暴虐都市ーグゲン
「お……おうふ……」
どうも、フウヤっす。なんとか少女達のため、自分のために貞操守り抜いたZE☆。いやまさか、マジであの後ホモ・ゴーレム50体出すとは……年増、恐ろしい子っ。
無事に合成獣を倒し進むこと数十分。ゲーハ砂漠を抜けた先、クラットスが見えた。
まだ少し距離はあるものの、クラットスの大まかな図が見てとれる。首都であろうそこは、複数の都市がくっついた集合体のような形をして鎮座している。至るところに工場らしき煙突が見え、黒煙が大気に流れ出し、上空に暗雲を立ち昇らせる。
「じゃ、改めて国の内部について説明だ。妥当クラットスに必要だからな」
「……あの」
「ん、ああ悪いコイスさん。こっちの話だ。気にしないでくれると」
「もしやあなた方、クラットスを倒しに?」
「……えー」
「ああ、そうだ」
「フウヤぁぁ!?おまっ、おまっ……!」
「大丈夫だ。様子から察するにアンタもなんだろ?コイスさん」
「……。ええ、娘が捕らわれております」
「娘っ!?年頃は!?素直そうないい――!!」
カチャッ、カチャッ。
「……。はい。シズカニシマス」
ふっ。さすがに両側からの射撃を避けられる気がしないぜ。
「コイスさん。フウヤくんのことは無視していいから。娘さんの名前は?」
「ウィルです。白髪で少し小柄です」
「ウィルちゃん、か」
「クラットスを倒すならば、私も同行して構いませんか?少しですが、魔術の心得があります!」
オレに迫って懇願するコイスさん。それはオレらにとっても渡りに船だな。
「こっちとしてもお願いしたいところだ。味方は多い方がいい」
「重ね重ねありがとうございます……!ああ、今日はなんて素晴らしき日だ……!」
コイスさんが感涙に咽ぶ中、レンドが話を戻す。
「改めてよろしくな、コイスさん。で、話を戻して内部についての説明だ」
「年増がやらっしーい妄想して聞いてなかったからまた説明しなきゃふぁいやー!!」
燃やされながらチョーク突っ込まれた。なに、新しい芸でも覚えさせる気ですか?こちとら幼女の前で従順な犬になるっていう紳士の嗜み程度の芸しかないっすよ。
「……。まず入口は現状一ヶ所、ここだけだ」
簡単に紙に円を描き、その外側の一ヶ所に印をつける。
「首都であるここは、大きく七つの町に分かれてる」
真ん中にもう一つ小さく丸を描き足し、それ以外の余白の部分を均等に六等分する。
「入口から半時計回りにそれぞれエリア毎に名前がついてる。グゲン、パミッタ、クレール、ハミア、ケーシュ、パイルザッタ。で、真ん中はコーディング。どこかに移動するためにはそれぞれのエリアの間にある門の鍵を開けないといけない。こんなとこだ」
「このエリア、七つあるけど……それぞれに七紅魔ってのがいるのかしら?」
「それは分かんないな。丁度分けられるけど……とりあえず警戒は欠かさないようにしよう」
「また眠らされてピーチ姫のごとく連れ去られんなよ、年増」
「ええ。そっちこそ見捨てないようにね。そんな真似したら貞操奪ってやるから」
「お前……オレの貞操を狙っごめんなさい」
皆まで言ったら死んでいた(男として)。ホモ・ゴーレムさん、いい加減永眠してください。
「入口から近いのはグゲンっていう所だね。どんな所かな?」
「ハッキリ言うと無法地帯っす。酔っ払い、ならず者、犯罪者くずれが町をうろついてる……けど、このメンバーなら大丈夫でしょう」
「うし、じゃあ行くか。虎穴に入らずんば、だ」
丘~を越~え、行こ~よ。口笛吹きつ~つ。って感じでクラットスの首都前の扉にたどり着く。
門番はおらず、扉を押してみれば少しの力でギィーと開く。……開放的な国、なーんて感じじゃなさそうだな。
