ガースが追加のゾンビを沸き上がらせる。……あー、てめぇはシリアスやってくれんのね。なら切り替えられる。


「……見物?見物にされんのはてめぇの方だ、ガース」


「銃と格闘技しか取り柄のない主に、何ができるでござるか!」


「知らねーのか、ガース。銃にだって色々あんだぜ……アレスタ・フォート、ボム」


作り出した小型のそれを安全装置を外し、放り投げる。地面に衝突した瞬間、それは爆発した。


「…………」


モクモクと燻る煙の中、ニヒルに笑い、ガースに告げる。


「これが……銃の真骨頂だ」


「どう見てもただの爆弾にござるよねぇぇ!?」


「……いつから銃しか使えないと錯覚していた?」


「いや今、銃って言ってたよね?銃の真骨頂とか言ってたよね?なんでそんな平然としてられんの?あ、もしかして恥ずかしいのを隠そうとしてるでござるな、レンドし――!!」


ガースが青ざめる。足元にはさっきよりも大型の球体。


「爆ぜろ」


爆音と共に、ガースの足元が吹き飛んだ。

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