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年増痴女のゲームセンスはいい

「――てな具合だ。向こうも協力してくれるっていう返事も貰ってる。さあ、行こうか」


人通りの少ない街道を進み、時折落ちてる手紙を拾っては返し、拾っては返しを繰り返して、作戦を立てきるレンド。……にしてもまさか。


「こんな作戦に協力してくれるとはなぁ……」


「元々俺もアイツも侵略なんて望んでねぇんだ。心変わりさえしてなければ、希望はあると踏んだが、賭けに勝った形だな」


「き、緊張するな……」


もう首都、ウィスリーの真ん前だ。かつては風竜がいたとかで知られてるんだとか。


「じゃ、準備すっぞ。煙吸わないようにな」


「アイアイキャプテン!」


「お前それ、流行ってんのか?」


レンドが煙玉を思い切り地面に叩きつける。いやー、備えあれば憂いなしとは言うが……よく持ってたな、レンド。


「なんだ、何事だ!?」


「……!レンド様だ!レンド様がいたぞー!!」


騒ぐ民衆。バタバタと駆ける足音が聞こえてくる。


「おい、まだかよ……?」


「そろそろっと!?」


「わっ!」


「……おえっ」


足、というか体が宙に浮いた。途端に湧き上がる吐き気。……あ、これやばいかも。


「なんだ!?」


「人が……人が宙に浮いてる!?」


「レンド様もいるぞ!」


人々が煙の上空で姿を現したオレらを見て騒いでる。が、浮くだけでは終わらずそのまま自転車並の速度で移動が始まった。


「……レンド」


「おい、どした?気分悪そうだな」


「……すまん、限界」


オロロロと未消化の食べ物を口からリリース。良い子は真似しちゃダメだぞ☆


「おい、なんかだしてんぞ!」


「毒液かもしれない!みんな、近づくな!」


うん、ある意味毒液。


「フウヤ、だからあれほど食べ過ぎるなと言ったのに……」


「返す言葉もおえっ……」


毒液を振り撒き、騒ぐ町衆を置き去りに、そのまま一直線に城の方へと向かった。





「――っと。ここまでか」


城のすぐ側の草むら。そこに着地し、身を隠す。……可能ならば、このままでいたい。


「大丈夫か、フウヤ?」


「……元気があれば……なんでもできる……三時間休ませて」


「元気ねぇじゃねぇか。ってかもうすぐ」


レンドの言葉が霧散する。レンドの姿が消えた。そう思った途端にオレもサウルちゃんもどこからか現れた黒穴に引っ張りこまれた。


「ふぅ、大丈夫でしたか?レンド様」


引きずり込まれた先は、ワンダーランドならぬ整った室内でした。


明るすぎず暗すぎない部屋に、ナイスミドルガイという表現がピッタリの男性が一人と、奥にあるテレビの前のソファーに寝っ転がる背丈の低い女。……年増か。用はありませんね。