「気づいた、みんな?」
「ええ。……入ったら出られない結界がありますね」
「前に来た時にはこんなの無かったが……七紅魔の仕業か?」
「……開けるぞ」
重々しい扉を開け、無法地帯のエリアに踏み込――
ガヤガヤガヤ。
「……」
目に映ったのは忙しなく動き回る人、人、人。籠や荷物を片手にあっちへこっちへと忙しなく動く。……これ。
「レンド、無法地帯って?」
「……どーなってんだ?」
「とりあえず聞き込もっか。このエリアを抜けるには、隣のエリアに通じる門の鍵が必要だもんね」
「手っ取り早いのは偉い人、実権を握ってる人の元にたどり着くのが近道ですが……」
「よし、ミレン。お前はレンドとテキトーにその辺ウロついとけ」
「なんでよ」
「聞くがお前、住民になんて聞く?」
「そりゃあ勿論、このエリアの偉い奴はどこ、でしょ?」
「……その無駄な栄養分が少しは頭にいけばっ!!」
久しぶりに素手で殴られた。まるで鉄板に殴られたみたいに痛いんだけどっ。
「セクハラよ、アンタそれ」
「今のはお前が悪い」
「フウヤくん、めっ。だよ」
「なにこのフルボッコ」
オレをいじめぬいてもなんにもないよ!!
「……まあ、そんな直球な物言いをするよーな奴に調査させれん。というわけで、アキハねぇ」
「分かってるよ、フウヤくん!二人きりのラブラブ調査大作戦だね!」
「すまない。今、脳をフル回転してるんだが、らぶらぶの意味が分からないんだ」
言い切ると同時に右腕を何かが包み込んだ。暖かい感触。
「これなら……分かるかな?フウヤおにいちゃん?」
「…………」
ゴッ、ゴッ、ゴッ。
「フウヤ!?」
「アレは姉アレは姉アレは姉……」
「落ち着け!わかっ……てないが落ち着け!!頭を壁に打ちつける奇行やめろ!」
やっぱ外見って恐ろしいな。人は見た目が8割、とかなんかで見た気がするが、今それを実感できた気がする。
今のアキハねぇの声のトーン、仕草、表情の全てがパーフェクトだった。姉という事実に気づいていなかったら間違いなくぺろぺろしていたことだろう。ああ、危ない危ない。んな事したらマジで襲われるぞ、オレ。気を引き締めないと。
「うっし!じゃアキハねぇ!気を取り直して行く――」
ポスッ、ギュッ
「えへへー。お兄ちゃんの背中いただきー」
「…………」
ガンッ、ガンッ、ガンッ。
「話進まねぇだろ!?いいから行け!」
――……。
「……はぁ」
「にへへ~。お兄ちゃんの手、あったか~い」
アキハねぇの猛攻に耐える為、アキハねぇに妥協案として手を繋ぐことを提案すると、あっさり許可が下りた。ああ良かった良かった。……あれ以上の猛攻には絶えきれる気がしないからな、うん。
「にへへ~……」
「……」
なんだろう、負けた気がする。
「っつーかアキハねぇ。どこであんなおっそろしいテクを」
「レビィちゃんに指南してもらった☆」
あんのくそ痴女年増ぁぁ!なにとんでもない知識をとんでもない人に植え付けてくれとんのじゃあ!!
「他にも夜這いの効果的な方法とか、ロリコンさんの潜在的欲求を引き出す術も教えてもらったから……これでバッチシ!」
「なにが?ねぇなにが?」
「勿論!私とフウヤくんの甘美で背徳的な性か――」
「すみません、ちょっといいですか?」
聞き返しといてなんだが、聞いたら精神がごっそり持ってかれそうだったんでスルーしがてら、住民へ本題を尋ねる。
「はい、なんでしょう?」
「私たち、コイール王国から貿易で来た者でして」
「どこに行ったらボーエキってできるの?」
ナイス、アキハねぇ!幼女っぽさがあの痴女年増のおかげ……せいでバッチリだな!
