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異世界で貴重なロリっ娘に出会った

「いたっ!!」

「いでっ!!」



重力に従い落下していったオレらは、固い地面の上に着地した。……結構な距離落ちた気がしたが、よく無事だな、オレら。あの痴神とやらが何かしたか?



ザワザワと周囲から人の声がする。上空を見つめるのをやめ、周りを見渡した。



「…………」



「いったぁ……。何なのよ、もう……!」



「…………」



「あの地神、絶対に私たちに恨みがあるわ!でなきゃ――」



「お前、いい加減状況を把握しろ」



「え?あ……」



落下してきたオレらを驚愕の表情で見つめている、兵士とおぼしき装備をしている人物たち。



見える範囲で十数名。オレらを取り囲むように隊列を組み始めている。……あかんパターンですやん、これ。



「き、貴様ら何者だ!?我らが国の空中から落下してくるなど……国家侵入罪であるぞ!!」



兵士の中でも凄腕そうな隻眼の兵士が、威厳を含ませて問いかける。



「い、いやオレらはっすね――」



「口を開くな!怪しい奴め!」



質問してきたのそっちだよね?なに、キレていいの?最近の若者のキレる速度、バカにしてもらっちゃ困るよ?



「何事だ。騒々しい」



「へ、陛下!実は――」



冷静な声色で兵士の列をくぐり抜け、陛下と呼ばれる金髪のイケメンが現れた。陛下ってアレだよな。要は国を取り仕切る偉い奴。……感情に任せてイケメンに殴りかかるか、理性に委ねて下手に出るか悩むな。まあ、前者にしておこうか。



「……カッコいい」



隣の年増女は目をキラキラしてるし。年を考えてそういうことはだな、なんて考えてたらバキッと心地よくない音。



「誰が年増ですって?殴るわよ」



「もう殴ってるんだがそれは」



てか、何でオレの考えが分かんだよ。



「……なるほど。主ら、名と生まれを名乗れ」



「刈宮 颯谷、16歳。生まれは東京なのっ。キャハッ」



「…………」



盛大にスベった。だ、誰か、介錯を……!



「み……ミレンと申します。生まれはディブトーニです」



ディブトーニ?いずこや、そこ?



「ふむ、この国の生まれか。……詳細を聞きたい。王宮へ案内しよう」



なんだか分からんが王宮へ行けるらしい。やったぜ、腹減ってんだ。



「し、しかし陛下!」



「私の決定に、何か異論でも?」



冷たい声色に、冷たい視線。意見を申し出ようとした隻眼の兵士は黙ることを余儀なくされた。



……薄々思ってたが、嫌いなタイプだな、コイツ。



「ところで彼とは知り合いなのか、ミレンとやら。何か妙な事を言っていたが」



「……赤の他人です」



「おいっ!?」



今、値踏みしたぞコイツ!結果価値ないと踏みやがった!



「この者を牢屋へ連行せよ。後に処断を決めよう」



「はっ、ディゼーニ様!」



この男、ディゼーニってのか……と考えている中、あっという間に簀巻きにされるオレ。あれれ~おっかしいなあ~?こっちに来たら魔法アップロードする話どこいった?魔法のまの字も脳内に浮かんでこないぞぉ~?



