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出発前にアレコレ

悪霊との戦いから二日経った。


懸念していたあの場所は、どうやら本当にあの亡霊が原因だったようで、無事にゴーレムを配置できた。これで穴はもうない。後は念入りに全箇所を守るだけ。


そして今、魔法行使の時がきた。周知は徹底され、今は誰も出掛けず家にいるとのこと。それはもう信じるしかない。


今いる場所は宮殿前の広間。外よりかはやりやすいと思い、ここで決行する。


「いいか、ミレン」


「ええ。アンタに触ってればいいのよね」


「魔力流しながらな。頼んだぜ」


「はいはい」


「じゃ……“接触破壊アタッチ・ブレイク”……からの“距離破壊(ディスタンス・デストラクション)”」


脳内でイメージする。ここからレーテリアまでの距離を。地図で叩き込んだ地理を。距離を少しずつ破壊する。


今まで描写皆無だったけど、破壊って結構気ぃ遣うんだぜ?ミスったら大変なことになるからな。


「…………」


魔力を流さず、流れてくるミレンの魔力だけを頼りに魔法を行使する。……普通ならもう半分以上無くなってそうなもんだけどな。やっぱコイツの魔力化け物だわ。……無限の魔力、か。


「……………………」


「すっげー緊迫感……」


「繊細な魔法のはずだからね。……一回でも魔力が途切れちゃったら大惨事だよ」


「アキハさん。そーいうのフラグっていうんだが」


「……うしっ!終わった!!サンキュー、ミレン!」


額にイヤーな汗が溢れだす。いやー……こんなに集中するの、受験の時でもなかったぞ。


「……これ、確かに尋常じゃない消費量ね」


「お前が魔力お化けで良かったよ、ホント。思ってたより使ったし、長くかかった」


「フウヤ殿、成功したのか?」


「外、見てみなよ。見えるはずだぜ」


レールと隻眼のおっさんがバタバタと駆けてく。オレたちも倣うように外に出る。


「おわっ……」


「わぁ……」


悠然とすぐ側に聳えるレーテリアの首都の壁。


「……周囲の町はどうなってんだ?」


「レーテリアとこっちの周囲にまとめられてるはずだ」


念のため確認したところ、レーテリアとこの国の周囲に囲うように点在していた。


「……数も最初に纏められていた通り。人の外出もなし。……作戦は成功だな、フウヤ殿!」


「まだ成功ではないぞ。……これからだ」


レールのおっさんの言った通り。……本当の作戦はこれからだ。


異常がないか、各地を確認し、問題なし。今は今後の作戦の確認のため、レーテリアに向かっている。


レーテリアの住民たちがポカンとしているのがやたらと印象的だ。現実味がまだないんだろうな。


「……レール殿、久々の故郷ではないですか?」


「もう戻って来ぬと思った地。よもや、このような形で戻って来るとは」


「ご子息とご息女、元気なようですぞ」


「……少々会いにくいが、そんなことを言ってられる状況でもないからな」


城門を通り、城内を歩くと、


「……あ、やっと来た~」


真っ先に出会したのは四砲手の露出年増だった。


「おっそいわよ~。もっと遅かったら脱いでたわ」


「ぬっ……!?」


隻眼のおっさんが驚愕するが、他に誰一人リアクションしない。慣れたもんだな。


「……久しぶりだな。レビッチェル」


「久しぶり。みんな待ってるわよ」


「今、どこに?」


「大広間。私とレンド以外のこの国の幹部、全員いるわよ」


「やけに準備がいいな……」


「外の様子はキースに確認させたからね。そっちから来ると思ってたし」


「なるほど、それは助かる。話が早いというものだ」


レビッチェルの案内で大広間に向かうと、前言通り幹部が全員いた。


「……父上、お久しぶりです」


「ああ、うむ。……積もる話も色々あるが、用件を済ませよう」


「はい」


「……」


ムスッとレールを睨むレミール。うーん、このギスギス感……正直言って、苦手ですたい。


「では、通信機で話した通り、これよりディブトーニ・レーテリア両国による共闘戦の作戦会議を始めます。大まかな内容は以前話した通り、攻めと守りに分かれ――」


再確認のアナウンスをする隻眼のおっさん。うんうん、ほうれん草は大事大事。


「攻めるメンバーですが、それはフウヤ殿から伝えてもらいます。フウヤ殿」


「ほいほい。……攻めに行くのはオレとミレン、レンド、アキハねぇの4人だ」


「クルックー。眉目秀麗たる私は着いていかなくていいのか?」


確か……レービルだったか?ミレンと戦ったとかいう四砲手が異論を申し出る。ま、そういう意見も出るわな。


「このメンバーにした主な理由はチームワークだ。何かあっても対処できる能力を持ってる。この間の魔物戦でそれを認識できた。だから戦闘面で期待できても、波風起きかねない奴らは守りに徹してもらいたい」


