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彼女について語らねばならない時が来た

「颯谷くん、そこを左に鋭く!!」


オレの姉、秋葉はオレに優しかった。有り体に言うと甘々。ブラコン。


だけど、武術の練習の時だけは厳しかった。祖父から受け継いだ刀術、マーシャルアーツの基礎。その全てを一切の妥協なくオレに叩き込んだ。


「あ、秋葉ねぇ……!こんなの、何の役に立つんだよ……!」


「いつか役に立つんだよ、いつかね」


「なにその曖昧模糊としたの……!」


「……きっと、もう少ししたら分かるから。さっ、練習練習」


「……そのうち引きこもってやる」


「そんなこと言わないでよ、颯谷くん。帰ったらお姉ちゃんのこと、好きにしてイイから」


「んじゃ放置するわ」


「放置プレイが好きなの、颯谷くん!?……ううん。颯谷くんがどんな性癖でも、お姉ちゃん受け入れる!!」


……訂正。ブラコンなんて生ぬるかった。どうやら秋葉ねぇはオレのことが好きらしい。家族としてのライクではなく、恋人としてのラブの意味で。


文武両道、才色兼備、性格も優しく人気者の姉がなんでオレみたいな準引きこもりを好きになったのかは知らん。が、オレにとって秋葉ねぇは姉であり、それ以上でもそれ以下でもない。この事は再三再四伝えているのだが。


「あれ?もう放置プレイ始まってるの?……こういう時って、顔を赤らめて恥ずかしがればいいのっ?それともツンってしてた方がいいのっ?」


「……ああもう」


このように前向きかつ変態的な言動で受け止めるため、話が進まない。悩みの種である。


そんな姉が常に寄り添ってるせいか、女子はおろか男子すら近づくことはなく、友人と呼べる者はいなかった。一人騒がしいのはいたが。


まあ、別段構わなかった。こんな姉がいる程度で近づかないやつは遅かれ早かれ離れていただろうから。さ、寂しくなんかないんだからねっ。……オエッ。


話は変わり、あの日の事になる。そう、俗に言う異世界転生をすることになった、あの日の事だ。


その日、オレは姉の付き添いで街に買い物に出ていた。デートとかぬかしてたが、気にしない事にして。


「フウヤくん、これなんてどうかなっ?」


「……ミニスカ過ぎね?目のやり場に困ると思うぞ、世の男どもは」


「イケない気持ちになっちゃったりする?」


「しません。姉は攻略対象には含まないので」


「妹は?」


「……義妹なら」


「あーあ。フウヤくんの義妹になりたかったな。そしたらイケないこと沢山出来たのに」


そんなことしません、と返しながら店を出た時だった。ーー車道に飛び出す子供を見たのは。


「っ!」


ただひたすらに走る。秋葉ねぇの制止する声を振り切って。


車の往来をくぐり抜け、子供を抱き抱えた。後はそのまま歩道に辿り着くだけーー!


が、無情にも現実世界はそれを許容しなかった。いや、具体的にはあの痴神がやらかしたせいらしいが。


警笛音が鳴り響き、最期にオレが目にしたのは眼前に迫るトラックと、走り寄ってくる秋葉ねぇ。……オレの前世の記憶はここで途絶えている。


故に、秋葉ねぇが何故、ここにロリの姿でいるのか理解できない。いや、したくない。なのに秋葉ねぇはオレの問いかけにてへっと笑って言った後、あっけらかんとなんでもないことのように答えた。


「えーと、なんでここにいるのかって言うとね……私もフウヤくんの跡を追って死んだからだよ!」


あーあー、聞こえないー。姉がぶっ飛んだ発言してるけど聞こえなーいー。


「フウヤくんのいない世界なんて考えられないし……フウヤくんと一緒にって考えてたら意識がなくなって。気がついたら真っ白な世界にいてね。そこにいた人にフウヤくんをいかに愛してるか伝えたらフウヤくんのいる世界に連れてってくれるって言ってくれてね」


あんのくそ痴神ー!!次会ったら覚えてろー!!


「ここで待ってたら会えるって教えてくれたの。待つこと7日と13時間……ようやく、会えた。しかも、フウヤくんの好きな妹として。さあ、これで私とフウヤくんを阻むものは何もないよ!私と一緒に濃密で甘美な新生活を送ろう、二人っきりで!フウヤくんが妹にしてみたかったイケないこと、なーんでもしていいよ!むしろして!いつでもウェルカムだよ!」


獲物を見つけた猫のような眼をして、鼻息を荒くする秋葉ねぇ。


周りでは兵士達が息も絶え絶えで、サウルちゃんもオロオロしてるってのに。そんな雰囲気は感じさせてくれない。シリアスさせてくれない。


オレは視線を開かれた窓から見える空に向け、ポツリとこう呟いた。


「……異世界転生のやり直しってアリですか?」

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