レッツ、コンテスト! 2
Cブロック。二人ほどのPRが終わったところで、遂にこの時が。
『では次の方に参ります!外見は幼く、あどけない。かといって侮るなかれ!その正体は妖艶な少女!今大会でも注目を集めるだろう一人!アキハ=カリミヤさんです!』
「やっほー!みんなー、よろしくねー!」
うぉおー!!と歓声があがる。……中身が姉でさえ、姉でさえなければ……!!
さすがアキハねぇとでも言おうか、オレのツボを心得ている。全体的に白をメインとしたお嬢様風のコーディネート。やめろよ、オレを現実と理想の狭間に押し込めるのは!
『本日はよろしくお願いします、アキハさん。今回出場された理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?』
「んー、面白そうって言うのもあったけど……一番はキレイな姿をフウヤくんに見せたかったからかな!ね、フウヤくーん!きれいー?」
アキハねぇがオレに手を振る。知らない。ボク、あの人知らない。
観客席の憎悪がオレに突き刺さる。大丈夫、痛くない。痛くない。こんくらいで痛がってたらオレ、多分とっくに死んでるもん。……あ、死んでたわ。
「ねー、フウヤくーん!」
「……黙秘で」
「それってキレイってことだよね!きゃっ、嬉しいー!」
憎悪が濃くなる。アキハねぇ、オレにもう一度死んでほしいんですか?
「……明らかに少女なのに、俺の心をかき乱すこれはなんだ……!?」
「魅了じゃね?」
「……使えんの、あの人?」
「さあ?」
「……魔法を使えるのかね、彼女は」
唐突に話に入ってきたのは老人、ゲシュタだった。
「多分な。爺さんの時は今ほど珍しくなかったらしいな。魔法使えるの」
「そうさな。魔法を使えんのがむしろ少ないぐらいじゃ。ワシは使えない一人じゃったが……まさかそれで長生きすることになるとは思わんかったのう」
「……」
アキハねぇの紹介が終わり、次の番になる。ステージで参加理由を尋ねられる女を見ながら、ゲシュタが語る。
「お主も魔法が使えるな?」
「分かんのか?」
「年の功じゃ。……強大な力を持つ故に悩むこともあるじゃろう。重大な決断を下すことも。……その時は我が身優先でいい。英雄になどなろうとせんでいい。……英雄を目指し、散っていった者たちが今でも目に浮かぶわい」
「……爺さん」
「なんじゃ」
「涎垂れてる」
「なんと。イカンイカン。女子に酔いしれておったわい。いくら年を重ねても男は女に勝てない。そう思うじゃろ、少年」
「……ったく。爺さんってのはどいつもこいつもそうなのかね」
『Cブロック準決勝は……アキハ=カリミヤさんです!』
知ってた。だって観客席も審査員席も魅了されてたんだもの。オレ?別の人にいれようもんなら首と胴体がお別れすることになるから、静かにいれたよ、アキハねぇに。
『では続いてDブロック。彗星のごとく現れた超美少女!彼女に見つめられれば誰でもイチコロ。今宵、あなたは新たな魅力に気づきます。ミレンさんです!』
「え゛」
美少女?誰が?え、あの年増?少女は一億と二千年歩譲って見逃すとしても……え、どこが美?なんて思ってたらなんか飛んできた。
なんだろなー、なんて気軽に思いながら頬から血が溢れ出してあばばば~……。
『はい、ミレンさん。本日はよろしくお願いします』
「よ、よろしく……」
『さて、早速ですが、本日参加していただいた理由をお伺いしてもいいですか?』
「その……み、みんなにいけるっておだてられて……自信はないけど、その、頑張ってみようかなって……」
『…………』
「ちょ、なんか言いなさいよ」
『あ、すみません。あまりの可愛さに、つい』
「なっ……!なに言ってんのよバカッ!!こんな人前でそういうこと言うフツー!!もう……バカッ!!」
あ、ヤバいっすね。観客と審査員ふ抜けてますね。特にレンドが重症です。彼はもう終わりですね。
「あーもうっ!これで質問終わりよね!?」
『ま、待ってくださいっ。最後に一つ……好みの男性のタイプは?』
遂に職権乱用しだしたぞ、アイツ。
「はっ、はぁっ!!なによそれ!他の出場者には聞いてなかったじゃない!」
『まあまあ、お堅いことは抜きに。……で、どうなんです?』
「そ、そんな急に言われたって……。強いて言うなら」
ごくり、と生唾を呑む観客とレンドを筆頭とした審査員。興味ないから鼻ほじってよう。……あ、でかいの取れた。
「……わ、私を……ずっと見守ってくれる……人」
うぉおー!と野太い歓声があがる。俺が!いいや俺が!と騒ぎ出す観客。
「お、俺には女房が……ぐっ、が、この衝動はなんだ!?」
「あそこまでウブじゃと返って誘いにくいわい。純情の塊じゃのう、あの子」
「え、アイツBLと暴力で構成されてる女っすよ。そんな女に純情なんてあるわけ……あるぇ?ホモ・ゴーレムくぅん?キミ、どっから?」
「ずっとスタンバってたぜぇ?」
「ハ、ハハハ……いぃやぁああー!!」
オレは駆け出した。明日を手にいれるために!!
