レッツ、コンテスト!
「は~るばる来たぜっ、ディブトーニ!」
フウヤです。最近なにやらシリアルが這い寄る気配がしてるんで、あえてのテンション高めです。旅の途中から。オラ、久々のディブトーニにワクワクすっぞ!
「へー、ここがディブトーニ。……フウヤお兄ちゃん達の話だと、まだ活気は取り戻せてないって聞いてたけど」
「なんか、元気だな。いや、元気がいいのはいいことなんだが」
「元気があれば、なんでもできる!」
「……フウヤ。そろそろテンション戻さないと熱めのお湯かけるけど?」
「このテンション、生半可なことでは収まら……あーちゃちゃちゃ!」
リアクション芸人よろしく派手に転げ回ってると、背後から良からぬ気配……。
「素直に聞いてくれて嬉しいわ」
「アカンで工藤……アイツ、ホモ・ゴーレムで脅しよったで」
「誰が工藤だ。……なんかビラ配ってんな」
レンドの見る方向で、小さな少年がビラを配ってる。
「私、取ってくるよー」
タタタ、と走っていくアキハねぇ。……仕草はパーフェクトな幼女なのに、幼女なのに……!
戻ってきたアキハねぇがみんなにビラを見せ、こう言う。
「なんか、お祭りやるみたいだよ!」
「国を盛り上げるためか。まあ悪くは……」
とある文言を見て固まる。それはレンドも同様だった。
“美女・美少女コンテスト!他国よりの刺客も襲来する熾烈な争い!美に自信のある者、参られよ!担当企画者、ハドソン”
……なにしてんだ、アイツ。しかもこの他国からの刺客って、もしかしなくても……。
「レンド、これ……」
「……ハドソンって奴、ぶん殴ろう」
あ、火が点いた。
「美女・美少女コンテスト……面白そう!出よ、ミレンちゃん!」
「わっ、私ですか?いいですよ、自信ないですし……!」
「そうだぞ、アキハねぇー。こんな暴力だけが取り柄の年増参加させてどうするよ。皆にその残虐性と腐女子を広めるだけオイバカやめろそこ脱がすんじゃアッーー!!」
ホモ・ゴーレムがオレを襲う!どうなるのオレ、どうなんのー!?……続く。
「……アイツにあんな事言われたら出てやろうじゃない!って一瞬思ったけど……」
「出ようよ、ミレンちゃん!」
「でも私、可愛くないし……」
「大丈夫だ。ミレンちゃん。キミは可愛いよ。自信持って」
「……。レンドって、そういうこと他の子にも言うの?」
「…………まあ、可愛かったら」
「…………」
「レンドくん、さいてー」
「いやっ、女の子褒めるのは男として、なんていうか責務というかーー」
「女の子褒めるのは義務だ。が、ミレンは女の子ではない」
「あ、フウヤくん。無事だった」
「危なかったけどな!見てないで助けてくれよ、アキハねぇ!」
「楽しそうだからいいかなって」
「貞操の危機だったけどな!そして今、再度訪れてるけどな!」
気づけばホモ・ゴーレムが再構築されていた。……勘弁してくれよ、年増ぁ……!
