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双子ロリッ娘と暴言年増

「で、宿屋ってどこなのよ?」


「あー、目星つけといた。あっちあっち」


ダッシュを終え、頃合いを見てスローペースになり合流。さっきの奴に指定しておいた宿屋に着く。宿元しゅくげんの岬、と看板に書かれている。


「げ……ここかよ」


「知ってんのか、レンド?」


「ここに泊まった事があってな……」


イヤそーな顔をするレンド。……ははーん。


「さては苦手な奴がここにいるな、レンド?ならばその弱点、つくしくかンンありえない!!」


「サイテーね、アンタ」


「イケメンの粗探しのためならなんでもしますとも。なっ、コイスさん?」


「えっ、いや私は……」


「コイスさん困らせてんじゃないわよ。レンド、大丈夫?ここで」


「……うん。大丈夫。前に来た時、また顔見せるって約束もしてたしね」


ハァと短い溜め息をつくレンド。くく、たまには貴様も苦しみを味わうが良かろうて!!




「あっ、レンドくんだ!」


「えっ、レンドくん!?わー、久しぶりー!!」


「おう、久しぶり」


宿屋に入った途端、幼き美少女達がレンドに抱き着いた。……。


「会いたかったよ、レンドくん~!!」


「ちょっと、カザの方が会いたかったんだからね!」


「違うもん!ヒナの方が会いたかったもん!!」


「ぬぬぬ……!!」

「むむむ……!!」


「はーい、ケンカも程々にな。カザ、ヒナ。泊まりたいんだけど、ゲツさんいる?」


「お母さん、二階にいるよ。おかーさーん!!」


「……来ないね。来るまでゆっくり待と、レンドくん」


「あっ、ずるい!ヒナもヒナも!」


「……レンド」


「……おう。ある程度の覚悟はしてるさ」


「……その可愛らしい女の子達は?」


「前にここに泊まった時、知り合った双子で……」


「レンドくんのお友達?初めまして、ヒナです!レンドくんのお嫁さんです!」


「ちょ、ずるいわよヒナ!あたしはカザ!ヒナよりもあたしの方がレンドくんのお嫁さんです!」


「違うもん!ヒナの方だもん!」


憎しみって、こんなに簡単に芽生えるものなんだね。いや、今までもモテる事に対して妬いてたりはしてましたよ?でも、本気じゃありませんでしたよ。相手、年増だし。ちくしょー、ぐらいなもんで。


……だが、今回は話が違う。レンド、てめぇはオレを怒らせた。


「レンドくん、ちょっと外を散歩してこないかい?」


表出ろ、ゴラァッ!


「その怪しすぎる笑みはなんだ?」


「えっ、レンドくんお散歩行くの?わたしもわたしもー」


「こら、ヒナ!抜け駆けは許さないわよ!」


「……やはり中でゆっくり今後の経済について話そうか」


たまには屋内でやるのもやぶさかではない。


「中でお話?ならヒナもするー」


「あたしも!レンドくんにお話したいこと、いーっぱいあるんだから!」


「もうヤダ、この幼女ガード!!」


はぅっ……!幼気すぎる少女の無垢なる憧れによる他意のない姉妹喧嘩。なんて……なんて美しすぎるの……!とりあえずその中心にいるレンドは後で思い切りはっ倒す。


「レンドくん、この不審者っぽい人だあれ?」


「あ、カザが聞こうと思ってたのに!」


「ふ……知り合いだ」


てめ、今不審者として紹介しようとしやがったな?後でぶっ倒す!