「もっ、もういいでしょ!下がるわよ!」
『は、はい……。ありがとうございました』
「いや……破壊力やべぇ。ツンデレ好きに目覚めそう」
「確かにヤバかったなぁ。……ウチのかみさん、見てないよな?思わずなんか叫んだ気がするが」
「アンタのかみさんかは知らんが、えらい形相でアンタを睨んでおったぞい」
「……うし。今のは聞かなかったことにしよう。いやさせてくれ」
「精神を保つのに必死じゃのう。その点、ワシは独り身じゃから気楽でいーわい」
なんとかホモ・ゴーレムから逃げ切り戻ってくると、審査員と観客がミレンショックから立ち直っている最中だった。
『み、皆様大丈夫でしょうか……?心臓が撃ち抜かれた方はスタッフにお申し出を。……大丈夫?では続けて参りましょう。Dブロック、エントリーNo.2』
レンドの嫁候補が立て続けに三人、一般が一人と出場したが、このDブロックの趨勢はもはや決したようなもので。
『ではDブロック準決勝者発表します!……審査員全員一致!準決勝進出はミレンさんです!』
知ってた。もう残りの4人はミレンに入れるだろうし。オレも他の出場者が年増だったんで、弟としてのほんの僅かな情けで入れた。感謝しろよ、ミレン。
『ではミレンさん。準決勝に向けて意気込みを!』
「……分かったわよ。マイク貸して」
ハドソンからマイクをひったくり、右手の人差し指をまっすぐ伸ばして、年増が高らかに宣言した。
『このまま優勝してやるんだから!さっ、最後までしっかり応援しなさいよねっ!!』
「うぉおー!!」
会場のみなさん、ツンデレ耐性なさすぎっすね。
『さて……ボクらの心に幸福と充足感を与えたDブロックでした。次に参りましょう。Eブロック、エントリーNo.1、サヴェズダ=マキニさんです!』
「っ!」
幼女カウンター、ON。14歳の女の子。ふむ、ハルちゃんと同い年か。
ふむふむ、悪くない。大人しめ系ではないが、生意気な女の子。それもまた良し。ワガママに振り回されるのも悪くないです。むしろご褒美です。
「この時を待っていたわ……。我が名はサヴェズダ=マキニ!漆黒の衣纏いし黒龍より名を授かった者。今宵は我が秘匿されし名を明かす絶好の機と判断し、参上したわ。我が美麗なるその姿、網みゃくに焼き付けるがいいわ!」
……か、かっ……!
