フウヤの真面目な妄想話
レーテリアに来て一週間ほどが経った。
ミレンが捕まったり帰ってきたり、アキハねぇが登場したり、謎の黒幕だったりと色々あったけど平和です。……今は、な。
「……分かんねぇことが多いな」
王宮中央にある広場。ドラゴンと死闘を繰り広げた場所で寝転がり、考えに耽る。
クラットス。超巨大軍事国家。武器輸出による利益で潤うその国が、この二国を争わせた理由は金……。
「……だけなのか?」
そのためにサウルちゃん達の事故を偽装した?いや……、
「なら、助ける必要はなかったはずだ。生きてて良いことなんて一つもないはず」
生きてないとマズい理由があった?なら何故サウルちゃんはディブトーニに居たんだ?一歩間違えれば死んでたかもしれない戦争地帯だったのに。
「それにアレも不可解だーー」
それは、皇帝との面談の時の話。
「皇帝さん。一つ聞いていいかな?」
泣き伏せる皇帝に少し真剣な顔をして、アキハねぇは突拍子もない事を聞いた。
「サウルちゃんって、今年いくつなの?」
愚問だった。そもそも幼女の年齢ならオレに聞けば一発なのに。
「な、何故そのようなことを……?」
少し警戒色を示しながら尋ね返す皇帝。どうみてもトラウマが残ってますね本当にありがとうございます。
「いいから。で、何歳?」
「……11歳だが」
……WHAT?
「ち、父上?なにを言ってるのだ?ボクは9歳だぞ?」
「……サウダールこそ、何を言ってるのだ?確かにお前は11歳だ。記憶を違えるはずがない」
「……やっぱり、ね。ミレンちゃん」
「は、はい?」
「魔法を解除する魔法って唱えられる?」
「唱えられますけど……何か魔法がかかってるなら、フウヤに頼んだ方が」
「フウヤくんには出来ないことなの。お願い、サウルちゃんにかけてみて」
「わ、分かりました。……アレスタ・フォートレス、解呪」
ミレンがサウルちゃんに魔法をかける。……なんだ何も変わってな……。
「え……」
なんということでしょう(ビフォーアフ◯ー感)。サウルちゃんの外見が変わっていくではありませんか。あ、補足しとくと変わってません。私の幼女スカウターが変化してるだけです。
「あ……あれ……?ボクは……?」
「サウルちゃん。今、何歳?」
「ぼ、ボクは11……でもさっきまで、あれ?」
困惑する、性格も可愛さも、そして年齢もドストライクになったサウルちゃん。……おお、静まれ我が身体。禁断症状が出かけているが我慢するんだ。
「フウヤくん。サウルちゃん、いくつに見える?」
「紛れもなく11ですハアハア。抱き締めていいですか?」
「お姉ちゃんの愛と憎しみのこもった一撃を受けるならいいよ」
「…………」
セイザー。よし、我に返れた。確認って大事だねっ。
「サウルちゃん。誰かに魔法をかけられたような覚えはある?」
「そんな覚えはないが……」
「……さっき話に出てた誰かにかけられたんだと思う。自分と周りの人への認識阻害魔法。多分、血縁者には効かないけど、それ以外に対しては高度な」
「な、なんのためにそんな……?」
「……それは分からない。でも一つだけ言えるなら」
シリアスな表情を和らげ、般若の顔になってオレを見るアキハねぇ。目は笑っていない。
「フウヤくんの範囲に入っちゃったってことかな……。手、出さないよね?フウヤくん?」
「サーイエッサー」
「あの時はギャグで流したが」
理由が分からない。サウルちゃんの年齢をわざわざ偽る理由はなんだ?
「どこ行ったのかと思ったら。こんなとこで何してんのよ」
「ミレン。やっと下着が年相応になってきばぎゃあ!!」
見えたので感想を述べたら何の躊躇いもなく靴で顔面踏まれた。ミレンの体重があと10キロ重かったら骨にヒビが入っていたに違いない。
「次見たら命はないわ。覚えときなさい」
「見たくて見たんじゃない……見せてきたのお前」
「そんなに身ぐるみ剥いでアキハさんに渡されたいならそう言えばいいのに。素直じゃない弟ね」
「すんませんした」
それされたらマジで男として終わりを迎える。やだ、オレ童貞の捨て所決めてるんだもの!
「まったく……。で、なーにらしくない顔して考えこんでたのよ?」
「……まあ色々、な」
「ふーん。ま、ムリには聞かないわ」
隣に座り込むミレン。……あ、そういや。
「ミレン。前にここでドラゴンと戦い終えた後、何か言いかけなかったか?」
「そうだっけ?」
「やれやれ。もう忘れてるとは。頭はニワトリ」
言いきる前に大きいお手手がお空にこんにちはして頭に振り下ろされた。ハエタタキかな?あれ、とするとオレ、ハエ?
「……思い出したわ。ほら、私捕まってたじゃない?」
「ああ」
「……そこであの人に会ったわ。……アンタがディブトーニで捕まってたときに、一緒にいたお爺さんに」
「……は?」
「いくらなんでもおかしいと思ったわよ。だから聞いたの。なんでここに?って。そしたらその人、ニヤッて笑って、神の導きって」
神の導き……。
「詰め寄ろうとした時に、私を捕まえたっていうお婆ちゃんが来て、いきなり釈放してくれたのよ。……後で聞いたらレビッチェルさんが手を回してくれたらしいんだけど。……その話を聞いて終わって、振り返った時にはもう、あのお爺さんはいなかったわ」
「…………」
「……後になって、看守の人や他の囚人にも聞いて回ったけど、そんな人知らないって。……なんか気味が悪いわ。行く先々に現れる得体の知れない何かみたいで」
「……それなんだが」
「うん?」
「……あくまでオレの考えに過ぎなくて根拠なんて欠片もないが……聞くか?そのお爺さんが何者か」
「え、知ってるの!?」
「根拠もなにもないから、当てずっぽうもいいところだ。……それでも聞くか?」
「……うん」
よっぽど気味が悪かったらしく、頷くミレン。
あの老人、オレも気になってた。初めて会った翌日にはオレもディブトーニで聞いて回ったが、その存在を認識してた人は一人もいなかった。隻眼のおっさんも、レールも。誰一人。
ってことは話は簡単だ。あの老人はオレにしか見えない。……まあ、ミレンも見えてるが、それはそれ。なんかあんだろ。
で、亡霊かなんかの類いかと言われれば答えはノーだ。実体は確かにあったのだから。
でも、この世の人物でもない。不可思議な方法で消えているのだから。……ま、一応他の可能性もあるんだが、その可能性まで考えにいれたら考えうる可能性は無限に広がる。だから的を絞って、一番あり得ない方で考えを絞った。この世の人物ではなく、亡霊でもない存在の方向に。……となると、答えは一つ。突拍子もない答えに辿り着く。
これらの話をミレンに説明し、オレの答えを話す。暫く真面目な顔つきで聞いていたミレンだったが、時間が経つにつれて頬は緩み、
「ぷっ……くくっ……!」
話し終えた時には溢れ出しそうな笑いを堪えていた。……コイツ。
「おい、これでもマジメに話してるんだが?」
「ご、ごめっぷぷっ……あ、アンタからそんな突拍子もない話出るなんて思わなくて……!」
「……今の話、他の奴にはすんなよ」
「しないわよぉ。絶対変な奴と思われるじゃない……!」
「寝る。不貞寝する。起こすな」
「ご、ごめんごめん。悪かったってばぁふふっ……!」
二度とこんな話はするまい。そう決めた。