「ちょっと紹介しとくよ。この、床で咽び泣いてるのがフウヤ。二人と同い年に見えるけど、実はお姉さんなのがアキハさん。立ち往生してるのがコイスさん。そして、離れた所で見てるのがミレンちゃんだ」


「……」

「……」


幼女シスターズは互いに顔を見合わせて頷いた後、咽び泣くオレの傍らに立ち、呆れて見ていたらしいミレンに言い放つ。……み、み……。


「ミレンさん」


「聞きたい事があります」


「な、なに?」


「ズバリ、あなたはレンドくんのお嫁さんになりたい人ですか!?」


「へぇっ!?」


瞬時に恋する乙女のようなすっとんきょうな声をあげる年増。み……みえ……み、みえ……。


「ち、違うわよ!誰があんな……!わ、悪いやつではないけど!」


「……恋愛対象として見てないってことでいいんですか?」


「あっ、当ったり前よ!」


「…………」


幼女シスターズの後ろでしょんぼりするレンド。……見えた!


「そっか……良かったよー、カザ!」


「良かったね、ヒナ!」


「これでレンドくんのお嫁さんはわたしだけ!……むむ!」

「これでレンドくんのお嫁さんはあたしだけ!……ぬぬ!」


白と……水……。ああ、また争ってる。発端だけは解せぬが、幼女姉妹の喧嘩ほど顔を綻ばせるものはない。


「はーい、ケンカしないでねー。ミレンちゃん、この子達と交流深めに行こっ?」


「えーやだー!レンドくんといるー!」


「あたしも!」


「レンドくん達はね、今から大人の話をするの。行こ?」


「えー。でも……」


「帰ってきた時にはレンドくんが二人きりでデートしてくれるよ!」


「なら行く!」


「ヒナも行く!」


「ちょっ、アキハさん!?」


「いいからいいから」


チラッとオレを見るアキハねぇ。やべ、バレた?


「……分かりました。ミレンちゃん、よろしく」


「分かったわ。そっち、よろしくね」


「了解」


宿を出ていくヒナちゃん、カザちゃん……。


「這って動く――」


「やめい」


「ぐはっ!!」


ブリッジしながら、伝説のロリコンじいさんよろしく動こうとしたら容赦なく踏みつけられた。……レンドぉぉ!!


「一度ならず二度までもオレの激昂を突くか……!よろしい、ならば戦争だッッ!!」


「残念。一方的な虐殺だ」


「うぉふっっ!!」


更に強く、オレの貧弱な腹筋をイジメにかかるレンド。


「こっ……ここまで堕ちたか、アインツベルン……!」


「誰がアインツベルンか。ったく」


足を退けるレンド。ふっ、その油断が貴様の命取りよぉっ!!


「レンド、かくっ――」


カチャッ


「なんだって?」


立ち上がった瞬間、眉間に拳銃を突きつけられた。……。


「かく、かく……かくかくしかじか四角いムーブ?」


「なるほど。で、言わなきゃいけない事があるよな?」


「レンドがいかに年増を愛してるかを年増に伝――」


ガンッ!


幼女ヒナちゃんとカザちゃんのスカートの中覗き見てマジスンマセンでした」


「もう二度と?」


「バレないように覗きます」


ガンッ!


「覗きません」


「よろしい」


もー、ちょっとボケただけなのに二発も撃つなんて~。マジレンド氏ってば~。


「あ、あの二人とも……」


「あ、コイスさん。いたのか」


「ええ、まあ。……あの、先程の女性、いらしましたよ」


コイスさんの後ろに、さっきの暴言年増が。


「うわー。男二人で、昼間から宿屋でSMプレイとかハードル高いですね」


「頭沸いてんじゃねぇの、お前?」


「沸いてません。通常的かつ一般的な思考です」


「嘘だッッッ!!」


「で、呼びつけたってことは何か聞きたいことがあるのですか?M男」


「オレがいつ虐げられる事に悦びを見出だしたよ。幼女相手ならともかく」


「私、暇じゃないんです。とっとと本題に入ってください。BLM男」


……呼び方改める気ないどころか悪化させやがったなこの暴言年増。……まあいい。シリアスモードに入ろう。


「お前の願望を叶えられる手助けが出来るかもしれん。話を色々と聞かせてくれ」


「……すみませんが、BLM男には、私の実は虐められたいという潜在的欲求を満たせるとは到底……」


「やっぱ頭沸いてるわ、お前」


さっきから話が進みやしねぇ!誰のせいだ!


