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お前それ、もうちょっと早く言えよ

「……ん」


窓辺からの太陽光で目が覚める。……宮殿の一室か、ここ。


「フウヤ……くん」


ベッドのすぐ側で寝息を立てているアキハねぇに気づく。頭を撫でようと手を伸ばせば、腕の血管に何かが通っている。


「点滴か……そういや気ぃ失ったんだっけ」


倒れたオレを心配してアキハねぇが看病してくれたってとこか。やれやれ。


「いつまでも世話のかかる弟ですまなぇな、アキハねぇ」


点滴が刺さってない方の腕でアキハねぇの頭を撫でる。


「むにゃ。そんなことないよ……」


器用だな。寝てんのに。


「むにゃ……はっ!」


アキハねぇが覚醒した。と同時に手を離す。


「おう、アキハねぇ。起きたか」


「今、フウヤくんが撫でてくれてたような!?」


「気のせいじゃね?」


「……そっかー、そうだよねー。……夢だったか、残念」


あのまま撫でていたら、恐らくオレの貞操は無事ではいまい。


「でも良かったぁ。フウヤくんが元気で」


「オレから元気取ったら何も残んねぇからな」


「私の弟兼お兄ちゃんっていう立場が残るよ」


「一番消してぇ」


「……フウヤくん。昨日の魔法のことなんだけど」


「突然のシリアル!けどオレは屈しない!」


「なに言ってるの、フウヤくん?」


「ちょっと重い空気を飛ばそうと……したけど悪い、ダメだったな。真面目な話だもんな」


「……“死期破壊デッド・ブレイク”って、私の予想が外れてなかったら……人の死の概念を壊す、つまり人の死を無かったことにする魔法だよね」


「……どっかの本で読んだ?」


「フウヤくんと再会した、レーテリアの書斎で。……凄い魔法で、魔力さえあれば複数の人に同時にかけられる。けど、欠点もある」


「死後一週間を過ぎた人には効かない。効く魔法、というか専門になる降霊魔師はいるけど、その場合は屍人アンデッドだな」


「大きなものがもう一つ。この魔法、予め自分に唱えておけば、自分が死んでしまった時も生き返られる。でも……」


「この魔法はたった一度きり。そうだろ?」


「……やっぱり、知ってて」


「でなきゃチートにも程があるよ。ただでさえ破壊なんて魔法、充分チート性能してんだから。何回でも自分や他人を生き返らせられる、なんて出来る訳ないさ」


「…………」


「アキハねぇ、こう思ってんだろ。どうして見知らぬ人のためにそこまで?自分が死んじゃったら終わりなんだよって」


「……どうして」


「姉弟だからな。分かるさ。で、オレの答えも分かってんだろ?」


「…………」


「オレには人の死を黙って見過ごすなんて、出来ない。オレに出来ることがあるなら、なんだってやる。……血筋が血筋とはいえ、損な性格だと、我ながら思うよ」


「……ううん。損なんかじゃないよ。とっても、フウヤくんらしい」


「……なんか小っ恥ずかしいな」


「ふふ」


アキハねぇが、その小さな身体をオレにそっと預けた。


「アキハねぇ?」


「大丈夫……もう二度と死なせない。絶対に、私が守ってみせる」


「……ははっ。心強いや」


アキハねぇの体温が伝わる。……もう少し、このまま。





「…………」


「おや、どうなされましたかな。ミレン殿」


「っ!!な、なんでもない!!」


タッタッタッ……。


「?どうなされたのか……。さて、フウヤ殿の様子は……なるほど。どうやら野暮らしい。後で出直そう」




午前いっぱい、ゆっくり休ませてもらった。敵の襲撃が来ることもなく、そういう意味でも心穏やかだった。


アキハねぇのスイッチがオンになって暴れだすまでは本当にリラックスできた。感謝しなきゃな、みんなに。


所変わり会議室。レールが威厳を一度失いかけた場所。同じ席でレールが再び威厳を纏い、鎮座している。


同席しているのは隻眼のおっさん含む幹部、ハドソン、ミレン、アキハねぇ、レンド、そしてオレ。


全員から体調の心配をされたが、もう大丈夫と答えた。……ああ、大丈夫だ。


「では、昨日の襲撃について、皆に知らせたいこと、共有したいことがある。ハドソン」


「はい。昨日の負傷者、死者に関してですが……一度行った報告を取り消しさせて頂きます。負傷者、死者、ともにゼロです」


ざわつく会議室。……負傷者ゼロ?