「……女の子じゃない、ね。ふふ……なら証明してあげるわ、フウヤ。この私こそが、この国の、世界一の美少女ってことをね!」
「……ウンソウダネ、ガンバッテ」
下手なこと言えない。ゴーレムさんったらスタンバってるんだもの。どこぞのヅラじゃないさんより準備いいんだもの。
「行きましょ、アキハさん!受付会場に!」
「うんっ。目指せ、優勝ー!」
二人が駆けてく。受付会場……王宮前入口か。
「とりあえず、隻眼のおっさんに書状届けに行くわ。レンドはどうする?」
「ハドソンとか言うやつを懲らしめたいが、そっちに着いてくよ。懲らしめるのはその後だ……!」
「オッケー。……幼女成分補給は後にすっか」
とっとこー、走るよー。……いや、走らないけど。
「……本当に活気に溢れてるな」
「圧政もないし、政治的理由で捕まってた人も解放した。……これからさ、この国は」
気になる幼女を見つけたが、父親らしき奴が抱っこしていた。ガッ◯ム。…………。
「……美人も多いな」
「ナンパしたらミレンにチクるからな」
「同士だろフウヤ!そこは流せよ!」
「同士だろうが、リア充たるお前は敵だ。それを忘れるな」
「……真の同士だと思ってたのに」
「これ届けたらそれ以外にお前を縛るものはない。それから自由にしたらいいさ」
「……」
「なんだよ、その目は」
「いや……なーんで男相手にツンデレしてんだろうなあと」
「潰すぞ?」
「今、どこを見た!?」
くだらない掛け合いをしながら、混雑してる王宮の入口を通り過ぎる。これ全員、コンテスト参加希望者か?……半数ほど場違いな奴がいるな。鏡見てこいって言いたくなる。
「……数人場違いな奴がいるな。鏡見てこいって言いたくなる」
「声に出してんぞ」
「おっとうっかり」
「いやお前、今のワザとだろ」
「フウヤ殿、戻られたか!……息災で何より!!」
会議室に隻眼のおっさんがいるとのことだったんで向かうと、隻眼のおっさんから熱い抱擁。………あああああ!!
「ど、どうしたフウヤ殿!顔が真っ青に!」
「多分、今のアンタの行動が原因だと思いますよ……」
「キミは……フウヤ殿と一緒だったか」
「ミレンちゃんも一緒ですよ。あと一人、強力な助っ人も」
「強力な助っ人……?」
吐き気をどうにか飲み込んで、隻眼のおっさんから離れる。そして懐から紙を取り出して渡した。
「……戦争中止の旨と、謝罪文。それに兵解放の嘆願書だ。レーテリア皇帝、レーテリオンから預かってきた」
「……本当に、成し遂げてくれたのだな……!!フウヤ殿、かたじけない……!」
またハグされそうな気配を感じ取ったんで、全力で逃げた。
「……言葉だけでいい。なんかしてもらうためにやった訳じゃねぇからな。……兵解放の件は構わないか?」
「会議はするが……恐らく大丈夫だろう。皆、毒牙は抜かれてる」
「なるべく早くその会議頼んでいいか?で、決まったら兵全員、レーテリアに向かわせてほしい」
「それは、また……何か理由でも?」
「……この国とレーテリア、それぞれ狙われる可能性がある。……軍事国家、クラットスに」
「っ!」
「クラットス、ですと……?」
「恐らくその国がこの戦争を企んだ張本人だ。レーテリアの所は、オレとミレンで協力して対策はしてきたが……兵士は多い方がいい。こっちはオレとミレン、レールにレンド、そして隻眼のおっさんもいる。……襲われる保証があるわけじゃないが」
「いや、危険があるならばすぐに手配しよう。ご助言感謝する、フウヤ殿」
「頼んだ、おっさん」
慌ただしく駆けていく隻眼のおっさん。……つくづく良い人と繋がり持てたよ、オレ。
二人だけになる会議室で、レンドが問いかけた。
「……襲われる危険があるのに、祭の開催、止めなくていーのかよ」
「いーんだよ。止めるなんて野暮さ。……それに、ようやく掴んだ平穏、ようやく手にした自由を、享受してほしい。……だから皆に危険なんて感じさせない。必ず守り抜いてみせる」
「……そっか」
「それに~、幼女達のすばらしきコンテストを止めるなんて、拙者出来ぬにござるよ~デュフフ。ナンバーワン幼女、この眼で見極めねばなるまいて」