「可愛ぇぇ……!!」
なにあの噛み方。堂々と噛んで恥ずかしがる幼女の姿なんてそうそう拝めんぞ。
「~~っ!い、今のは下々でも親しみやすくしようという私の粋な計らいよ!ここにいる下々も、その点は重々承知しでっ!!」
し、舌噛んで悶えてる……なにあの子、可愛い。さっきのバーシェ=カリットちゃんとはまた違った方面に可愛い。幼女カウンターがとうに1万点越えました。
『だ、大丈夫ですか、マキニさん?』
「さヴぇずだ=マキニよ!フルネームで呼ぶことね!」
自分の名前でも甘噛みしてる……もう勢いで誤魔化そうとしてるのがほんとにいじらしくて愛らしくて可愛い。側で愛でたい。モフモフしたい。モフモフして怒られて、怒ってる途中に噛んで真っ赤になるのを見届けたい。そしてまた怒られたい。
『えっと……本日、参加していただいた理由をお伺いしてもいいですか?』
「当然、私の名前を世に知らしめるためよ!トップに興味はないわ!……まあ、本当は興味あるんだけど、この後我が同胞のハルが来るからね。その娘に皆投票なさい!……ああ、私の可愛さに心から感服し、永久服従する意思があるなら私に投票しても構わないわよ。しっかり躾けてあ・げ・る。ハーハッハッはっ!?」
高笑いしながらステージを降りたサヴェズダ=マキニちゃんに悲劇が起きた。足がもつれて転んだのだ。ピンクのフリフリの、レースがついた逆三角形の物がお見えになる。あ、勿論ガン見です。紳士にこれをスルーする術はない。
「いたた……っ!」
痛がっていたマキニちゃんはすぐに状況に気づき、隠して立ち上がりながら涙目になってこう訴えた。
「おっ、押しが弱いかと思って最後に魅了の魔法をかけてあげたわ!これでこの場の者全ては私の眷属よ!……眷属なんだからねっ!!」
慌てて裏にさがるサヴェズダ=マキニちゃん。……キミの名前、キミのパンツ、そして中二病強がりツンデレドジッ子のキャラ、決して忘れない……!
『……色々とインパクトのあった、サヴェズダ=マキニさんでした。……さあ、気を取り直して、エントリーNo.2、純情可憐を体現した少女、ハル=ミレッタさんです!』
待 っ て ま し た 。
「み、皆さんっ。本日はよろしくお願いします!」
トトトと駆け寄ってきて緊張で上擦った声のハルちゃん。……あ~心がぴょんぴょんするんじゃあ~。
『はい、よろしくお願いします。早速ですが、参加した理由をお伺いしてもいいですか?』
「はいっ。参加した理由は……」
チラッとオレを見るハルちゃん。オレ渾身のアルカイックスマイルで返す。
「……ある人に熱烈に押されて。あと、友達のマキニちゃんに誘われたのもあって参加しました」
『なるほど。色んな人の後押しがあったんですね』
「はいはいはーい!!」
勢いよく手を挙げる。
『どうしました、フウヤさん?』
「一つ、質問よろしいでしょうか!?」
『公序良俗に反しない程度でお願いします』
「……くっ。たった一つだけか」
「いやいくつあったんだよ。そんで大半が反してるんかい」
レンドのツッコミを聞き流し、ハルちゃんに尋ねる。
「ずぱり、好みのたい…………特技はなんですかっ?」
オカンが走った。違う、悪寒だ。恐怖のあまり誤字った。
舞台袖をチラリと見れば涼しげな表情のアキハねぇ。え、なに?この質問そんなダメ?