「ああ、貿易の人か。なら一度貿易ギルドに話を通すと良いよ。そうしたら副市長が直々に面談なさるはずだ」
「フクシチョウってかなりえらーい人じゃないの?いきなり私たちに会ってくれるんだ!」
「ああ、えらーい人だ。本来ならギルドと貿易者で話を通すんだが、ついこの間仕組みが変わったのさ」
「仕組みが変わった?」
「なんでもギルドで暴れた輩がいたとかなんとか……その辺はよく分からねぇな」
「……なるほど。ありがとう、参考になりました」
「ちなみにボーエキギルドってどこ?」
「この中央通りを真っ直ぐ行って、突き当たりを左に。そしたら右手にでっかい獅子像を飾った建物が見える。そこが貿易ギルドだ」
親切に教えてくれた住民に別れを告げる。……初手でこんな良い情報がゲットできるとはな。
「良い情報貰っちゃったね。これからどうする?」
「……副市長についてもうちょっと探りたいとこだけど、あんま探ると怪しまれるしなぁ……。アキハねぇはどう思う?」
「私は常にフウヤくんと同意見だよっ!」
「それじゃ参考にならないじゃんか……。もう二人くらいに聞いて、レンド達のとこに戻……」
ツインテ、白ワンピの元気な少女がすぐ側を通りすぎた。……。
「フウヤくん、怪しまれる行動はタブーだよ」
「え、少女をペロペロするのは怪しまれないだろ?」
「じゃあ私がフウヤくんに◯◯しても大丈夫だねっ!」
「ごめん、怪しまれるな。やめとく」
「ちぇー」
平然と街中で放送禁止用語を言ってのけたよ、この姉。
――……。
「おう、お帰りー」
あの後、二人ほど住民に話を聞いたところで帰還。レンド達と情報共有する。
「レンド、BL年増は?」
「もー。またそんな呼び方して。ゴーレムに襲われるよ?」
「……ミレンは?」
べっ、別に襲われるのがイヤだった訳じゃないんだからね!
「ミレンちゃんは……あっち」
「ん?」
少し離れた所に電器店のテレビがあり、何かが映ってる。……そーいや、魔法の力どうこうでやってんだっけか、テレビ。
『はぁっ、はぁっ……!』
『へばってんじゃねぇぞ、ヒサシ!!もうちょい気合い入れろ!』
『は、はい!!』
「ヒサシくん……」
テレビが熱血スポ根アニメを流しているのを、ミレンがうっとりした目で見てる。うわっ、気持ち悪っ。
「二人が行ってからずっとあんな感じさ。ま、観たかったってずっと言ってたしな」
「飢えすぎだろ、腐女子。もうアレ、純粋にアニメ観てる目じゃないもん。ご馳走見つけたライオンの目だもん」
……ん?ミレンの手が動いて……親指を下に?そんなはしたないことしちゃいけません!ってか聞こえてんのかよ!
「ミレンー、情報共有すっぞー」
「あと7時間半待ってー……」
「待てるか。そら、行くぞ」
「あっ、待って。待ってってばー」
「甘えた声で言ってもムダだ」
情け容赦なくミレンを引っ張ってレンド達のところに。
「わざわざこっちじゃなくてもいいじゃない。ほら、早くテレビの所に行きましょ?」
「テレビの前に行ったが最後、お前全くこっちの話聞かなくなるだろが。ダメだ」
「……ホモ・ゴーレムけしかけるわよ」
「傍若無人にも程があんだろが。諦めろ」
「うー……。フウヤお兄ちゃん、お願い?」
「なりふり構わなすぎだろ。却下」
「……観たい観たい観たい~!!」
「駄々っ子もダメだ。少しレンドには効果があったが、相手が悪かったな」
「うぅ……ヒサシくん」
「ミレンちゃん。ミレンちゃんの魔法でテレビ造っちゃえばいいんじゃ」
「っ!?」
それだ、と完全に目から鱗状態のミレン。……わざと黙ってたのに。アキハねぇめ。
「そうよ、それだわ!ああ、なんで今まで思い浮かばなかったのかしら!!」
「単細胞バカだからじゃね?」
ドゴォッ!!