「キャラを統一させろ。んで、その拙者口調使うな。嫌な奴思い出すんだ」
「そうでありんすか?」
「だからキャラを……まあいいや、もう」
「さて……とりあえずハドソン探すか。審査員登録とかってできんのかな?」
「いやお前審査する気満々かよ!……けどまあ、ハドソン探しには賛成だ。どういう了見で人の嫁(候補)を勝手にエントリーさせたのか聞かなくちゃあなぁ……」
ハドソーン、逃げろー。
「あ、フウヤさん。お久しぶりでっ!?」
探索してると、あっさりハドソンが見つかった。そしてレンドに首を締められる。
「ぎっ、ギブギブ……!!」
「やめてやれー、レンド。ハドソンに戦闘能力ないから」
「ちっ」
舌打ちして離すレンド。荒んでんなぁ。
「い、一体何事ですか?」
「おう。なら解説してやる。……てめぇ、ウチの嫁(候補)達に何させてんだ、おぉ?」
「……あ」
思い出した、という表情になり、冷や汗を流し始めるハドソン。言い訳のような雰囲気で弁明を始める。
「いやあのー……皆さん、とても美しいじゃないですか?」
「当たり前だ。俺の嫁(候補)だからな」
……いい加減ツッコむか?いや、もう少し我慢だ。
「で、ボクの発案でこの企画が始動したんですが……参加者が多い方が盛り上がるじゃないですか?」
「それには同意する。せっかくの祭だからな」
「それで、皆さんに声をおかけして……レンドさんのお付きの方々にもお誘いしまして。一度断られたんですが、とある事を提案させて頂いたら引き受けてくださいまして」
「とある事?」
「コレじゃね?小っちゃく書いてるが」
コンテストの要項にある賞品欄に小っちゃく、「気になる異性と二日間二人っきりの同棲生活!」という文字が。
「…………」
レンドが再びガッと掴まえる。今度は止めない。自業自得だ。
「おい、コレはアレだよな?要は俺をエサにしやがったな?」
「その件については深く謝罪を……!」
「そうだな。深い謝罪と撤回をしてもらおうか」
「もう大々的に宣伝してるので撤回は無理です……!」
「なら代償としてその命貰い受けよう。フウヤ、ここらで一番高い所ってどこだ?」
「はいストーップ。筋肉バス◯ーの体勢を解け。そして諦めろ」
「諦めろって何をだ!?同棲生活なんて認めねぇからな!」
「いいだろ。これを機にきちんと嫁を見つけろよ」
「……それはイヤだ」
「ん?」
「同棲は……きちんと互いに一生を添い遂げたいと思えるようになってからって決めてるから……先に同棲生活なんてイヤだ」
「お前、意外とピュアなのな」
「悪いか」
「いや、別に。……ならその気持ちを正直に彼女らに打ち明けたらどうだ?本当にお前の事が好きなら、その考え、受け入れてくれるだろ」
「……。ちょっと行ってくる!」
慌てて駆け出していくレンド。どこにいるか分かるのか?
「……すみません。勝手なマネをして」
「そうだな。盛り上げたかった気持ちは分かるが、反省しろよ?」
「はい……」
「……ところでハドソン」
「なんですか?」
「このコンテスト、幼女は出るか?」
「フウヤさんの好きな年齢の方なら何人か参加しますよ。ハルさんとか」
「イィエェス!!……で、オレ審査員なりたいんだけど、なんとかならない?」
「むしろお願いしようと持ってました。年上の方に対してはともかく、フウヤさんの好みの年齢の方の審査基準は特A級ですから」
「褒めるな褒めるな。ではありがたくならせて頂きたく候。……それと別件で一件、頼みたいことがあるんだが」
「なんです?」
一枚の紙を渡す。別に極秘って訳じゃないが、万一にでも本人に聞かれたくないからだ。
「この人物についての経歴を調べてほしいんだ」
「いいですけど……何かあるんですか、この人?」
「まあ、な」
「了解です。まあ祭とかありますけど、やっておきます!」
バタバタと駆け出していくハドソン。……さて、と。
「ハルちゃんはどーこかな?」
取り急ぎ幼女成分を補給せねば。
「あ、フウヤさーん」
願えばなんだって叶うんだ!ハルちゃんがオレに手を振ってくれてる。
「フウヤさん……寂しかったです」
目を潤ますハルちゃん。ふふ、愛い奴だ。
「ゴメンな。……これからはずっと一緒だから」