「お前のせいでもあるな。改めて聞こう。キミは――」


レンドの話を、人差し指で制した年増は、辺りを見回す。


「……せめて、部屋の中でお願いします。その……色々マズイので」


「気ぃつけろ、レンド。狙ってる。狙ってるぞ、このアマ。惑わせてるぞ」


「狙ってませんー。ツバつけただけですー。イケメンのSなんてご馳走、そう簡単にありつきませんー。それに今の会話も惑わせてませんー。ちょっと艶かしく言っただけですー」


「うっせぇ、年増」


「やれやれ。これだから未経験のお子様は」


「よし決めた。表出ろ」


「話をややこしくするな!……で、部屋の中か。ちょっと待ってくれ。今――」


「いやいやお待たせしてゴメンね、お客様。ご予約は……って、レンドくんじゃない。いらっしゃい。久しぶりね」


奥の階段から出てきたのはあたしん◯の母みたいな、およそ人間とは思えない二足歩行の生物。


「……ゴジ◯?」


「失礼極まりないだろがバカ」


「ふみゅっ!」


レンドに頭はたかれて変な声出た。


「あっはっは!なんだか分かんないけどいいねぇ、その呼び方!そう呼んでくれてもかまわないよ。本名はゲツって言うんだけどね」


豪快に笑うゴジ……ゲツさん。


「ゲツさんはこの宿屋の女将さんで、さっきのカザちゃんヒナちゃんのお母さんだ」


「……この生き物が?ふみゅっ」


くっ、また変な声が……!これなら年増に思い切り殴られた方がまだマシだ!