「ふぅ……助かった。ありがとう、キースさん」


「ちょっとー。あたしには何もないの、レンドー?」


寝っ転がってる体勢からひっくり返り、ソファーからこっちをジトーッと見る年増。……ゲームのセンスは悪くないな。


「朝からギャルゲーやる奴に礼なんて言いづらいわ」


「ギャルゲーじゃないわよー。エロゲー」


「難易度あがってんじゃねぇか。ってかキースさんの前で堂々とやんな。こっちには小さい子もいるんだし」


「……ああ、手紙で言ってたわね。別にいいでしょ。いつかは知ることだしー。キースも今さら気にしないわよー」


「お前は気にしろよ」


「……レンド。この女性が?」


「ああ。四砲手が一人、レビッチェル・グーハだ。俺とは幼なじみに当たる奴だ」


キースの紹介を聞き流し、テレビを布で覆う。


「ちょ、何すんのよ。もう少しでいいシーンなのに」


「だからだよ。サウルちゃんという無垢なる人類の宝石の一つに傷をつけるような真似は許さん。シャットダウンしなかっただけマシと思え」


「……ああ。アンタが手紙にあった変態ロリコン」


「おい、レンド。手紙になんて書きやがった」


「俺を越える変態とか書いてたわよー」


「…………」


目を逸らしやがった。このやろう。


「はぁ、仕方ないわね。今はやめたげるわよ。今は」


「そうしてくれ。……ああ、そうだ」


「?」


「……年増にしては、ゲームのセンスはいいと思った」


数秒見つめあい、固い握手。認めるべきところは認めねばな。年増とはいえ。


ゲーム機を置いた年増はソファーから降りて背伸びをする。


「……レビィ、てめぇ……!」


「なによ。アンタがうるさいからちゃんと着てるでしょ」


「上も着ろぉぉ!!あと下!お前それパンツだけじゃねぇか!ちゃんと着たとは言わねぇんだよ、この痴女!」


「痴女の何が悪いのよ。あたしは誇り高き裸族の一員なのよ。これでも譲歩してるんだからへぶっ!!」


「裸族に誇り高きもなんもあるか!いいからさっさとそれ着ろ!!」


「断固として断るわ!!」


ギャーギャーと言い合う年増四砲手とレンド。お前らはギャルゲーの主人公とヒロインか。……まあいい。


「さっきの黒穴、アンタの仕業ってことでいいんすか?えっと」


「キースとお呼びください。左様です。レビィ様の指示より行動させて頂きました。あなた方をここまで連れてこられたのはレビィ様の所業にございます」


「らしいな。レンドから少し聞いた。……よくオレらに協力してくれたな。そっちからしたら敵だろうに」


「私はレビッチェル様に仕えてる身。彼女の判断に従うまでです。そしてレビッチェル様も、レンド様と幼少からのお付き合い。友人の窮地に、居てもたってもいられなくなったのでしょう」


「……友人、ね」


騒ぐ二人を横目に見る。


「~~っ!そもそも、んな貧相な体つきだからってホイホイ見せてんじゃねぇよ!バカレビィ!」


「知らないの、レンド。こんな有名な言葉があるのよ。……貧乳は正義だ!ステータスだ!有利なステータスは見せびらかさないと」


「正義でもステータスでもなんでもねぇぇえ!!」





「……あれ、友人以上じゃないっすか?」


「さあ、どうでしょうね」


クスクスと笑い、誤魔化すキース。……まあ、この二人の関係性は置いといて、だ。


「おーい、そこの二人ー。痴話喧嘩はやめて話すんぞー」


「何が痴話喧嘩だ何が!」


「それには同意しておくわー。で、話?」


話なんてあったかしら?と首を傾げる年増四砲手。ははは、ここまでしておきながらトボけおる。


「オレ達に協力してくれんだろ?この国のトップに一泡吹かせるんだから、作戦立ててこーぜ」


「え、協力なんてしないけど」


『…………』


至って真顔で言いきるもんだから、思わず固まるオレら。


「あたしは潜入に協力しただけ。それだけよ。見返りも何も要求してないんだから、感謝なさい」


「おまっ、お前……!」


「アンタも知ってるでしょ、レンド。あたし、アイツとは戦いたくないの」


「それは知ってるが……」


「皇帝と戦うなら彼女は避けれない。だから戦わない。それだけよ。……とっとと行きなさい、アンタら。まだ城内に侵入されたことまでは気づかれてない。今がチャンスよ」


「……はぁ。わかった。そんじゃ一つ聞かせてくれ。占術師って何者だ?」


レンドの問いかけに、一瞬眉をひそめたあと、年増四砲手は答えた。


「……あたしもよく知らないわ。数日前に突然皇帝が紹介してね。優秀な占い師で、どっかの国から送りこまれた、としか」


「ある国……?」


その国が、この戦争を仕掛けてんのか?……なんのために?


「その人ついさっき帰ったから、今は気にしなくていいと思うわ。アンタ達は残りの四砲手、レミールと皇帝の親衛隊に気を付けなさい」


「親衛隊?」


「あとはソイツに聞きなさいよもー。はい、行った行った!」


「きゃっ!」


「おまっ、急に……!」


「……うぷっ」


やっぱ年増は信用できねぇ。浮いて部屋の外に飛ばされながら、オレは改めてそう確信した。






「やっと騒がしいのがいなくなった。これでゲームに集中できるわ」


「そうですね」


「まったくレンドの奴ったら急なんだから。こっちの用事とかも考えなさいよね」


「……ええ」


「……。キース」


「なんでしょう」


「レンド達のサポートに回ってあげて。気づかれないように」


「承知しました」

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