「……特技、ですか?」
「そうそう!ハルちゃんの特技知らないなーと思ってさ」
「……そう、ですね。特技……あ。さっき登場したマキニちゃんに、アピールするならって言われてるものがあるんですけど、それでもいいですか?特技になるかは分かりませんが……」
「そ、それでお願いしますー」
良かった。悪寒がやんだ。命の危機は脱したようだ。
「分かりましたっ。では失礼して……」
スー、と息を整えるハルちゃん。そして胸の前で手をハートの形にし、
「……お兄ちゃん、大好きっ!」
『ごぱぁっ!!』
対ロリコン・シスコン撲滅呪文を解き放った。
「だっ、大丈夫ですかっ?」
『……。はい、大丈夫そうです。一部の紳士の方に影響しましたが、大丈夫ですよ。彼ら、とても満足そうです』
「そうですか。なら良かったです……」
『フウヤさん、もう大丈夫ですか?』
「……お、おう」
『はい。ハルさん、ありがとうございましたー。次はエントリー』
この先も出場者が出たが、年増であったが故にオレの中では二択だった。素晴らしい尊きものを見せてくれた新感覚のサヴェズダ=マキニちゃんか。癒しの天使、安定感マシマシのハルちゃんか。最終審判は非常に辛く厳しいものだった。……が、決着は着いた。
『ではEブロックの結果発表です!……サヴェズダ=マキニさん1、ハルさん4。準決勝進出はハル=ミレッタさんです!』
「あ、ありがとうございますっ!頑張ります!」
許せ、サヴェズダ=マキニちゃん。人は誰しも安牌を求めるものなのだ。キミの事はいずれ、おいおい。
『では準決勝に参ります!勝ち残った方の準備とステージ設営に少しお時間を頂きますので、お待ちください』
「……なぁレンド。勝ち残ったのってマナとハルちゃんと誰だっけ?」
「お前、ホント幼女のことしか……って、マナが勝ち残ったの覚えてんのか。珍しい」
「……あれ、ホントだ。まあインパクト強かったんだろ。トップバッターだったし」
「……ふーん。ま、いいや。後はミレンちゃんにアキハさん、キッシュって娘だな。……キッシュって娘以外、お前の知り合いか。怒りが沸いてくるな」
「オー、レンドボーイ。そうかっかしてはイケマセーン」
「このコンテスト終わったら、とりあえず埋めるか」
「なんでや服部」
「お前は誰だ」
「……君の前前前世からボクは~♪」
「歌い出すな!」
いや、今のはフリだって、絶対。
『えー、会場の皆様、お待たせ致しました。ステージ設営完了致しました』
ハドソンの声でレンドとの会話を切り、ステージ上を見る。……ファッションショーみたいな、会場の真ん中に少し大きめの円形のステージと、そこへ伸びる一本の通路。……これ、まさか。
『準決勝において問われるは、着こなし、優雅さ、服を表現する演技力!準決勝進出の皆さんには各々で服を選んでこのステージを歩き、表情と仕草のみでアピールしてもらいます!』
なるほど、そう来たかー。……ハルちゃん、ゴスロリ着てくれないかな。一億点あげられる準備はできてるんだけど。
『まだ出場者の方の準備が整っていないので、その間私の方で選びました、雅で優雅な大人の方達によるスペシャルステージを行わせて頂きます!どうぞ!』
会場の照明が一瞬消える。次に明かりが点いた時、目に飛び込んできたのは、
『もう、もう、もう、キミに夢中~♪』
年増達によるアイドル風な衣装と歌声だった。突然の展開に、さすがのオレも頭が追い付かない。
『どうしたの?何か考え事?私に話してみてーくれない?』
……よく見たらあの年増達。
「レンド。あれ……お前の嫁候補達じゃ」
「なぁ、フウヤ。変態って、殺しても罪にならないよね?」
「なるから。落ち着け」
この状況を仕組んだであろう張本人は、頭にバンダナを巻いて法被着てサイリウム振ってる。アイドル好きな一面でもあんの、お前?
「あいっ、あいっ、あいっ!!」
会場の皆さんもノリノリっすね。
『――ずっと~。……ありがとうございました!』
「わぁー!!」
『いやー、こちらこそありがとうございました。“ブライダル・フォーエバー”さんによる“キミのためなら”でした。……あ、もう準備できた?いや、もう一曲だけ……ダメ?分かりました……。名残惜しいですが、アンコールはダメだそうです。また会いましょう!“ブライダル・フォーエバー”の皆さん!』
「さよーならー!!」
「ありがとうー!!」
ええい、年増の媚びた挨拶に返すな男ども。……荒んでんな、オレ。年増のライブなんてものを見てしまったからか?落ち着け餅つけ。
『では準決勝に参ります!登場はくじ引きによって決めさせて頂いてます。トップバッターは……ミレンさんだぁっ!!』
「うぉおっ!!」
盛り上がる観客席。盛り下がるオレ。一番手アイツかよ。いや、いずれは出るんだけどさ。
「ミレンちゃん、どんな服着てくんだろ?」
「裸じゃね?」
「万が一そうだったら記憶回路に永久保存するわ」
「オレは吐いて回るわ」
言い終わった途端に斬撃がオレ目掛けて飛んできた。ふっ、甘いわ!