「あっはっは!似てないだろう?主人にも私にも似てなくてねぇ。生まれた先間違えたんじゃないかってくらいさ!」


……なんか、昭和の肝っ玉母さんって感じだな。昭和生まれじゃないけど、オレ。


「ウチに泊まるのかい?レンドくんなら大歓迎さ。娘達もきっと喜んで……って、ライラ?あんたなんでここに?」


このゴ◯ラと知り合いだったのか、ライラと呼ばれた暴言年増は身を抱え、瞳を潤ませて言った。


「この人達に……誘拐されて……!」


「来てくれって頼まれたんだね、深くは聞かないよ」


「……ゲツさん、ノリ悪ーい」


「悪くて悪かったね。あんまりレンドくん達に迷惑かけないようにね」


ジャラジャラと受付の中で何かを探すゴジ……ゲツさん。やがて顔を覗かせ、鍵をレンドに手渡した。


「今回は大所帯みたいだからね。一番広い部屋を用意しとくよ」


「ありがとうございます、ゲツさん」


「いいのいいの。こっちも娘達が遊んでもらってるみたいだしねぇ。今回も、アンタが来てることは秘密かい?」


「はい、お願いします」


「オーケー。二階に上がって、右端の部屋ね。中で二つに区切れるから、男用、女用で使い分けなさいな」


そのままレンドや暴言年増、コイスさんを伴って部屋に向かう。……コイスさん、影薄いな。居たの忘れそうだわ。


中に入ると真っ先に目に入ったのは二つの大きな和室。その手前に和室よりは小さいがくつろげそうな居間。テレビも置いてる。


「すごいな、こんなに大きな部屋」


「前に来た時はここまで大きな部屋には当てられてなかったから、俺もビックリだ。ま、今回は男女混合だしな」


「……ああ、女いたな。アキハねぇか」


「ミレンちゃん聞いたらぶっ飛ばされるぞ。今の発言」


「私が伝えますよ。異性と認識されてないばかりか、それはもう酷い暴言をぶちまけたと」


「虚実織り混ぜんな。っつーかアンタ、ギルドん時とテンション違うな。あっちん時は元気系っぽかったが」


「あれは営業スマイルです。もう酒場と化しているギルドに、女漁りに来たクズ共に少しでも早く死んでいただけたらと」


「暴言はなにひとつ変わんないのな」


「さて、本題に入りましょうか。まず、あなた達の目的は?」


「いーまからいーっしょに、これからー一緒に、なっぐりに行こうかー♪」


「この国に殴り込みと。なるほど、やはりあの人の言ってた通りでしたね」


「YAH~、YAH、YAH~♪YAH、YAH、YAH、YAH~♪」


「ボケを貫き通すな!……あの人って?」


「言いません。秘密なので」


……秘密ねぇ。


「そう言われたら、ちょっとアンタを信用するのは気が引けるな。オレ達を捕らえるためのスパイなんて可能性も出てくる」


「もしそのつもりなら、酒場でセクハラされたと騒いでましたよ。それだけであなた方はブタ箱行きですし。私に仕える紳士ドエムは多いんですよ?」


「……せめて外見を教えてくれ。知ってる奴なら信用する。そうじゃなけれぱ警戒して動く」


「分かりました。まあ、外見は伝えてくれ。怪しまれるだろうし。って言われてますしね」


「言われてるんかい!ならスッと言えや!」


「70歳ぐらいのおじいさんでした。少し白髪混じりで、人の良さそうな方でしたよ」


……爺さんで、オレ達の事を知ってる……。


「…………」


「フウヤ?」


「あ、いや。なんでもない。……分かった、信用するよ」


「私がまだ信用しきってないのですが。いつ、あなた方に襲われるか、ずっとビクビク震えてますよ」


「ならその素振りを微塵でいいから表に出せ。……オレ達はこれから貿易の建前で副市長とコンタクトを取る。それからトップの奴の居所へと行き、見つけたが最後、フウヤ様の華麗なキックで解決し、次のエリアに行くつもりだ」


「華麗なキックの割には貧弱な体型ですね。足も上まで上げられなさそうです」


「おう、今見舞ってやろうか?今日は頗る調子がいいんだぜ?」


「やるならこの方に」


「……。私ですかっ!?」


「やめろ。無実なコイスさんを巻き込むな。……目的は話した。信用するかどうかはアンタ次第だ」


「……アナタだけなら間違いなくしなかったんですが、優しいオッサンと美少女二人に超絶イケメンがいますからね。大目に見て、信用してあげますよ」


「なんでオレがマイナス点稼いでるみたいな事になってんだ」


「ブサイクでロリコンでドMBL男子に人権があるとお思いで?」


「ドMでもBLでもねぇ!そんで全世界と並行世界パラレルワールドにいるオレの同士に全裸で謝ってこい!」


「うわ……やっぱり私のこと、そういう目でみて……」


ダメだオレ、コイツとめっちゃ相性悪い!!ここまで相性の悪い年増は初めてだ!ほら見て、オレの生命メンタルポイントはもう零よ!


「ライラさん、だったか?その辺にしてやってくれ」


「イケメンに言われては仕方ないですね。で、私は何を話せばいいんです?」


「……。まず、この国に不満を持ってるみたいだが、それは何でだ?」


「……。元々、この国は貧しい国でした」


話し始める年増、ライラの表情は沈んだような、それでいて明るい表情だった。


「貧しくて、その日を暮らすのも厳しい……そんな人々が多くいました。特に、このグゲンと呼ばれているエリアは、貧しさからならず者に堕ちる者も多く、犯罪者くずれも多かったです。でも、この宿屋のご主人と女将さん、ハミルさん、ゲツさんは、たまに訪れる冒険者や観光客が落としていくお金を私たちに恵んで、生活を支えてくれたのです。……この辺りの人にとって、ゲツさん達は命の恩人なのです」