「この件に関してフウヤ殿が何か行ったと思われるが……フウヤ殿、なにを?」


「……人の死の概念を破壊、要は死んだことを無かったことにする魔法を使った。チート級の魔法だが……使えるのは一度きり。つまり、昨日ので最後だ」


批判覚悟でありのままに伝えた。伝えなければ、この魔法を頼りにされてしまう可能性がある。それを消すためには、仕方のないことだった。


「フウヤ殿、この件に関して我々から一切の偽りなき本心を伝える」


来るか。そう思ったとき、


ガタッガタッ


「……本当に、ありがとう」


隻眼のおっさん含む幹部達が立ち上がり、挙って頭を下げた。……これはさすがに予想外だった。


「……異論はないのか?アンタらが死ぬときにだって使えた魔法を、一般の兵士に使ったんだぞ」


「ですが、その時に必ず使えるとも限りますまい」


「…………」


「未来ある若者や家族のいる者に、一切の惜しみ無く使ってくれた……これに何の異論や文句がありましょうか」


「…………ははっ。変わってんな、アンタら」


「フウヤ殿も人のことは言えますまい」


「……だな」


こんな好意的に受け取られるとは、な。正直、意外だ。……ま、一部違うみたいだけど。


「フウヤ殿」


眉間に皺を寄せていたレールが発言した。


「このことについて私から意見を申したいが……過ぎたことなので、発言はしない」


「言ってるようなモンだけどな、それ」


「……。一つ確認したいことがある。フウヤ殿、先ほどの魔法の話だが、死者を生き返らせる、という認識で問題ないか?」


「ああ。……となると、疑問が出るよな。……負傷者ゼロの件。オレも同じことを思ってた。誰か、そんな魔法ないしは治癒術を使ったか?」


一様に皆、首を振る。直後にミレンが言葉を発した。


「アンタの魔法の副作用ってことない?蘇生ついでに~、みたいな」


「んなウマい話があるか。仮にそうならオレの怪我も治ってたはずだろ」


「……じ、術者にはかからない、とか?」


「アホな年増を放って話を進めるけど」


「なっ!」


「……誰かがオレの魔法に乗じて回復魔法をかけた可能性がある。ここにいない別の誰かが」


「誰か……味方なのか?」


「味方なら出てきて協力してほしいが……情報が少なすぎる。これ以上の議論は意味ないだろ」


「そうだな。この件は各自留意しておくことにしよう。……で、もう一つ、フウヤ殿による優柔剛健の無断釈放についてだが」


「え、軍法会議?待ってギロチンとかマジ勘弁」


「……一時、少女との接触完全禁止も考えたのだが」


「それならギロチンの方がまだマシだ……!」


「緊急事態であったこと、何やら事情があることなどを鑑み、今回は不問とする」


「よっしゃ!これで幼女とキャッキャウフフし放題だぜ!」


「……。次回から私達に相談するように」


レールがオレのボケに対応してくれない……。仕方ないよね、シリアスなんだもん。


「そして、レーテリアから報告だ。向こうにも魔物が攻めてきた。が、負傷者こそ出したものの、死者はいないそうだ」


「……それを聞いて安心した。気がかりだったからな」


「そして本題だ。……今後、専守防衛に徹するか、攻勢に転じるか」


ざわつく会場。続けてレールが発言する。


「私の意見に釣られる者も多かろう。私は最後に意見を述べさせてもらう」


ヒソヒソと話し始める皆。……意外だな。


「ミレン。お前はてっきりいの一番に攻めに行くわよー!!とか言うと思ったんだが」


「アンタ、私をなんだと思ってんの?」


「猪突猛進系の猪女」


「ゴーレムに襲われたい?」


「ごめんなさい」


「……私にも考える時くらいあるわよ」


「?……ま、いいや。……レンド、お前は?」


「……なんとも言えねぇ。俺も誰も死なせたくないって思いはお前と同じだ。攻めれば隙をつかれる危険が高まる。守れば、それだけ敵の勢力に勢いをつけ、犠牲者が増える可能性がある。……つまるところ、どっちも誰かを死なせる可能性は高い」


「……アキハねぇは?」


「私に聞くの?フウヤくんの中ではもう答えが決まってると思うけど」


「……バレてたか」


「言ってきなよ、みんなに」


「……」


アキハねぇに笑いかけ、挙手する。


「フウヤ殿……」


隻眼のおっさんが見る中、言葉を発した。


「オレから意見を言わせてほしい。レール」


「……ああ」


皆に向き直り、偽りのない本心、考えを述べる。


「……オレは誰も死なせたくない。……最初はそんなこと、考えもしなかった。でも、今は違う。この国のみんなを……守りたい」


「…………」


「攻めに転じたら、その間のこの国の防御力は低下する。故に敵に襲われたら被害は大きい。守りに徹したら敵に勢いをつかせることになって、その分被害が大きくなる可能性がある。……だから、“両方”だ」


「……敵は強大だ。三連凶、四砲手を上回ると言われる七紅魔と呼ばれる存在もいる。そんな相手に半端なことは」


「半端にはしない。どっちも全力だ。……オレやミレンを中心に少数精鋭で攻め込む。残りの兵士は全員、ここで守りを固めてほしい。勿論、今度こそ抜かりないようあの場所も厳重に守る」


「……。現在、この国とレーテリアは事実上共闘状態だ。クラットスもそれに気づいている。向こうもまた襲われる恐れがある。フウヤ殿の通りにするならば戦力を三分割することになるが?」


「考えがある。レーテリアとこっちの戦力を一緒にできる考えが。……皆の協力も必要になるが」


「攻めと守り、同時に行う。そういう意見で構わないか?」


「ああ」


初めて相対した時のように鋭い双眸で見続けるレール。…………ふと、表情が和らいだ。


「……私の言った通りになりましたな、レール」


「まったく。呆れるばかりだ」


……んん?