間一髪かわすも先程の傷と真反対の所からパックリ鮮血が。あらやだわ年増ってばキレやすいんだからもー。
等と思っているとステージに年増が出現した。
『ちゃ……チャ……』
「チャイナ服、だと……!」
ごくりと会場中が生唾を呑む。足の付け根まで入ってるかと疑うほどに深いスリット。赤を基調に、龍の意匠が凝らされているチャイナドレス。右手に持つ扇子は、今は口元を隠している。
「…………」
普段の姦しさを無理やり内側に押し込み、妖艶な雰囲気を漂わせる。そのまま中央の円形ステージまで進み、ターンを返しながら扇子を舞わせ、
「……」
左手で投げキッス。おえっ。
吐き気を催したオレとは対照的に俄然盛り上がる観客席。レンドがさっきから動かないが……生きてるか?後で脈確認しとこ。
そのままステージを下り、裏に下がるミレン。数秒に渡る沈黙の後、
『ぶ……ブラボー!ブラボー!』
沸き立つ観客、実況のハドソン。……うるせー。
「いやはや……素晴らしいものを見せてもらったわい」
「言葉が……もうなんも出てこないな。野菜に喩えるなんて無理だ」
「…………」
「レンドー、生きてるかー?」
「……はっ!み、見たかフウヤ!?」
「何を?」
「今、あそこに女神が!」
「妖艶(笑)の年増なら見」
キュンッ!
やだもーミレンさんってば地獄耳ー。どうやったらステージ裏から鉛玉正確にここ飛ばせるんですかー?おかげでキュンとしちゃったじゃないですかー(壁が)。……やめろよバカ、死ぬだろ?
「み、ミレンちゃんか。……てっきり俺死んで、女神に会ってしまったのかと」
「オレも(死ぬかと思った)」
「いやー、やっぱミレンちゃん凄いなぁ。……まだ4人いるけど、俺の中で決まったかも」
『続いてはハル=ミレッタさんです!』
勢いよく首をステージに向けた。ゴキッていう嫌な音したけど気にしない。首メッチャ痛いけど気にしない。
『これは……』
「ゴスロリ……だと……!」
我が悲願、ここに成就せり。普段ハルちゃんが好んで着る白い系統の服ではなく、黒のフリフリ付きのゴスロリ服。しかもお肩をお露出しており、発達途中のものの谷間がほんの少し……。
「煩悩退散!」
ゴォン……!!
「フウヤ!?」
「え、なに?」
「いや……大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、問題だ。主にオレの煩悩が」
よーし、将来の夢決まったぞー。僧侶になって煩悩を消し去りながら寺に遊びに来るロリッ娘と戯れるぞー。
煩悩を退散させながら、自身の欲望のままにハルちゃんを凝視する。仕方ないよね、人間って矛盾の塊だもの。
先程の年増と違い、少し軽快に歩くハルちゃん。無邪気さも合わさって幼女カウンター2億点あげちゃう!
真ん中の円形のステージに到着したハルちゃんは、そのままクルリと一周。浮き上がるスカート。み、みえ……みえ……!