この暴言年増が、ここのゴ◯ラに丁寧な素振り見せてたのはそういうことか……。


「ゲツさん達のお陰で、貧しいながらも平凡な時間が流れていました。……あの時までは」


「あの時?」


「……ウィール大陸のシューハド、という国を知ってますか?」


「いや、知らない」


「無知ですね。生きてる意味あるんですか?」


「俺も知らないな」


「仕方ありませんよ、レンドくん。隣の大陸の国なんて、知らなくて当然です」


「数秒前にオレと交わした会話を思い出して改めて発言してみようか。サンハイ」


「……?アナタと言葉なんて交わしましたっけ?」


「もういいボクグレる!グレフウヤになる!!」


「気持ちは分かるが、落ち着けフウヤ」


「イケメンなんかに、ボクの気持ちなんて分かるわけない!分かるわけないんだぁー!!」


「……。続き聞かせてもらえるか、ライラさん」


あっさり見捨てられたでござる。ニンニン。


「……ウィール大陸のシューハドという国を取り仕切る男、彼はエンドと名乗っていました。そいつが赤毛の少女を伴って現れ、あっという間に国を買収しました」


「買収!?」


「ええ。当時国の代表を務めていた男も、国の財政を立て直さんと私財を投じ、貧困状態にありました。それでも彼は、たとえ何億積まれようとも国を明け渡すような人ではありません。……ですが、彼も人、ということでしょうか。真相は不明ですが、結果として国はエンドの物となったのです」


「……その代表の男はどうなったんだ?」


「行方不明です。でも、それが懸命な判断だと思います。少なからず彼を憎んでる人はいますから」


「……エンドが来て、この国はどう変わったんだ?」


「一部の者が巨万の富を手にし、内部で豪遊するようになりました。国の防衛力・軍事力も上がり、収益や雇用も拡大しました。……」


「けど、それは貧富の差が開いてしまったことにも繋がった」


「っ」


「貧富の差は、人の心を狂わせることもある。嫉妬・蔑視・差別……ましてやそれが突然起きて、急激な差がついたなら、それは人々の心に大きな影響を与えるだろう」


「……それだけではありません。この国は人を殺すようになったんです」


「大気汚染か」


「……勘が鋭いんですね。デブオタクBLM男なのに」


「ビジュアル映ってないからって好き勝手言ってんじゃねぇ。オレのどこが太ってんだ」


「……武器の生産のために、工場を急ピッチで建て、毎日空が暗く薄汚れるようになりました。工場排水が生活水にまで侵食し、誤って口にした幼い子供達が大勢死にました。今も未だに貧困から脱却できていない家族はその影響を受け続けてます。最初こそ、ゲツさんやハミルさんが必死に食い止めてくれていたのですが」


「そういや、そのハミルさんは?」


「……国にその身柄を拘束されました。理由はたった一つ、魔法が使えて戦力になるから」


「クズだな」


「ええ。BLM男よりもクズです」


「なあ、マジメな話してるのにちょいちょいオレをディスるのなんなん?」


「重い話なので悦ばせようかと」


「いらんいらん。そんな配慮いらん」


「話続けますね。……ゲツさんは旦那さんがいないながらも、カザちゃんやヒナちゃんを育て、未だに貧困状態の家族に水や食料を分け与えています。急に成り上がった一部のクズから白い目で見られていますが、ここに住む大半の人々にとって、本当にゲツさん達は救世主なのです」


