ロリっ娘のお願いを聞くのはロリコンの務めです
「ーーで、話戻すけど、アナタは誰?どうして私たちを匿ってくれたの?」
「……あたしはハル。ハル=ミレッタといいます。この街で占術師を営んでいます」
「占術師?」
「預言者と言えば分かりやすいでしょうか?未来を予測し、人々に伝えることで、生計を立てています」
「未来を……?」
「ハルちゃん。未来でオレとキミは結婚できるかな?是非とも見てほしーー」
「うっさい!」
「はぐぅあっっ!!」
年増に何度目かもう分からない暴力を振るわれる。モウカエリタイ……ハルちゃん連れて。
「何故匿ったのかでしたね。……あなた方にお願いしたいことがあるのです。そのために、兵士の方々から匿わせて頂きました」
「お願い?」
年増が聞き返すと、ハルちゃんは一呼吸置いて、少し強めの口調でオレたちに訴えた。
「お願いです!この国を……この世界を救ってください!」
「……はあ?」
「……はあ?」
とりあえず落ち着ける所をと、近くにあったハルちゃんの家に案内された。
「おぉ……!ここがハルちゃんの家……!」
くんかくんかと匂いを嗅ぐのに必死なオレを、年増は掃き溜めに捨てられた汚物を見るかのような蔑んだ目で見た後、真剣な表情でハルちゃんに向き直る。
「話を聞くわね。……世界を救ってほしいってどういうこと?そもそも、なんで私たちに?」
「あたしは占術師だと、先ほどお話ししましたよね。数日前、この水晶を通して未来を見た時、別次元のかなたから、空より二人の方が舞い降りるのを見たのです。水晶は、このお二人が世界を救うことのできる人物だと、あたしに訴えかけました。……それが、あなた方です」
「別次元のかなたから舞い降りる……まあ大幅には間違ってないな」
「いや、間違ってるでしょ。私たち、舞い降りたんじゃなくて、落下してきたのよ」
「?落下……?」
キョトンとするハルちゃん。ああ、マジ天使。
「……ハル。あのね、確かに私たちはいわゆる別次元から来たわ。でも、世界を救うなんて大それたことできないわよ。出来るのは精々が魔法で」
「その魔法が、世界を救うことのできる証です!」
「え……?」
「この世界では、魔法を扱うことのできる人はほんの一握りです。……あたしの祖父の時代にはたくさんいたそうですが、頻発して起きた人同士の戦争により、魔法を扱える人は戦線に立たされ、多くの人が亡くなりました。伝承方法が確立されていなかったことも災いし、この国で魔法を扱えることのできる人はわずか3人しかいません。その3人も、国に忠誠を誓っている人々。この国が行っている圧政に立ち向かえる人はいないのです」
「…………」
「…………」
「同じような戦争は各国で起きています。毎日、たくさんの人が苦しんでいます。……あたしは、この世界を変えたいんです。みんなが笑って暮らせる世界に……したいんです」
「ハルちゃん、ちょっとタンマ」
すぐに年増と緊急会議。
「おい、この国、魔法が使えるって設定じゃなかったのか?」
「私もそう聞いたわよ。どうなってるの?」
「大ボラ吹きやがったのか、あの痴神?」
「だからアイツ、急に態度を変えたのね。私が魔法使えるから。戦線に立たそうとしたんだわ」
「あの、何の話を……?」
ハルちゃんが困惑して、疑問符を浮かべている。ああ、これだよ。少女ゆえの無垢さ。年増にはない魅力!
「…………」
再び年増が蔑んだ目で見ているが、年増にそう見られても何とも思わんな。
「気にしないで。……ハル、今のこと、本当なのよね?」
「はい……すみません、急にこんなこと言って」
ハルちゃんの言葉に、深い深いため息をついた後、年増が言った。
「あのね、ハル。私たちに世界を救うなんて大それたことはできないわ」
「……。そう、ですよね。……すみません、こんなーー」
「でも、友達を助ける事ならできる。私たちにどこまでできるのか分からないけど、精一杯やってやるわ!」
「そうだな。ハルちゃん、任せとけなんて大見得は切れないけど、できる限り協力はさせてもらうよ」
「お二人とも……!ほ、本当に……!?」
「ミレンよ。次からそう呼んで」
「オレはフウヤ。よろしく!」
「……。ありがとう、ございます。本当に、本当に……!」
拭いきれないほどに涙を流すハルちゃん。
これまでどれだけ苦しかったんだろうか。どれだけ辛かったんだろうか。でも、もう大丈夫。
「ハルちゃん。これからオレは、一生かけてキミを守って!?」
言い切ることなく、年増にハイキックをお見舞いされた。