「着いてこい、ミレンとやら。歓待しよう」



「はい」



そのまま立ち去る年増といけ好かないイケメン。



年増はすれ違いざまにウィンクをかましたが、意図が全く分からないんで、とりあえず目を背けた。吐き気を我慢したオレ、誰か褒めて。







「ここだ」



連行されて半日ほど歩き、着いた場所は鋼鉄でできているらしき建物。



警備兵が4、5人いて警備は厳重そうだ。中に入ると内部は簡素で、寒々とした冷酷な印象をオレに与える。



「テレビないんすか?最近の刑務所は優しい造りって聞いたっすけど」



オレを連行した兵士がドカッとオレを牢屋の中へ蹴りとばす。



「……ずいぶん乱暴っすね。あの女への待遇とは偉い違いだ」



ガチャンと牢屋の鍵が閉められ、兵士は何も言わずに立ち去った。



やれやれ、転生したと思ったら散々だな、オイ。



「随分活きがいいのが来たな。こんなぶつくさ文句を言いながら来る奴は3年ぶりか?」



牢屋の奥の方、暗がりの中から眼鏡をかけた、少し白髪混じりの一癖も二癖もありそうなじいさんが現れた。



「……あんたは?」



「私はただの好好爺さ。ちょっとおイタをしてね。逃げられなくもなかったんだが、あまり来ることのない場所だからね。せっかくだからと、色々見て回っているところだよ」



「答えになってない気がするが……要は捕まってこそいるがいつでも逃げられる。今は内部を探ってるって認識でいいのか?」



「ハハハハ!まあ……当たらずとも遠からず、といった所か。中々鋭いじゃないか」



「そりゃどうも」



男に褒められたって、ちっとも嬉しくないがな。ロリに褒められたいです、安西先生……!



「キミは何故、こんな所に?」



「オレだって知らないっすよ。神様とやらの不注意で一度死んで、別の世界に生き返ってみたら、この有り様っすよ」



「ハハハ!それはまた奇妙な巡り合わせだな。神も酷いことをなさる」



「信じんのか?こんな突拍子もない話を」



「キミはウソをつくような人物ではない。……私には分かるんだよ」



「へー、年の功ってやつか」



立ったままの話も疲れてきたんで、ドカッと座る。やっぱ床も冷てぇな。



「……どう思う。この国を」



「あー……来たばっかでまだよく分からないっすけど……腐ってる気はするっすね」



「ほう。何故そう思う?」



「この国の陛下とやらに会いました。あまり話してないんで感覚的にしか言えないっすけど、人を見下し、常に自分の支配下に置こうとしてるような感じがしました。……多分、人間のクズじゃないっすか、アイツ」



「ハハハハハ!!一度会っただけの人物を、それもこの国のトップにいる男をそこまでこき下ろすか!とても正気を保った発言とは思えんぞ!」



「あくまで率直な感想っすよ。次に会ったら変わるかもしれない程度の」



「……だが的を射ている。キミが言うようにこの国は腐っている」



「……!」



「信じられるか、この国の人間の8割が貧困世帯だという事実を!信じられるか、自ら仕掛けた戦争で10万人以上の人々が亡くなっているこの事実を!信じられるか、多くの乳飲み子が成人へと成長する前に亡くなっていく、この事実を!この国は実に愚かで、実に嘆かわしい!この国は腐っている!」



「……いいのか、あんた。それをその国の牢屋で高らかに言って。兵士が飛んできても知らねぇぜ」



「構わんさ。むしろ聞かせているくらいだからね」



「ぐわっ!!」



入口付近で、誰かの呻き声がした。



そちらを見やると同時に、入口付近を見張っていた兵士がオレらの牢屋の前に飛んできた。



「……おっさん。本当に飛んできたぜ」



「仕事熱心な輩もいたものだな」



「何を下らないこと言ってんのよっっ!」



声と同時に現れたのは、オレを見捨てた年増――



ガンッ!!



「ミレンよ。次からそう呼びなさい」



「お、おま……いつの間に扉を……!」



「質問はあと!いいから逃げるわよ!」



焦る年増。……なんで急に助けにきたのかは知らんが、逃げれるからば逃げよう。



「おっさん。オレは逃げるけど、あんたはどうする?」



「もう少し情勢を見てからにするよ。遅くはないだろう」



「……そうか」



「早く!警備の奴らがイヤになるくらい来る前に!」



急かすミレンにおとなしく従い、オレは脱走した。








「はぁ~、やっと落ち着けるわ」



どこかの街の一角。家が犇めいている路地裏にて、オレとミレンは休憩していた。ここまで走り通しで15分ほど。疲れた。



「やっと落ち着ける?王宮に招かれて、さぞゆったりしてる事かと思ってたが?」



「あ、アナタ根に持ってるの?アレは仕方ないじゃない!アナタが変なこと言うから不審者に見られてたし……」



「何もない空から落ちてきてる時点で不審者確定だけどな。……ディブトーニだっけ?この国の名前。お前、何で知ってたんだ?」



「あの時、急に頭の中に色んな知識が入って来たのよ。この国のこととか魔法とか……アナタには何も来なかったの?そういう知識」



「なーんにも」



「……あの神、ちゃんと仕事してるのかしら。とにかく簡単にまとめるけど、この国、っていうか世界は、私たちの元いた世界で言うファンタジーとほぼ同一よ。ただ、戦争が頻発してるみたい」