「……」


「以上が不満に思っている理由です。私としてはトップやその下でどや顔してる七紅魔を潰して頂ければ、と思っています」


「なるほどな。分かったよ」


「他には何が聞きたいです?」


「いや、それで充分だ」


「……七紅魔の弱点とか知りたくないです?」


「知ってんのかよ。なら教えてくれ」


「いえ、全く知りませんが」


「なあ、年下だからって舐めてんだろ?本気出せばお前なんて親指一つでダウンだぞ」


「なんて卑猥な」


「なにが?なぁなにが?」


「……あなた達の求めている情報はなんなんですか。少なくとも今、私が話したことではないでしょう?」


「いや、アンタが話してくれたことを求めていたよ」


「……はぁ?」


「不細工な顔が更に不細工になってんぞ、年増」


「いやだって、普通この国の軍事的規模とか知りたくありません?何人の兵士がいるとか、武器の量とか」


「そーいう情報はもう仕入れてんだよ。あるツテでな。オレが知りたかったのは、この国の背景だ」


「……なんでそんなのを?」


「ムカつく奴がバックにいるって分かったら、思いっきりぶん殴れるからに決まってんだろーが」


「…………」


「変わってるだろ、コイツ?こんなんでも国を二つ救ってんだぜ」


「やめろ、その言い方。単に運が良かっただけだ」


「謙遜すんなって」


「してねえわ。あんま言うようだとミレンにあることないこと吹き込むぞ」


「おいやめろバカ」


「……ここまでの変人は初めて見ました」


「暴言年増に言われるとは」


「ええ。初めて見ましたよ。ここまでの……底無しの阿呆は」


……この時の暴言年増の笑顔は、幼女を彷彿とさせる程の無垢で柔らかいものだった。まあだからといって、浮気なんてマネしないが。あくまで比喩だ。


「……あなた方なら本当にやってくれるかもしれませんね。国を倒すなんて阿呆にしかできませんから」


「アホアホ連発するな。……国どうこうじゃなくて、少し聞きたいことがある」


「スリーサイズですか?上から8――」


「要らん情報よこすな言うな、……この人、見たことないか?」


一枚の写真を取り出す。栗色の髪を肩まで伸ばした少し面長の西洋美人。……サウルちゃんの母、ハナさんだ。


「うわ、美人ですね。ゲツさんと天と地の差があるというか」


「お前、あのゴジ◯に恨みでもあんの?……見たことないか?」


「ありませんねぇ。このエリアにいたなら気づくと思います。私並みの美人なんてそうそういませんからね」


ここは流す。


「あと二点。薄白色のローブとベールを着けた、黒服の女性を見なかったか?」


「……あの人ですかね」


「見たのか!?」


「エンドがトップにすげ変わった頃に、一度。和的で私に負けるとも劣らない綺麗な方だったので覚えています。どこにいるかは分かりませんが」


「……。なるほどな、ありがとう」


「いえ。あと一点とは?」


「コイスさん、よろしく」


「ありがとうございます。……娘を探しています。白髪のショートカットで、物静かな子です」


「その子、可愛いですか?」


「……。親から見て当然可愛いですが、他人から見ても十二分に可愛らしい外見だと思います」


「なら……噂のあの人でしょうか?」


「あの人?」


「他のエリアにいるらしいんですよ。たまに噂を耳にします」


「……どんな噂を?」


「白髪のクールキューティーな天使が舞い降りたと」


「マジかよちょっと行ってくる」


「とりあえず座れ」


「ぎゃふん!」


立ち去ろうとした所を、レンドに首根っこ掴まれた。……今日のレンドはやけに喧嘩腰ですなぁ、おぉ?腕一本で済むと思うな……!


「……先にこのエリアを攻略しないと、隣のエリアにすら進めないだろが」


「ふぅん。扉ごときオレのブルーアイズが薙ぎ払ってくれる!」


「ブルーアイズどこにいんだよ」


「オレの溢れ出る情熱パッションは困難な扉すら踏破する!幼い頃に近くの木々を制覇したかったオレの登攀スキル、舐めてもらっちゃ困るぜ?」


「むしろなめられまくりというか……」


「登る気なんですか?やめた方がいいですよ」


「なぜだ?正当な理由がない限り、オレは止まんねぇからよ……!」


「登る理由に正当の文字が一字たりとも入っていませんが……扉には侵入者対策の魔法結界が張られています。この国にかけられているものと同等です」


「要は入れない、か……。だが、紳士の心意気はその理屈をも乗り越える!」


「紳士と書いてへんたいと読むんですね。似たような方々がいるので分かります。……扉の真ん中辺りに1億Vの超電流、天辺には超高温などの物理的な対策。またそれら以外にもありとあらゆる仕掛けが施されてます。そんな壁に無闇に登っては、女性経験のないつまらない人生で終わってしまいますよ」


「全国の付き合いたくても付き合えない老若男女に謝れ。独身でも楽しい人生あんだよ!な、コイスさん!」


「え、あ、あのすみません……。私、既婚者で」


「この裏切り者ぉぉ!!」


「いい加減落ち着け」


「みゃうっ」


もうヤダ!なんで今日こんなレンドに叩かれると変な声出んの!?