「……はいっ」
リンゴーンリンゴーン……。
「うへへ……ハルちゃーん」
「大丈夫ですか、気味の悪い顔になってますよ」
「…………」
ああ、現実とはなんと無情か。ハルちゃんとの再会を妄想している中、出会したのはレンドの嫁候補、マナだった。
「大丈夫じゃない、重症だ。近寄ると感染するから離れてろ」
「大丈夫でないならなおのこと監視せねばなりません。その……心配ですし」
なんでこの年増、こんなにチョロインなの?一回助けただけだよ、オレ?しかもマッチポンプだよ?相手が年上にまっっったく興味ないオレだからいいものの、他の男ならぐへへってされてんぞ。
「……お前、悪い虫に引っ掛からんよう気を付けろよ」
「?意味は分かりませんが……今のは私を心配してくださったのですか……?」
「我ながら失言だった。じゃな」
年増と長話をするつもりなど毛頭ないので離れようとすると、マナがオレの裾を小さく、強く掴んでか細い声で言った。
「かっ、帰ってきたら対応を考えてくださると言いました……。ならばその、邪険にするのを止めて頂きたいのです……!」
「…………。はぁ。分かった。少し移動するが着いてくるなら好きにしろ」
「っ!はい!」
なんだろう、我ながら自分の首を絞めてる気がする。主にアキハねぇに対して。
「あ、フウヤさん」
「フウヤくーん!エントリーしてきた……よ……その子は?」
ようやく幼女を見つけたと思ったらミレンとアキハねぇも一緒だった。
最初笑顔で接してきたアキハねぇが表情を曇らせた後、笑顔に。曇りのち晴れ。ただし目は笑ってない。
視線の先はオレのすぐ隣にいるマナ。……嵐が来る。特大級の、な。
「フウヤ様、あのお二人は……?」
「フウヤさま、ね……」
……オラ、修羅場の予感がすっぞ!!
対峙する二人がなんかオーラを放ってる。その異様な雰囲気に気づいた年増が声をかける。
「なにこれ、どういう状況?てかフウヤ、アンタが年上の女の人連れてるなんて珍しいわね」
「……勝手に着いてきただけだ。コイツの名はマナ。レンドの嫁候補だ」
「……は?そんな人がなんでアンタなんかに着いてきてんの?」
「アンタなんかって……いやまあ、正しいけど。なんてゆーかその……成り行き?」
「へー。レンドくんのお嫁さん候補?ならレンドくんに着いてったらどうかな?」
おぉーっと、アキハ選手、マナに先制攻撃だぁっ!(超他人事)
「それは私が決めることです。それよりも貴女は?やけにちみっこいですけど、只者じゃない気配がしますわ」
「私はアキハ。フウヤくんの妹であり、姉だよ!」
ドヤァ……と言いきるアキハねぇに、マナが可哀想なものを見る目で見て、オレに話しかける。
「フウヤ様、このちみっこ頭を打ったのでは?支離滅裂な事を仰られてますよ」
「支離滅裂だが合ってんだ。合っててほしくないが。……事情は触れないでくれ。ややこしくなる」
「……?よく分かりませんが……フウヤ様の姉妹でしたら、何故そのように私を睨むのですか?」
「それはこっちのセリフだよ。レンドくんのお嫁さん候補が、どうして私を睨んでるのかな?」
「さあ、何故でしょうね?」
「ふふふ」
「ふふふ……」
なにコレ怖い。……こういう時は。
「……」
ガシッ。
「逃げるんじゃないわよ。後始末していきなさい」
マイケルばりのムーンウォークで華麗に立ち去ろうとしたが捕まった。おのれ年増。
「後始末ってどうすりゃいいんだよ?超バチバチいってんぞ?修羅場だぞ、ここ」
「空気読まない行動すんのはアンタの得意分野でしょ?なんでもいいからやりなさいよ」
「なにその悲しい得意分野。ってかお前がやれば」
「やれ」
「はい」
やだこの人ってばもー。すぐホモ・ゴーレム出すんだもの。やだもー。
「二人ともー、注目ー」
仕方ない。秘められし儀を執り行うか。
「…………」
二人が注目する。息を整える。足が震えるが構うか。
両手を肩幅より少し多めに開く。腕はしなやかに、外側に向かって。
右足を曲げる。左足の膝に右足の裏がくっつくように。
「…………命!」
「もしかしてアナタ、フウヤくんの事が好きなの?」
「……そっ、それはまだ……分からないと言いますか……アナタはどうなんですの!?」