「クルックー。なるほど。そういう意味ではレミールとレビッチェルは同伴できない。何せ互いに仲が悪いからね。はっは。が、私までもが除外なのか?」


「今の歯に衣着せぬ物言いで判断は正しかったと確信できたよ。アンタは留守番だ」


「やれやれ……美しすぎるというのは罪なものだね」


一部の女陣営がすんごい顔を浮かべてるが、ここはスルーしよう。


「他に異論がなければこのメンバーでいきたいと思う」


「……待ってくれ、フウヤ殿」


手を上げたのはレーテリア皇帝レーテリオン。……隻眼のおっさんやレールからも同じように呼ばれてるからパッと判断しづらいな。今度呼び方変えてもらお。


「チームワークが大事というのは分かる。が、相手は大国クラットスだ。今やその規模はディブトーニやレーテリアを凌ぐ。もう少し兵の増員を」


「対軍隊ならこっちは化け物級だ。散弾銃を扱えるレンド、範囲魔法・ゴーレム増員なんでもござれのミレン、剣術・身体能力は折り紙つきのアキハねぇ。……オレもまあ、そこそこ使える」


「だが……」


「……確かに多勢に無勢って言葉もあるけどな。信じてくれ、オレ達を」


「……」


「アンタの逸る気持ちも分かるがな」


「……すまない。信じるよ。キミ達を」


「一応、秘策もあるんだ」


「秘策?」


「ま、諸々に許可貰ってからだけどな」


「……では、異論なしということで構いませんか?……では、守る体制についてですが――」


会議が続くなか、唐突にミレンが肘で腹をつついた。


「なんだよ」


「秘策ってなによ」


「言わん」


「なんでよ」


「成立するかどうか怪しい秘策なんだ。それを今、お前らに話すと無駄に期待させちまうからな」


「アンタの秘策なんかに期待しないわよ」


「酷い言われよう。……ま、万一にでも期待してパフォーマンスが落ちないようにの計らいだ。オレも期待しちまってる部分が多少なりともある。……もし腑抜けたことしてたらバシッと一喝してくれや」


「……。分かったわ。ホモ・ゴーレム10体で夜中に襲ってあげる」


「それ、なんて悪夢?」


守備の体制も固まった。各地域を暫時見回り、外の警護は主にミレンのゴーレム。要所には四砲手の残りが常駐することになった。


「これで大丈夫だろうか」


「ええ。後はそちらと私で各自調整していきましょう。……」


「……」


主な議題が終わったことで、気まずそうに見つめ合うレーテリオンとレール。


「じゃ、出発の準備すっかー。残りの奴らも警備方法について色々取り決めた方がいいんじゃないか?別室で」


「お、そうすっか」


「そうねー」


「む?何故だ?別室でなくともここで」


「ホモ・ゴーレム」


「お呼びで、ご主人?」


「ヒィイイ!!わ、分かった!別室に行けばいいのだろう、別室に!さあ、行くぞ!」


「……ミレン。お前、アイツになんてことしやがる」


「私も渋々よ。微塵も興味なかったから見てないけど」


「残虐すぎんだろ」


「レミール、アンタも残んなさい」


「はぁ?何で――」


「いいから。はい!」


戻りかけたレミールを突き飛ばし扉を閉めるレビッチェル。


「……レビィ」


「家庭崩壊なんてほっとける訳ないでしょー。これ以上、レーテリオンの胃痛見てるのも限界だし」


「……ったく」


わしゃわしゃとレビッチェルの頭を撫でるレンド。その顔は朗らかで。


「……不意打ちすぎないー?」


「今のはお前が悪い」


「なによそれー。……ふふっ」


オレは今、ダルダル系痴女の貴重な瞬間を見たかもしれない。……わ、笑った?


「…………」


「どしたミレン。餌をもらい損ねたライオンみたいな眼してばぎゃぶっ!!」


正拳突きが完璧に顔面にクリーンヒットした。


「そこはせめて犬にしなさい。ったく……羨ましい」


「ミレンちゃん……乙女だねぇ」


「あ、アキハさん!?違うの、そういうのじゃなくて!!」


「誤魔化してもムダだよ?私、そういう経験豊富だからすぐに分かったし。……でも嫉妬しちゃダメだよ?それは憎悪に変わりかねない危険な感情だからね」


「だから違いますってー!!」


――この時、周りにいた幹部たちはこう思ったという。


(青春だなぁ……)

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