「……」
その後、破壊力抜群なウィンクを肩をすくませながら行う。+一億点、と。
仕草と挙動の一つ一つが癒しとなったハルちゃんは深い余韻をオレに残し去っていった。
『続きまして、キッシュ=ハーバトルさんです!』
コイツの事は覚えてない。というのもオレの脳内ではハルちゃんのランウェイ姿が再生されていたから。
魅入っていたレンド曰く、蠱惑的な衣装で心かき乱され、オレをやたら見ていたので殺意が沸いたとのこと。いや、絶対気のせいだろ。接点ないぞ。だから関節技をかけるなと抵抗したが叶うことなくスリーパーホールド。ったく意識落ちるとこだっただろうが。
『続いて参りましょう。マナ=トラシフルさんです!』
次の出場者はマナらしい。ステージを見る。今までのはどこか刺激的というか、見せることに重きをおいた衣装だった。が、マナのは違った。
足首まで覆ったロングスカート。それと一体になってる上半身のそれは胸元、肩を露出しているにも関わらず扇情的ではなく清廉さを漂わせる。――ウェディングドレスだった。
「…………」
観客席、審査員、オレも思わず見入る。小さく開かれたその瞳は幻想的でそれをうっすらと覆うベールはその神秘性を強めていて。歩くその姿は消え入りそうで。
「…………」
気づいたときには、マナは既にステージを下りていた。
『……会場の皆さま、意識ははっきりしていますでしょうか?正直ボク、まだ少し混濁しています……』
「彼女……とんでもないものを持っておったのう」
「ええ。あの雰囲気、何者にも安易に手を触れることを許さぬ雰囲気でした。それこそ、彼女の生涯のパートナー以外は」
「マナ……」
「……今のは正直、凄かった。見入った……」
「お前が見入るってよっぽどだよな……すげぇステージだった」
心ここに在らず、な会場。ぼんやりとしてる様子のハドソンが次の出場者、アキハねぇの名を呼ぶ。アキハねぇが登場したその瞬間、熱にうかされた会場が高熱を帯びた。
『す……ス……』
「スク水……だと……」
時期と場所を間違えてるんじゃなかろうかと問いかけたくなる。が、アキハねぇは毅然とした態度で胸を張っている。胸の中央には平仮名で「あきは」の文字。
「かっ……かっ……」
「かはっ……!」
観客の一部が吐血する。夢遊病のように動き出す一部の観客を警備している兵士が制止する。
アキハねぇが生み出した影響は、審査員にも及んでいた。
『皆さーん、愛らしいですよね?こんな妹いたらいいですよね……?』
「孫がおったら、こんな感じじゃったろうか……」
「レン……お前にもこんな頃があったんだぞ……」
「レンド、大丈夫か?」
「俺は、なんとか。……残りがヤバいな」
「持ち前の人を魅了するスキルに加えて、ロリ全開のスク水だ。そりゃヤバくもなる。……終息するのを待つか」
それから十数分。アキハねぇが退場してから時間はかかったが、ようやく進行が進んだ。
『それでは審査員の皆さま!決勝に進む2名の方をお選びください!得票数の多い2名が決勝進出です!』
「うわ……悩むな」
「オレはもう決まった」
「早ぇな!……一人は分かるが、もう一人は誰だ?」
「……あれはズルかったわ」
『では、結果発表です!…………決勝進出は、マナさんとミレンさんだぁっ!!』
「うぉおー!!」
んー……ハルちゃん来なかったか。残念だ。
「フウヤ」
「あ、んだよレンド。オレはハルちゃんが来なくて落ちこんでんだ」
「……お前」
「ん?」
「……。いや、なんでもない。野暮なマネだった」
「…………」
『では決勝に移らせて頂きます!決勝の準備に時間がかかりますので、その間……再び来てもらいましょう。“ブライダル・フォーエバー”さんで“To You”です。どうぞ!』
レンドの顔が険しくなっていく。ハドソンのお墓を絶てるウラ。
「……ん?」
今、誰かに見られてたような……。気のせいか?