「私は好きだよ、フウヤくんのこと!」
完全に滑りましたとさまる。
それから二日経った。
国の守りを固めるために色々罠張ったり、ミレンにゴーレム配置してもらったり、ハルちゃんとイチャイチャしたり、ミレンのゴーレムに貞操を奪われかけたり、マナとアキハねぇの仲裁に体張ったり……神経をやたらと磨耗したが、遂にこの日を迎えた。
『えー、それでは本日より……ディブトーニ祭を開催する!』
うぉー、と歓声が上がる。隻眼のおっさんのスピーチに、この町の住民はもちろん、遠い町から来た人々が盛り上がる。
『これまで多くの心労、苦難をさせてしまったこと……深く、深く悔いている。……その分、この祭を楽しんでもらいたい。そう心より願っている』
再び沸く聴衆。いつもはガランとしている宮殿広場も今日ばかりは賑やかだ。
『プログラムは各所に張られているポスター並びに配布したチラシに記載している。イベント毎に会場は異なるので、留意してほしい。以上で挨拶を終えたいと思う』
さーて、どこ回っていこうか。
「フウヤさん!」
「よう、ハドソン。準備はバッチリか?」
「もう完璧ですよっ。皆さんの協力のお陰です!レンドさんのお嫁さん候補の方々には特に尽力していただいて……と、そうだそうだ。フウヤさん、頼まれてたものです」
「さすがだな。お前のその情報収集能力、なんなん?」
「秘密ですー。じゃ、ボクはこれで。挨拶に行かなきゃ」
バタバタと駆けていくハドソンを少し視界に入れながら、資料に軽く目を通す。……なるほど、な。
「なに見てるんです、フウヤさん?」
突如、癒しの幼女が舞い降りた。ありがたきかなありがたきかな。
「……見たいのかい、ハルちゃん?」
「え、なんですかその変な顔。なにかやらしい物ですか?」
「もー。ハルちゃんが見たいって言うなら仕方ないなぁ。後悔しないでよ?」
「ごめんなさいいいです。見ないです見たくないです!まだあたしには早いですっ!」
「そうかー残念だ。……ハルちゃん、ちょっと聞いていい?」
「スリーサイズなら教えませんよ」
「知ってるからだいじょう……おっと」
「知ってるってなんでですか!?」
「HAHA。……ハルちゃんの両親って、どんな人だった?」
「両親ですか?……母は優しかったです。甘える私にいつも頭を撫でてくれて、笑ってくれて。……父はとても寡黙な人でした。でもとても暖かくて優しくて、家族を大事にしてくれる、尊敬できる父でした。……二人とも、十年前にいなくなってしまいましたけど」
「……理由ってなんだったの?」
「分かりません。幼い頃の話ですから。父や母の顔も朧げなんです。……もう一度会っても、多分分からないと思います」
「…………」
「ごめんなさい。重くなってしまって。……でも、どうしてこんなことを?」
口が開きかけた。――それをグッと堪えた。
「いや、そんな両親に代われるような人になるにはどうしたらいいのか、っていう思案をね」
「……ぷっ。フウヤさんには無理ですよ」
「いやいや。オレが寡黙で暖かくて優しい男になれば或いは」
「ぷっあっはははは!フウヤさんは寡黙になんてなれませんよ~!」
「えー、そうー?」
「そうですよー。ミレンさんが聞いてたら呆れてますよ、絶対」
「……だね」
『遂に……この時がやって参りました。本日のメインイベント、美女・美少女コンテストの開催です!!』
「うぉぉー!!」
野太い歓声があがる。元気だねぇ、野郎共。
「優勝者にはこちら!ボクのなけなしの預金から一部の賞金と……気になる異性との二日間の同棲生活!を予定していたんですが、苦情が殺到したため、こちら、ウェディングドレスを贈呈致します!」
舞台裏で女性陣の歓声があがる。……さて、幼女はどのくらい出るのか。それだけが懸念事項だ。
『そらでは本日の審査員をご紹介致します。年下の女の子なら全てお任せ!年齢、スリーサイズ、ピタリと当てて見せましょう!フウヤさんです!』
「やーやーやー。どーもどーも」
『そして、年上の美女は全て嫁!甘いマスクでハーレムを築く、レンド=ドーハさんです!』
「……ども」