「……とりあえず、このエリアから移動する術はただ一つ、トップの奴が持ってる鍵を奪うことだ。極力戦闘は避けたいが……」


「ほぼ無理ゲーだろ。っと、そうだ。このエリアのトップの奴の名前とか分かるか?」


「……聞きたいことは終わったと言っていたのに、次から次へと出ますね。その二枚舌、どこかで切り落としてはいかがです?」


「うるへー。こちとら頭も切れない一般人なんだ。そんくらい笑って見過ごせ」


「はっ」


「今、鼻で笑ったよな!?」


「笑って見過ごしただけです。……このエリアを取り仕切るのはガース。七紅魔の一人です」


「ガースだと!?」


「……知り合いか、レンド?」


「……ああ。……っの野郎、まだ生きてやがったか……!」


……訳アリっぽいな。詳細は聞かない。誰にも触れられたくないことがある。


「暴言年増、この国のエリアはそれぞれ七紅魔が取り仕切ってるって認識でいいのか?」


「…………」


「まだコイツ質問するの?恥や外聞ってもんはないの?みたいな顔してないで答えろ」


「ええ。そうみたいですよ。内側にあるエリア、コーディングは分かりませんが、他のところはそのはずです」


「コーディングは違うのか?」


「分かりません。他のエリアの噂ならチラホラ聞こえるんですが、このエリアについては聞いたことないです。富裕層のいるエリアだと思うのですが……」


「じゃ残りの」


言いかけた時に、コンコンと短いノックの後、幼女てんしが雪崩れ込んできた。


「レンドくんレンドくん!難しいお話終わった?ヒナと買い物行こっ?」


「ちょっと!カザの方が先に入ったのよ!」


「先に声かけたのはヒナだもーん」


幼女てんしの可愛らしいが、オレの胸にどす黒い感情を呼び起こすケンカの側で、アキハねぇが声をかけてくる。


「ごめんね、フウヤくん。話、まだだった?」


「いや、大体はできたよ。細かいのはまた後だな」


「え、延長ですか?別途料金いただきますよ?」


「キャバ嬢か、お前は。また用があったら呼ぶからギルドの受付して遊んでろ」


「私、受付の仕事中遊びませんよ?私の遊びは時間がかか」


「さて、カザちゃん。ヒナちゃん。レンドは忙しいんだ。良かったらオレと遊ばないかい?」


暴言年増の戯言なんてスルースルー。今は癒しの時間、天使時間エンジェルタイムだ。


麗しき幼女てんし達は互いに見合って、無邪気に一言。


「や!レンドくんがいい!」

「や!レンドくんがいい!」


天使時間エンジェルタイム終了しました。


「フラれたゃったね~、フウヤくん。じゃ、私と買い物行こうよっ」


「え、ヤダ」


「行こうね」


「うす」


断れない気迫を感じた。あれが……スタンド……!


「私はレンド達見守っておきますね」


「うん、よろしくね」


「では、私はここで休ませて頂きます……。さすがに、疲れ……」


今まで我慢していたのか、電池が切れたように横たわるコイスさん。


「……やすらかに」


「やめろバカ」


「うみっう!」


「……なによアンタ。今の声」


「なに今の可愛い~!レンドくん、もう一回、もう一回!」


「え、あ……」


「へみっう!うみゃ!きゃふん!」


もしかして、オレ今……遊ばれてる!?

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