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ラブハリケーンは突然に

「――ということがあったんだ。分かったかね、ハドソンくん?」



「は、はぁ……経緯は分かったんですが、ハルさんの部分は必要でしたか?」



「ばっかお前、オレがどれだけハルちゃんのことを愛してるかを示すために必要だろう」



「……本当にフウヤさんはブレませんね」



「オレがブレたら世界の終わりだろう」



レンドと共に歩いて2日ほど経った頃、ミレンに着いてった伝令役のハドソン率いる部隊に会ったので経過報告。



あっちは四砲手のデブに勝って、今は勝利の凱旋をしながらひとまず帰還しているらしい。



「……えっと、つまりこちらが今回協力してくださる」



「レンドだ。よろしくな」



「はいっ。あ、ミレンさん達は近くの町にいます。案内しますね」



「幼女は確保できたのか……オレの今の重要事項はそれだ」



「お前なぁ。ハグレモノの幼女なんてそうそういる訳ねぇだろ」



「…………」



「え。おいハドソンくん。もしや」



「……会ってお確かめください」



その言葉を聞いたオレは全力で快栽のポーズをとった。W杯で逆転シュートを決めたFWのように。



「イィィエェェスッッ!!」



「え、おいマジか。ハグレモノの幼女?おい、なんかのジョークだろ?」



「……ジョークで済んだら良かったんですけどね」



「おい、早く行くぞ!ようじょがオレを待ってる!」



「待ってください、フウヤさん!場所――!」



「ようじょー!!」



「ダメだ聞いてねぇ!おい、急いで止めるぞ!」



「は、はい!!」






「ようじょー!!」



「きゃあっ!?」



ハドソンを無理やり引き連れて着いた町で、真っ先に見えたテントを開ける。どうやらミレンが着替え中のようだが、そんなことはどうだっていい。



「ハドソン!幼女は!幼女はいずこや!?」



「ふ、フウヤさん……!その……!」



「ん?……ああ、なーんで目をつぶってんのかと思ったら、ミレンか。別に年増の着替えくらい」



「死んでやり直せ非常識変態ドスケベ!!アレスタ・フォートレス、グレネード!!」



不意だったというのに、年増の判断力、魔法の的確さは完璧だった。



近くにいたハドソンを避け、かつオレに魔法による銃の集中砲火を浴びせた。



「ちょ、なにが起きて――」



消し炭になったオレの後ろからレンドが遅れて来ようとする。その声に気づいたミレンは、



「ハドソン、早く閉めて出てって!そこの変態と一緒に!!」



「はっ、はい!」



ハドソンにそう命じて奥に引っ込んだ。年増は以前言ったことを気にしていたのか、下着がマトモに――



「なに思い出してんのよ、ド変態!」



「どべらっ!」



なんか投げられた。ったく、誰が変態だ誰が。……紳士と呼べ。



「えーっと……何が起きた?そこの燃えカスくん?」



「テント開ける。幼女いない。下着姿の年増キレてフルボッコ。今ここ」



「なにしてんだよお前は……」



呆れた、といった様子でかぶりを振るレンド。



「ふ、フウヤさん。さすがに今のはその……デリカシーに欠けていたというか」



「デリカシー?なにそれ食えんの?」



「たっ、食べ物じゃなくてですね……!」



「というかハドソン、ミレンのファンだろ?オレによって被害ゼロのラッキースケベ堪能できたんだから、ここは感謝じゃね?」



「あ、ありが……いえいえいえ!私、なんっにも見てませんから!」



「色は?」



「純白でした……はっ!」



ふふふ、オレの巧妙な口車に乗せられたな、ハドソン!



「とりあえず、そこのミレンっていう子が出てくるまで待つか」



「なにをバカな!今すぐテントというテントを隈無く探し、幼女を――!」



「落ち着け」



「ふぎゅっ」



頭に軽くストンとチョップされる。くっ、変な声出たじゃねぇか……!