「そうと決まればもう悩む必要もないわ!パパッと話を聞こうじゃない!」
「あの、壁埋め事案はスルーですか?」
全身壁に埋まって抜け出せないんですが。多分、今オレが喋った言葉もモゴモゴとしか伝わってないと思う。
レンドに引っ張り出され、ようやく息が出来る。あと3秒遅かったら窒息してたね、うん。窒息死させかけた当の本人は何とも思ってなさそうだが。……まあいい。話が進みやしないし、不甲斐ない年増に代わって、ここはオレが大人の対応をしようじゃないか。
「えー、それではレンドとコイスさんと、オレを窒息死させかけやがりましたクソオブクソの年増に情報共有しまーす」
オトナノタイオウ?何それ食えんの?
「えぇい、話が進みやしねぇからそのいざこざは後にしろ。ミレンちゃんもゴーレム召喚はやめてくれ。魔法を使うと目立って警戒される」
「じゃ、さっきみたいに壁に埋めるならいい?」
「うん。とりあえずそーいうの後にして?話終わったら煮るなり焼くなり好きにしていいから」
「好きにして好きにしてっ♪煮るなり焼くなり好きにしてっ♪」
「~~っっ!!」
「煽んじゃねぇよ、フウヤ!!悪いけどコイスさん、フウヤの口、ガムテープかなんかで縛っといてくれ!」
「え、あ……いいのですか?」
「それなら私がやるよ!ううん、口とは言わず手足も……!」
「ダメだコレ!著しいツッコミ不足だ、コレ!」
奮闘するレンドに免じて煽るのをやめる。いや、本当にそうだよ?目が怖いアキハねぇに怯えてなんかいないんだからね!……おぇっ。
「まず、私達は貿易で来てることにしたよ。その方が話が通りやすそうだからね」
「そうっすね。どこから来たとか言いました?」
「コイール王国っつっといた。遠くの国でこことも貿易経験があるが、ここ数年の貿易形跡はない。けど、仲が悪いどうこうじゃなくて、コイール王国の財政難が理由だし、いい隠れ蓑になんだろ」
「ああ、コイール王国か。それなら納と……待て、なんで知ってんだ?」
「祭りの準備の間、色んな資料読んでたからな。少女侍らせながら」
「ダメね、アレ。幻想入ってるわ」
「少女云々は置いといて。……すげーなお前、何でも知ってるみたいでちょっと怖いわ」
「なんでもは知らないさ。知ってることだけ」
「あー、そうかい」
……ネタだったんだけど、伝わらなかったかー。結構メジャーだと思うんだけどなあ。
「……」
あぁーっと、年増は気づいてスルー!いやまあ、いいけど。
「んで、貿易で話を通すならって聞いたとこ、貿易ギルドに話を通せば一気に副市長とやらに会えるらしい」
「副市長ってーとこのエリアのNo.2か。すげぇな」
「…………」
またセクハラ発言をしそうになったが我慢した。ツッコみたいが誰か代わりにツッコんでくれんだろ。
「そうだね、行こっか」
おや……?