『それでは決勝に参ります!PR、服の表現力とくれば……演技力でしょう』
基準が分からん。
『決勝は……想いを寄せる男性への理想の告白だぁっ!!』
「うぉおぉっ!!」
「ミレンちゃんとマナの告白……気になる。どんな感じなんだろ?」
「ミレンっつー子は容易に想像できんだろ。ツンデレ系だ。ワサビ食わした後に人参食べさせるようなモンよぉ」
「そう単純な喩えで済むかのう……。マナという娘も真っ直ぐに想いを伝えるタイプかと思うが、はてさてどうなることやら」
「…………」
マナの告白、か。相手はレンドだろうな、きっと。今はオレになびいてるけど、最終的にはレンドとハッピーエンドが無難だ。
片やイケメンで国の兵隊率いてて、片やフツメンで強いだけが取り柄。欠点も挙げればこちらの方が多さにおいて軍配があがるだろう。
そもそもオレ、略奪愛とか首尾範囲外だし。むしろ地雷だし。そうだな、うん。……。……なのにモヤモヤすんのはなんでだろうな。
『では決勝に移ります!マナさんによる告白演出です、どうぞ!』
考えてる間にマナが登壇した。
マナにスポットライトが当たる。体のラインが分かるようなタイトな服装。
胸に手を当て、目を瞑っていたマナはゆっくり眼を開き、言葉を紡いだ。
『ずっと……この日をお待ちしておりました。……アナタが私を嫌っていた、私があなた様をお慕い、想いを募らせ始めた、あの日から。……あなたに会えない日々もありました。想いばかりが先走り、ぶつかる日もありました。数多くの困難、試練を、今日まで乗り越えてきました。……もう、心にしまいきれなくなってしまいました。この想いを』
ゆっくり、一歩ずつステージを歩き始めるマナ。マナの声以外聞こえない会場で、今にも壊れて崩れてしまいそうな表情を浮かべ、進む。
『もう、私の心の奥底に壁はありません。私とあなたの間の障壁もありません。……残るは、あなたの心の壁のみです。今の私で、その壁が打ち破れるのかは分かりません。……それでも、伝えさせてください。……あなたが、好きです。私の残りの人生を、あなたの為に使わせて、ください……!』
一瞬、オレを見るマナ。すぐに視線を外し、深々とお辞儀をする。歓声が沸き上がった。
『いや、まるで……映画のワンシーンのような、それできて身近さを感じる不思議な告白でした』
「大根の葉のように複雑で、大根の身のように真っ直ぐで……ああ、喩えが合ってるか分かんなくなっちまった」
「ほほ……青春時代を思い出すような爽やかな演技じゃったわい」
「…………」
『では次で今コンテスト最後となります。……ミレンさんの告白演出です!どうぞ!』
少しボーッとしていたのがミレンの登場でスイッチが入り、意識が戻る。
……アレ?アイツ、なんかモジモジしてる?顔も真っ赤。……え、なにアイツ照れてんの?演技とはいえ告白するから照れてんの?年増なのに?ぷぷー、ウケるー。……なにも飛んでこない。そんなに余裕ないのか、アイツ。
「う……うぅ……!」
『ミレンさん、大丈夫ですか?』
「大丈夫じゃないわよ……こんなの聞いてない……!」
おーい、一般客の野郎どもー。年増の上目遣い+涙目で盛り上がるなー。
『かっ、可愛っ……!……。言ったら審査になりませんからね』
「そ、そうだけどぉ……!」
『……というわけでお願いします!!』
「ちょっとワクワクしてない、アンタ!?」
『いえいえそんな。いえいえ』
「顔がニヤケてるわよ!?……うぅ……!あぁ分かったわよ!してやるわよ!最高の告白を!」
『うぉぉー!!』
あの年増はバカなのかな?自分でハードル上げてる。
「……わ、悪かったわね。こんなとこに、その……呼び出して」
あ、待ち合わせな感じなんすね?校舎裏かな?……オレが年増に呼び出されたら間違いなく死の宣告だな、うん。
「こ、ここに呼び出したのは、その……アンタにずっと、言いたかったことがあって……うぅ」
顔を真っ赤にして、涙目になるミレン。口をパクパクさせて続けた言葉は、
「あ、アンタの事っなんて……全然大好きなんだからねッッ!!」
ツンデレの勢いに任せたストレートな告白だった。
「……がはっ!」
レンド、ハドソンを始めに、観客達が喀血。
「……へ、返事は後でいいから。……じゃ、またね!!」
足早にステージを後にするミレン。同時に今日一番の歓声。
『最高!ツンデレ最高!!』
「いや……最高!」
「最高じゃわい!」
「ミレンちゃん、最高ー!!」
駄目だ、全員語彙力を失ってる。早くなんとかしないと。
それから少しして落ち着き、審査に入る。
「くそ、俺はどっちに入れれば……!!」
「悩むがよい少年。そうして己が性癖をさらけ出すのじゃ」
「お前は誰だよ」
「我は神なり。ヤハハ!」
「……というかお前は決まったのかよ」
「……まあ、な」
「……そっか」
『審査員の皆様、よろしいでしょうか?……では、札をあげてください!勝利の栄光、掴み取るのは!…………優勝は、ミレンさんだぁっ!!』
「うぉおー!!」
圧倒的得票差でミレンの優勝が決まり、観客が沸き上がる。そして登壇するミレンを筆頭にした出場者たち……ん?