「お前も審査員として参加するのか」
「美女を審査できる機会なんてなかなかないからな。それはそれとして、敵を増やすような紹介しやがったアイツには後でヤキ入れる」
なーんかソリ合わないよな。ハドソンとレンド。
『続いては女性と一夜を共にした数ならこの国一番と豪語するご老人!ゲシュタ=イルトさんです!』
「ふぉっふぉっふぉっ。厳しく審査するとするかのう」
『お次は野菜を売りながら考えるは女性のことばかり。今回奥さん参加してたらマズいなー……と言いながら審査員に名乗りをあげてくださいました、ナハル=ゴーキュさんです!』
「いつもいつもどうもご贔屓に!あ、ところでこの大根どうです?曲線なんてもう……そそるでしょう?」
……レベル高いなー。
『そして最後はボク!老若女の方を見る目はこの国の軍で随一と自負しております、ハドソン=シーフです!……今回、遺憾ながら時間の都合もあり、書類選考せざるを得なかったこと、大変申しわけないです。……ですが、第一回コンテストに相応しい方が集まったと思っています!前置きもこの辺りにして、そろそろいきましょうか!Aブロック、エントリーNo.1、マナ=トラシフルさんです!』
「うぉぉ……!!」
高まっていた野次馬の興奮が収まる。出てきたのは黒を貴重にゆったりめの服を着たマナ。
『マナさん。今回、コンテストに参加して頂いた理由をお聞かせ願えますか?』
「……無理やり、でしたわ。最初、あなたに乗せられて。……でも、今は違います」
会場全体を見つめ、マナがはっきりと告げる。
「私は……見てもらうために来ましたわ。あの方に。……優勝できるか分かりませんが、応援頂けたら。そう思っております」
『はい。ありがとうございました!……いやー、黒髪がとっても映える素晴らしい方でした!クールな佇まいがもう高ポイントです』
「少し触っただけで折れてしまいそうな華奢な身体……。安易にもやしと喩えるのも憚られますな。もやしにはこの優雅さは出せません」
「むー……安産型ではないが、器量のいい嫁になりそうじゃ」
「じいさん。セクハラだぞ、それ」
「…………」
「魅入ってたな、レンド」
「いやだってこれおまっ……美しいだろ」
「……まあ、な」
トップバッターは大概にして不利だ。よくも悪くも今後の基準になり、後の方が印象が強くなる。……が。
「これは大盤狂わせがない限りは決まりだな。ま、幼女が出なければだが」
マナがステージ裏からこちらを見る。そっちを見やると、すぐに視線を外した。
『――ということでAブロックの5名が登場してくれました。審査員の皆さんは準決勝に進むお一人を選んでください』
ステージにAブロック参加者が終結する。あの後、レンドの嫁候補数人出たりしたが、幼女は出なかった。……なら決まりだな。
『では、結果発表!…………おぉっと、審査員の全員がマナさんだ!準決勝進出はマナ=トラシフルさんです!』
「あ、ありがとうございますわっ!!」
挨拶を短く済ませ、ステージ裏に再度引っ込むマナ。
『では続いてBブロック。今回の最年少の一人、友人に連れられ参加した、バーシェ=カリットさんです!』
「……!」
幼女カウンター300……500……ま、まだまだ上がる……!ハルちゃん以外に、こんな逸材がいたとは……!
ボブショートの髪型で、髪先が内側にくるんと丸まっている。100点。大勢の人に見られている緊張からかすごくモジモジしている。300点。幼いから、と安易に足を出さずにロングスカート。200点。背丈が恐らくハルちゃんよりも3cm低い。400点。年齢はハルちゃんと同じ14歳のドストライクゾーン。で、保護欲を著しく駆り立てる、いわゆる守ってあげたいオーラが全身から迸っている。1万点。
「はぁ……はぁ……」
「フウヤ、その手はなんだ?」
「あ~いしてるのさ~いん~」
「…………」
「あっ!なにしやがるレンド!」
「犠牲者を出さないための処置だ」
「後ろ手に縄とは卑怯な!」
『えー、審査員が酷く暴れていますが……気になさらないでくださいね、カリットさん』
「あ、は、はい……」
ぐぬぅぉぉ!!ハドソンのやつ、肩に、あのか弱き少女のお肩に、手を!!
