ゲーハ砂漠の魔物 その3
「……?」
少し歩いていると、何か違和感を感じた。それを認識した時にはもう、敵の術中にはまっていた。
「フウヤさん……」
「え、ハルちゃん!?なんでここに!?」
「今日はなんだか暑いですね……ふぅ」
「ま、待って!WHY!?なんで脱ぎ始めて!いや確かに今日は暑いけど!」
「フウヤさん……」
ハルちゃんがゆっくり近づいてくる。そのまま甘く蕩けるような声でオレに囁いた。
「一緒に寝ませんか……?」
――……。再びどこからか現れたナレーターのターン。
「ふ……ふふ。あーはっはっは!上手くいったわ!妾ってぱ天才!」
「ね、姐さま……」
「ん、どうした我が妹」
「い、良いんですか?砂漠の真ん中で旅人の皆さんをその……幻術にかけて誘惑するなんて」
「いいのいいの。女の子もいたけど、平等に良い夢見させてあげてるし、ちょっとエネルギー貰うだけだし」
「で、でも旅人さんに幻術で夢を見せ続けたら、砂漠で行き倒れちゃうかも」
「行き倒れたらそれはその旅人の運命よ。割りきりましょ」
「えぇ……」
「悪いけど、そういう訳にもいかねぇんだ」
「え、なにや……つ……」
「姐さん!?」
中級妖魔、サキュバスが地に沈む。幻術にかけられた一団の中から姿を現したのはレンドだった。
「いやー、幻術かぁ。ミレンちゃんが誘惑してきた時はホントビックリしたわ。……けど、俺は決めてるからな。そういう行為は結婚式挙げた後って」
「姐さん!姐さん!!」
「あー、安心してくれ。そこのサキュバスちゃん。キミのお姉さん、死んでないよ」
「えっ……?」
「くかー……くかー……」
「……寝てる」
「麻酔弾さ。30分もすれば目が覚めるよ」
「……」
「じゃ俺達、先を急いでるから。じゃーな」
「お、お兄ちゃん!」
「ん?」
「ボクを……ボクをお嫁さんにしてください!」
「……大人になってからな。じゃな」
レンドは幼女サキュバスに別れを告げ、幻術にかけられた仲間の目を覚ましに向かう。彼は仲間のことのみを考えており、砂塵が音を掻き消す。故に気づかなかった。
「……大人に、なったら……」
一人の少女の恋心が強く、今後の彼女を支える程のものになりつつあることを。――ナレーターのターン終了。
「幼女サキュバスぅぅ!!?」
「声でっか!」
レンドに事のあらましを全部聞かせてもらった。……幼女サキュバスぅぅ!!?
「い、今どこに!?」
「もうとうの昔に離れてったよ」
「ぐ……ぐ……うお……!」
「そんなにか」
「お前は事の重大さを分かってない……!幼女サキュバスだぞ!?ロリでありながら男を誘惑する色気の持ち主……!あー!幼女には絶対手ぇ出さないけど見たかったぁ!!」
「けっこう普通の子だったけどな。……」
「はー……あのフウヤくんが幻だったなんて。……ベッドの上に押し倒された時は遂に……!って思ったのに」
「なんで私はアイツを、いや嫌いじゃないけどよりにもよってこんな時に!まともにアイツの顔見れないじゃないの!!」
「……」
アキハねぇはおっそろしい妄想を、年増は一人で悶えてる中、さっきの男、コイスさんは一人ボーッとしている。
「コイスさん。アンタは大丈夫だったか?」
「え、ええ。私にはかからなかったみたいですね。……」
「……?」
まあいいや。とにかく、
「早く切り抜けるためにも、幼女に会うためにも、砂漠を抜けるぞ野郎どもー!」
「幼女にはもう会えないと思うけどな」
「水を差すなよレンド……」
「……」
「ん、どうしたミレンちゃん。何かついてる?」
「いっ、いいいえ何でも!!」
「?」
年増の様子がいつも以上におかしいな。なんてどうでもいいことを思いつつ、再び前へと進んでいくのだった。