「副市長の人となりとかはギルドで聞き込みすっかー」
ゾロゾロと歩き出すみんな。……。
「いや今聞かんかーい」
グラスで乾杯しながらツッコむ男爵のようにツッコんだ。
「副市長は少し横柄?」
「ああ」
結局自分から話し始めたとさ。
「少し横柄でプライドは高い。けど、相手に敬意を払っていない訳ではないから、粗相さえ起こさなきゃ大丈夫だそうだ。……てかアキハねぇが説明しなよ。ボケに回んなよ」
「てへっ♪」
「……。……」
「フウヤの懊悩は置いといて。……ここか」
住民の言った通りに進むと、一際目立つ建物に着いた。獅子像もあるし、間違いないな。
「じゃ、頼も――」
「待て。お前は一切この場所で喋るな」
「なんでよ」
「お前の発言は粗相の塊だからだ」
「舌引っこ抜くわよ」
「スプラッタ発言やめーや。とにかく、いいな?」
「…………」
完全に納得がいってない様子のミレン。どうしたもんか。
「ミレンちゃんミレンちゃん。こんなのあるんだけど」
「え?なんです――っ!?!?」
何かを見て目を白黒させるミレン。……何を見た?
「静かにするならコレあげるよー」
「静かにしますくださいください!!」
え……ミレンがここまで欲しいもの……まさか。
「アキハねぇ、それって……」
「世界はフウヤくんが見てる物が全てじゃないってことだよ」
「何それ深イイ」
ともあれ、静かにしてくれるならいい。……うん、オレには関係ないからな、うん。
「よし。じゃ行くか」
ギルドの扉を開けると、酒場さながらの盛り上がり具合となっていた。
陽気な談笑、小競り合い、ギャンブル……来る場所間違えたかな?
「いらっしゃいませー。“金成の鐘”へようこそ。貿易にいらした方ですか?」
……19か。ま、対象内だったら目的見失いそうだったし、別にいいか。
「貿易でやがらないのでしたら、今すぐ出てけやボケカスー」
……ん!?
「いえ、あの貿易なのですが……担当の方は?」
「ああ、貿易だったんですね!見るからに冒険者っぽい見た目でしたので、チッ、カスが。と思ってたので、つい口調が。気を付けやがりくださいませ。他国民が」
いや、今もボロボロとボロ出しまくってるけど!?
「こちらの方になりますー。ではごゆっくりー」
「……濃かったな、今の」
「濃かったね、キャラ」
「前の雰囲気を少し感じたよ……コイスさん、サンキュー。あそこで入ってなかったら多分、ミレンちゃん暴れてた」
「いえ、お役に立てたのなら」
乱暴な口調のニコヤカ年増受付の案内に従って、カウンターに向かう。後ろでカイジっぽい顔の奴が麻雀やってたりしてるけど気にしない。気にしたら負けだ。
「…………」
年増腐女子が、向こうで腕相撲してる顔は爽やかイケメンだけど腕だけ異様に筋肉がついてる男を凝視している。町雄さんに憧れてる人かな?
「おっ、お待たせしました~。ふぅ~」
オレ達の前に、速度は小走り、本人的には全力で走ったんだろう感じで現れたのは、頭のてっぺんに毛が3本、温泉の地図記号のような波を描いて生えている、眼鏡をかけた太ったおっさんだった。
見た瞬間、駄目とは分かっているも吹き出した。
「すみませんねぇー、お待たせしてしまっ……あれ、どうかなされたのですか?そちらの方々は?」
「気にしないで頂けると幸いです。早速、本題に入らせて頂きたいのですが」
「ええ。我が国との貿易を望まれているとの事で。どちらからいらしましたか?貿易品は?」
「コイール王国から来ました。貿易品は鋲鉄に布糸、鋼歯車です」
前もって伝えておいて良かった……!ま、まさかこんなに爆笑する事になろうとは……!は、腹痛ぇ……。波◯越えだよ。この人のアダ名、《温泉》で決まりだよ、オレの中で!!
