ゲーハ砂漠の魔物 その2
「グラップスイーター……なんて恐ろしい魔物なんだ。可憐で清楚で無垢な少女に偽装するなど」
「アンタはいい加減、その手のは懲りなさい。ただでさえ前科があるのに」
「へーい」
ふっ、オレとしたことが取り乱したな。元のクゥールでカッコよく、幼女に頼られるお兄さんにならねば(クワッ)。
グラップスイーターを屠ったオレらは更に砂漠を進む。五時間ほどで通り抜けられるって話だが……その間は強行軍か。後の事も考えて体力残しとかないとな。
「アキハさん、化け物ですね……。俺、魔法や武器なしで中級魔物が倒されるの初めて見ましたよ」
「鍛えてるからね。懐かしいねー、フウヤくん。水弥くんとの日々」
「水弥くん?」
「アキハねぇの弟弟子で、オレの兄弟子だ。強さはアキハねぇとほぼ同格。……まぁ、アキハねぇは負けたことないんだが」
「なに?お前の世界って化け物だらけなの?」
「アキハねぇと水にぃ、そんでじいちゃんが異常だっただけ」
「しっ。静かに」
アキハねぇがオレ達の歩みを止め、耳を澄ませる。いや、こんな砂塵吹き荒れる中、音なんて聞こえないって(特大ブーメラン)。
「……誰かが助けを求めてる。魔物に襲われてるみたい」
「幼女いそう?」
「ううん。いない」
「テンション下がるなぁ……ま、見て見ぬフリは出来ないけどさ」
「向かうでいいんだよね?」
「ああ」
「……ったく。変なとこは真っ直ぐだよな」
「よく言われるよ」
「……南西の方角。急いだ方がいいかも。切羽詰まってきてる」
「急ぎましょう!」
足並み揃えてその場へ走って向かう。数分してたどり着いたその場所で見たのは、
「オゥッ、オゥッ」
「や、やめてくれ……!許して、くれ……!」
上半身の服がビリビリに破かれ、下のズボンを脱がされかけ、貞操の危機に陥ってる男性と、巨大な躰に加え、頭が異様に肥大化した魔物。
「ビリーバブル・デーモン……!なぜか男を執拗に狙う気味の悪い魔物である事から別名ホモ・デーモン……!」
「レンドくん、詳しいね。魔物について」
「よし、ミレン。出番だ」
「なんで私!?」
「あれ、お前の同種だろ?打ち解けて和解できるんじゃねぇの?」
「しばくわよ。……でも、そうね。話くらいは」
「じゃないと共食いにな」
「チョーク」
「むぐぅ!!」
「……気が進まないけど。ちょっとそこの魔物!」
「あっ、ちょミレンちゃん!!」
「オウッ?」
「そこから離れなさ」
「オォウッッ!!」
「きゃっ……!」
ホモ・デーモンが標的をミレンに変え、太い腕をミレン目掛けて振り下ろした。
「いいぞー。やれやれー」
「フウヤ、お前……!」
「今の攻撃、ミレンに当たってないし、アイツなら余裕だ。野次くらい飛ばしてもいいだろ」
「けどお前、ミレンちゃんに万一があったら!」
「万一?ないない」
一撃を避けたミレンがホモ・デーモンに向き直る。その目はオレによく向ける視線と同じ。
「アイツが負けるの、アキハねぇと同じくらい想像つかねぇもん」
ミレンは間違いなくキレていた。
「アレスタ・フォートレス、地獄業火!」
「オォォォウゥゥ!!」
ミレンの両手からかめ◯め波のような勢いで紫色の炎が放たれる。
「オ……ウ……」
「アレスタ・フォートレス、地獄共鳴!!」
「オ……オ……」
うわー、むごい。ほぼ死にかけなのに、聴覚失わせてるっぽいぞ、アイツ。
「そこのあなた。今のうちにあっちに行きなさい」
「あ、ありがとうございます!!」
男がこっちに走ってくる。命拾い、もとい貞操拾いしたな。
「アレスタ・フォートレス、闇視界」
うわ、視界まで奪ってるぞ、アレ。何にそんなキレてんだ、アイツは。
「一つ良いことを教えてあげる」
「オウ……オウ……」
ホモに同情するの、これが初めてかもしれん。
「私はね、親切に声をかけたの。……それを踏みにじりし時、地獄に堕ちると思いなさい」
「オウ……オウ……?」
「アレスタ・フォートレス、小宇宙黒穴」
小さな黒い球体が現れた。と思った次の瞬間、ホモ・デーモンは姿を消した。
「……分かったか、レンド。アイツに心配は不要だ」
「身に染みる程に理解した。……何したんだ、ミレンちゃん」
「多分、さっきの球体がブラックホールで」
「いや説明いいっす、アキハさん!!」
「あ、あの……」
内輪話をしていると、さっきの男が話しかけてきた。
「ん?ああ悪い、こっちで話し込んで。アンタ、名前は?」
「クラクル・コイスといいます。先程は危ないところを助けて頂きげほっ、げほっ!」
「風邪か?」
「……。ええ、そうです。あなた方、もしかしてクラットスに?」
「この砂漠を通ってる以上、他の行き先はないわな。アンタもそうか?」
「ええ。通り抜けようとした所を先程の魔物に襲われげほっ、げほっ!……危ないところをあなた方に助けて頂いた次第です」
「……良かったら、着いてくるか?」
「そうだね」
「道中は危険でいっぱいだしな」
「よ、よろしいのですか?」
「袖振り合うも多生の縁ってな。ああ、そっちの死体蹴りしてる奴の許可はいらないから。アイツはこのパーティーの荷物持ちぶぐがっ!!」
チョークが再びオレの口内を襲った。……年増ぁ!!
「誰が荷物持ちよ、誰が。……それはともかくとして、一緒でいいわよ」
「あ、ありがとうございます!!」
「ぶほっ。……そんじゃ早く抜けよう」
チョークを引き抜き、再び歩き出す。……チョークを口に入れた回数って、ギネス記録になんのかな。