「ぐぬぅぉぉ!!」
『カリットさん!今すぐ裏に行きましょう!ここは危険です!』
「え……?は、はい……」
「あぁ待ってカリットちゃん!カリットちゃーーん!!」
『……えー、審査員が暴れてしまい申し訳ありません。残りの紹介はステージ裏からさせて頂きます。というわけで、よろしくお願いします。カリットさん』
『は、はい……。よろしくお願いします』
『カリットさんは、何故このコンテストに?』
『友達に一緒に出ようって言われて……自信はないですけど、応援して頂けたら、なんて思います……』
『はい、どうもありがとうございます。カリットさんでした!』
「ふ……ぬ……うぉぉ……!」
「落ち着け、フウヤ!これ以上暴れるとカリットちゃんはおろか、残りの女の子達も拝めなくなるぞ!」
「ぐ……う……ぐう……」
「よーしよし。どうどう。どうどう」
「苦労しとりますなぁ。若いの」
「幼女にそこまで興奮するなぁ、どうかと思うぜ。兄ちゃん」
「まだまだですのぉ。八百屋の。あの年頃なら対象内ですぞ。ワシには分かる」
「そんなもんですかい?」
『審査員の皆様、宥めて頂きありがとうございます!フウヤさん、大丈夫ですか?』
「……大丈夫。悪かった。冷静を欠いた」
『冷静になられたようでなによりです。では次の方に参りましょう!元気いっぱいの褐色少女、キッシュ=ハーバトルさんです!』
「やっほー!!よろしくね!」
紹介され出てきたのは赤毛の活発そうな少女。……同い年か。けどロリ顔じゃないし、好みではないな。
「……ん?」
なんか女がこっちににこやかに手を振ってるが……知り合いでもいんのか?
服装は軽装そのもの。活発さをアピールしたいのか、露出がどの出場者よりも高い。タンクトップにハーフパンツ。……胸はミレンといい勝負か?意外とあんのな。どーでもいいが。
『キッシュさん。今回参加された理由をお伺いしてもいいでしょうか?』
「んー。面白そうだったから!それに、会いたい人もいたし」
チラッと審査員側を見る女、キッシュ。……オレを見てる?まさかな。オレにあんな知り合いはいない。
「なかなかのスタイルをしていますの」
「野菜で喩えんのが難しいな……収穫前の瑞々しいレタス、か?いやなんか違うな……」
「ちょっと、いいなと思った。年上じゃないが」
「ふーん」
「限りなく興味なさそうだな。ってか意外な。お前、同い年なら範囲内だろ?」
「まあ、なんつーか惹かれない。ロリ顔でもないし。そもそもオレ、活発系はそんなに好みじゃないんだよな。どっちかってーと大人しめ系がいい」
「まだまだ少年はこちらの世界に到達できそうにありませんな。ですな、八百屋の」
「いや、俺もアンタと同じ境地に至れてるか微妙なんすが。……けどまあ、活発系の良さが分からないっつーのはまだまだな気はしますね」
「そっちの少年はどうかの?活発系少女はアリかナシか」
「活発系は最高です。純真さと溌剌さはこちらに元気を与えてくれます」
「ほっほっほ。こっちは分かっとりますのぉ」
年齢重ねるとそうなるんかね。ま、オレはこの意見、生涯曲がらないと思うが。
その後、レンドの嫁候補が二人ほど出たが、オレの中での準決勝は決まりだな。
『さて、それではBブロックの結果発表です!……カリットちゃん1票、アーシェさん1票、キッシュさん3票。準決勝はキッシュ=ハーバトルさんです!』
解せぬ。……ま、いいか。変に注目集めて会いづらくなったら事だ。ハドソンの資料から個人情報を入手するとしよう。ぐふふ……。
「……なんか企んでんな。悪い顔してんぞ」
「いやいや、何も企んでませんよ。私に企ませたら大したもんです」
「もはや誰だよ」
『さぁさぁ続いて行きますよー!』