「鋲鉄はありがたいですね。今、一番不足している金属です。他の物も不足が心配されている物ですね。サンプル品はお持ちでしょうか?」
「こっ……こちらっす……!」
おいレンド、笑いながら出すんじゃねぇよ。人の事言えないけど!!っつーかコイスさん以外腹抱えてんじゃねーか!コイスさん居て良かったわ!思わぬ所で全滅するとこだったわ!
「お借りしますね。…………ほう」
もうオレ達の異常事態にツッコむことは諦めたのか、鋲鉄や布糸、鋼歯車をそれぞれ手に取り、鑑定するように見る温泉。
「これは……どれも一級品ですね。いやはや、コイール王国でこんなものが採れるとは」
「最近になって発見されたんです。まだ他の国にも伏せています」
「真っ先に我々の方に貿易を持ちかけてくださるとは有難い話です。私共の方でも心配しておりました故、金策の方針が立った事は我々からしても喜ばしい限りで」
社交辞令を並べる温泉。……随所に自分達の国をアピールしてんのが気になるな。住民に自国が優れている、って思想が蔓延している証だ。軍事国家ならではの。
「では、話をまとめる際、副市長に会って頂きたいのですが、日にちはいつがよろしいでしょうか?」
「……どうします?」
コイスさんに尋ねられ、少し考えて答えを出す。
「明日でお願いしてもいいですか?」
「明日、明日……。はい、9時からでしたら大丈夫です。こちらにいらしてお声掛けください」
約束を取り付け、温泉と別れる。ギルドを出ようとした時、さっきの暴言年増がすれ違いざまにボソッと呟いた。
「……ホントに貿易者だったんですね。てっきり、この国をぶっ壊す救世主かと思ったんですが……残念です」
「なに期待してんだよ、勝手に。第一、オレらのどこを見てそう思った」
「根拠はあるのですが……まあ、あなた方には関係のない話ですので……っ」
「そーかい。そんじゃ」
短く言葉を交わし、ギルドを出る。……さて、と。
「とりあえず宿屋に向かって、今日はそこでのんびりするぞー。旅の疲れもあるしな」
「その前に、フウヤくん?」
「はい?」
「さっきのは何?ナンパ?」
「いや、なんの話?」
「気づいてないと思ったら大間違いだよ~。受付の女の子に宿屋に来いってメモ渡してたでしょ~?」
「時々アキハねぇは化け物の類いなんじゃないかって、マジで思うんだ」
いや、確かに紙渡しましたよ?そんな内容のメモをこっそり。でも紙にはあらかじめ書いてたし、三つ折りにして見えないようにしてたよ?……まさか自分の心の中でこんなペラペーラ裏事情暴露するとは思ってなかったよ!もっとミステリアスな感じにしたかった!
「え、いつの間にそんな……?」
「あの女の子の肩に手を置いて出てったときに、襟の後ろにコソッと入れてたよ」
「アキハねぇ、やっぱ化け物でしょ?あるいは仙人かなにか?」
「お姉ちゃんに不可能はないんだよ!」
「今は妹(仮)じゃん」
「妹に不可能はないんだよ!」
「マジっすか」
「……で、本当にナンパな訳?マナさんもいるのに……」
「ちゃうわ。なんで年増をわざわざナンパすんだよ。するとしたら幼女オンリーだわ。……お前らも聞こえてたろ?アイツは現状の国に不満を持ってる奴だ。この国を壊したい、そう思ってた。なら、良い情報くれるかもしんねぇだろ?副市長に会うまでに少しでも情報は入手すべきだ」
「ああ、そういう事。てっきりアキハさんが少女になったのをキッカケに年上好みになったのかと」
「なるかバーカ。年増はみんな敵だ」
「でもアンタ、マナさんと付き合う事になったんでしょ?」
「そりゃ……!アイツはその、例外というか……」
「……ふーん」
「よし、すぐ宿屋に行こう!さっきの奴が先に来ちまうかもしんないしな!それ、ダッシュ!」
バシュンと走り出す。逃げるで、工藤!!