「まあファンタジーなら魔族と人間の戦争なんて日常茶飯事だろ」



「人間同士の戦争が多いみたいなのよ……魔族もいるみたいなんだけど」



「ほーん。……で、なんでお前、王宮から逃げてきたんだ。あの様子からてっきり召し抱えられるもんかと思ってたが」



「誰が!確かにちょっとカッコいいとは思ったけど、私の理想のタイプはもっとカッコよくて優しくて、それこそヒサシくんみたいな――」



「…………」



「おほん。話戻すわね。王宮に行ったのは、ちゃんと事情説明して、住民として扱ってもらえないか頼むつもりだったのよ。ついでにアナタも助けながら」



「オレはついでかい」



「で、住民として認められるにはどうしたらいいのか考えて、魔法を使ってみたのよ。それしかできることないし」



スルーされたYO!



「頭に入ってきた知識を元にやってたら、アイツ、豹変し始めて」



「アイツって、あの金髪か?」



「そう。何か、これは貴重なものだ、とか言いながら私を捕まえようとしたの。なんとか逃げられたけど……アイツ、危険ね」



「オレは会った瞬間から胸くそ悪い奴だと思ってたよ。……さて、こっからどうする?」



「お風呂入りたい」



「風呂どこにあんだよ」



「アニメ見たい」



「テレビどこにあんだよ」



「……!アンタ、本っ当に使えないわね!お姉ちゃんのために一肌脱ぐとかしない訳!?」



「なんて無茶をおっしゃる。魔法使えんのに」



その時だった。



「きゃっ」

「うぉっ」



背後から誰かに引っ張られた。その拍子でオレらは、路地裏の家と家の間にある隙間に入り込む。



それと入れ違いになるように近くの路地から人の声。



「おいっ、いたか!?」



「いや、見当たらない。他を探そう」



遠さがっていく足音。……危なかった。



「ふぅ。大丈夫ですか、お二人とも?」



オレらを引っ張り兵士から見つからないようにしてくれた少女が、ホッと一息をついた。



「あ、ありがとう……。アナタ、誰?なんで私たちを?」



「それは――」



少女が答えようとするのを、オレは思わず遮る形で言葉を発した。いや、発せずにはいられなかった。この少女……ドタイプです。直球ストライクです。



「結婚を前提にお付き合いしてくださっ!!」



みなまで言い切れずに年増に思い切り殴られた。



「なにふざけたことぬかしてんのよアンタは!話遮るな!」



「話を遮ったのはすまないと思ってる。だが、ここで退く訳にはいかない。ド直球にストライクなんだ、この子。改めて、結婚を前提に――」



ブチッ!



「この……ド変態がぁぁ!」



この後、めっちゃボコられた。







「脱走者?」



「ああ。牢屋から一人。どうやら陛下が連れてた少女が逃がしたらしい」



「おバカねぇ。陛下から逃げるなんて……どうする?捕まえに行く?」



「万が一のことも考え、俺は残る。お前は好きにするといい」



「あら。じゃあそうさせてもらおうかしら。……彼はどこに?」



「王宮付近で寝てたな」



「よくこんな中で寝れるわよね。ま、いいわ。彼の出番はないでしょうし。ああ、あなたの出番もないわよ、剛健。わたくしで片付けるわ」



「そうか。くれぐれも油断するなよ。……俺たち三連凶に万が一があってはならぬからな」



「そうね。それじゃ」



王宮、皇帝の間の前にて、話をする2つの影。その1つが離れていく。



残った人物が、胸ポケットに入れたペンダントを見る。



「…………」



ペンダントを見つめ終えた彼は、静かにそっと、ペンダントをしまった。

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