「フウヤ殿、すまない。貴殿はそう言うんじゃないかと私たちは予想していたのだ」


「私の見込んだ男が、攻めか守りかなどという二択に縛られるわけないだろう、とな」


「……試したのか、オレを?」


「確認したかっただけだ、その決意をな。……みな、フウヤ殿の意見、どう思う?」


「わたしは賛成であります!」


「我輩もだ」


「全員守れるなら、その方がいい!!」


モブA、モブB、モブC……お前ら。


「アンタはとりあえず後であの人達に殴られてきなさい」


「なんで考えバレとんのや、和葉」


「誰が和葉よ。……アンタらしいわね、この作戦」


「自分……不器用ですから」


「アンタは一度、各方面に思いっきり怒られてきた方がいいわね」


「勘弁してくれよ、年増ぁ……!」


「……私は賛成よ。コイツの意見」


「俺もだ。そっちの方が断然いい」


「私も異論は勿論ないよ。……でもフウヤくん」


「ん?」


「フウヤくんが攻めに行くなら勿論私も着いていくよ。妹だもん」


「俺も行く!絶対後悔させねぇから!」


「わたしも行くであります!」


「我輩もだ」


「オレもオレもー!!」


途端に攻めに一斉参加を表明するモブども。


「あー、ちょっと静かにしろ。……攻めに行くメンバーは隻眼のおっさんやレールと話し合って決めるから」


「そうですな。レーテリアともこの辺りは話しておきませんと」


「……フウヤ殿、先程この国とレーテリアの戦力を合わせる、という話があったが」


「ああ。早い話、レーテリア王国とそれを形成してる街全部、それとこの国の領土の散らばってる町を全部この辺りにギュッと集結させる」


再びざわつく会場。


「……そんなことが可能なのか?」


「ああ。こん中だとレンドに見せたか。オレが使う魔法に距離の概念を壊す魔法がある。コスパが悪いから普段は使わないんだが……それでレーテリアとこの国の距離の概念を壊す。そうすることでレーテリアがすぐ近くに来ることになる」


「また……とんでもないこと考えるわね、アンタ」


「誉めんな誉めんな。年増から誉められてもなんとも思わ……話を戻そう」


悪寒がしたので止めると、背後に気配が。やめろよ、今シリアスっぽいことしてるんだから。


「ただこの魔法を使うために注意点がある。対象の国、つまりレーテリアやそれを構成する町の人間全員に知らせないといけない。誰かが出掛けてる隙にかけたら、ソイツは荒野でポツンとなっちまうし、魔法の行使中に範囲外に出たらどうなるか分からん。周知は絶対だ。それともう一つ、魔力が足りない」


「……それはフウヤ殿を持ってしてもか」


「そもそもオレは魔力自体はそんなにない。その点ではこっちがおかしいくらいだ」


ミレンを指差す。ホント、コイツのどこにあんなポンポンゴーレム作る魔力があんだ?


「フフン」


ドヤァ……とドヤ顔を決めてるのが腹立つので、視界に入れないようスルーする。


「オレと……三人力を貸してほしい」


「それは勿論構わねぇが……力を合わせるって具体的には?」


接触破壊アタッチ・ブレイクっつー虫退治の魔法を応用して、魔力をオレに集中させる。多分できるはずだ」


「虫退治……」


レンドが渋い顔をする中、ミレンが尋ねた。


「ねぇフウヤ。それって魔力さえどうにかなればいけるのよね?」


「ああ」


「なら力貸すのは私だけでいいわ。アンタも魔力流さなくていいわよ」


「……いやいや。あのな、ミレン。お前が魔力お化けなのは知ってるがさすがに3~4人分の魔力持ってるわけ」


「持ってるわよ。私、無限の魔力持ってるから」


……は?


「ムゲンノマリョク?」


「そうよ……あれっ、言ってなかったかしら?」


全員がポカンとしてる中、ミレンが矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。


「四砲手と戦う時にインフィニット・ウィッチクラフトっていう一度唱えたら魔力が無限になる魔法を唱えて」


ミレンの肩を掴む。寄りかかるように。


「お前……






それもうちょっと早く言えよ」

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