「どした?」
「……いや、なんでもない」
何か違和感を感じるが……気のせいか?
『ミレンさんには賞金とウェディングドレスを贈呈致します!』
「うぉぉー!!」
『最後にミレンさん、一言!』
「……お、応援してくれて、感謝しかないんだからねッッ!」
「うぉぉー!!」
『今回参加してくださった皆様、盛り上げてくれた皆様、審査員の皆様。本当にありがとうございました!まだまだ祭は続きます!引き続き楽しみましょう!』
「うぉおー!!」
かくして波乱万丈のコンテストはその幕を下ろした。
「ミレンちゃん、おめでとー」
「おめでとうございます、お姉さま!お姉さまが優勝してくださって、わたし感無量で……!」
「ありがとう、二人とも。というかハル、遂に人前でも隠さなくなってきたわね……」
祭の屋台を三人が通り抜けていく。はーあ。ハルちゃんのウェディングドレス、見たかったなぁ。
「フウヤ様」
「……なんだ、マナか。どした?」
「……ありがとうございました。最後まで私に票を入れてくださって」
「……。気にすんな。ただ単に他に入れる人がいなかっただけだ」
「それでも嬉しかったのです。たとえ心からのものでなかったとしても……最後の一票は、私にとって忘れられないものとなりました」
「……」
「……それだけ言いたかったのです。それでは」
立ち去ろうとするマナ。口が勝手に開いた。
「最後の!」
「?」
「最後の……告白の演出、本当に良かった。……ウェディングドレスも似合ってた」
「……」
嬉しそうに微笑んで立ち去るマナ。……あー、マジかー。オレ、いつの間に……。
「フウヤさん。春到来ですか?」
「……からかう気ならお前のミレン好きな心とアイドルオタクの一面壊すぞ」
「やめてください死んでしまいます」
お面やらわたあめやらを持つハドソンに出会った。めっちゃエンジョイしてんな、おい。
「壊されたくなかったらどっか行け。しっしっ」
「ボクは虫ですか!?と、ちょうど良かった」
「え……虫扱いされたかったのか?」
「そっちじゃないです!……準決勝まで残ってたキッシュ=ハーバトルさんなんですが」
「ああ、赤毛の元気系のやつか。ソイツがどうかしたのか?」
「最後の登壇前から行方不明で……」
……違和感の正体はそれか。
「フウヤさん、何か知りません?」
「なんでオレに聞くんだよ」
「彼女、フウヤさんをすごく見てらっしゃったので……お知り合いではないんですか?」
「……ああ」
「困ったなぁ。後で今日のをDVDに焼き付けたいのに……」
「ハドソン」
「?はい」
「そのキッシュっての、見かけたらすぐにオレに連絡くれ」
「……分かりました。何かあるかもしれないんですね?」
「……あんましたくないが、怪しい奴は疑っとかなきゃな」
「もしもーし。ガース、聞こえるー?」
『聞こえてるにござるよ、キッシュ氏。如何なされたかな?』
「とりあえず例のやっておいたって報告と、決行は二日後がベストだよーってお知らせ」
『二日後、と。分かったにござるよ。キッシュ氏はすぐに戻られるので?』
「んー、もうちょい観察。面白そうな子がいたからさー」
『キッシュ氏の興味を引くとは……南無』
「ちょっとそれどういう意味ー?」
『キッシュ氏が興味をそそられた人物で、今現在生存してる人物はいないにござるからなー』
「……ふふっ」
『あ、やぶ蛇だったにござる』
「それじゃね、ガース」
通信機が切れる。眼を伏せた彼女は小さく呟く。
「フウヤ……地球からの転生者、か」