「ハドソンくんの話によると、レールさん弱ってんだろ?他にも怪我人いるみてぇだし、騒ぎは起こすな」



「くっ、一理ある……!が、オレの燃えるバトスが……!」



「堪えろ堪えろ。堪えた後の喜びはいいもんだろ?」



「……そう、だな。我慢、我慢だオレ……!」



「あのフウヤさんを抑えた……!」



「変態同士、気持ちは通じるもんさ」



「……よし。とりあえずミレンを急かそう。おーいミレぐばぁっ!!」



テントの入口に舞い戻った瞬間、足元が爆発した。……アイツ、絶対あとでぶっ飛ばす。



「同じ過ちは犯さないのよ、私。これで少しは反省した?」



オレがピクピクと爆発で痙攣していると、頭上から年増の高飛車な声。



テントから出てきた年増はサッと髪をかきあげ、這いつくばったオレを見下していた。



「ごぉらぁ年増ぁ!何さらしてくれとんのじゃあ!」



「ホモ・ゴーレム。よろしく」



「えー。ご主人またぁ?オレもうコイツ飽きたー」



ミレンの声に呼応したゴーレムは、オレの後ろで面倒そうな声色をあげる。……。



「ミレンさま。先ほどは大変申し訳ございませんでした」



い、今は下手に出るしかない。あとちょっとでも反抗したら99、%の確率でオレの貞操が奪われる。



「あら、聞き分けがいいわね。その態度に免じて許してあげるわ。心の広い姉に感謝なさい」



が、我慢だオレぇ……!幼女と会うまで我慢だオレぇ……!幼女に会ってメンタル回復した時がお前の最後だ年増……!



「ところで、なんでアンタがここに?」



「ああ、その辺の説明長くて面倒だからこっちに任す。という訳でレンドよろ。……レンド?」



声をかけるが返事がない。なんぞやと振り返れば、そこに顔をホの字に染めるレンドありけり。名をば、変態となむ言いける。……古文的表現メンド。普通にしよ。



レンドはゆっくりミレンに歩み寄っていき、唐突に頭を下げ、



「結婚を前提にお付き合いしてください!!」



誰もが予想できなかった爆弾発言をのたまった。おーっと面白くなってまいりました!さぁミレン選手、突然の告白にどう返す!?



「……フウヤ、この人は?」



なにこの人気持ち悪いわぁ。そんな表情でオレに尋ねるミレン。あぁ、お前にこの手のウブな反応期待したオレがバカだったわ。せっかくイジれるかと思ったのに。



ま、答えないと話が進みそうにないんで答えますかね。



「レーテリアの四砲手。同類の変態。年増好き」



「ちょっと待たんか貴様ぁ!!」



レンド激おこ。どしたどした?



「どした変態レンド



「おまっ、おまっ!今の見てたろ!今大事なシーンじゃん!俺のいいとこアピールしないといけない場じゃん!なのになんでマイナス面しか伝えないんだよ!」



「あ、嫁候補が複数人いることも伝えないとな。スマソ」



「話聞いてたか!?マイナス重ねてんじゃねぇよ!マイナス×マイナス=プラスなんて数学みたいになんねぇからな!ただただマイナスの2乗だからな!?」



「難しいことわかんねっ」



「投げ出すな!責任取って回収してけ!」



「……えーと、アナタ?」



「はい!」



律儀にオレにツッコんでたレンドが、ミレンの問いかけにビシッと反応する。



「その……今の話を総合的に聞いて、もしホントならこの告白は、その……受け取れないんだけど」



「ほらぁ!フウヤてめ、ほらぁ!!どうしてくれんだよ、俺の初恋!」



「その初恋、何度目だ?」



「……13回目」



「…………」



絶対零度の視線でレンドを見るミレン。が、すぐに気を取り直してレンドに尋ねる。



「で、四砲手?ってことは敵じゃないの?なんでフウヤと一緒に?」



「それを語るとちょっと長くなるんだけど」



かくかくしかじか四角いキューブ、といった感じで語り始めるレンド。え、古い?ソンナー。



至極丁寧に説明するレンドの眼差しからまだ諦めていないのが伝わってくる。いやぁ、やめた方がいいと思うんだがなぁ。ソイツ、年増のBL好きで暴力大好き女だぞ。いいことないって。



なーんて事考えてたらオレの足元がファイヤーに包まれる。ACHICHI、ACHI燃えてるんだろうか~!?



「歌う余裕あるんなら火強めてもいいわよね?」



「今すぐ火を消せ。オレを消し炭にしたくないだろう?」



「むしろしたい派なんだけど」



「またまたぁ~。そう言ってオレがいなくなったらなったで、アイツ……!って空に思いを馳せるんだろ?まったく素直じゃないな、年増は。まあBL大好き暴力年増にそう思われてもちっとま嬉しくはぁいやー!!」



不死鳥を包むかのようにオレの大火葬が行われる。数秒後にめでたく消し炭になった。



消し炭からゆっくりと再生する中、レンドの説明を聞き終えた年増はふーん、と納得の声を出したあと、燃死体に昇格したオレに吐き捨てるように言った。



「話は分かったわ。でもね、変態二人と一緒に行く気はないの。気苦労が増えるだけよ。行くなら二人で行ったら?」



「いや、お前も変態じゃん。なに言ってんの?」



八つ当たりのファイヤー。再び消し炭に。



「ミレンちゃん、一緒に行きたくない気持ちは分かるが、頼むよ。向こうには化け物が二人いる。キミが力を貸してくれないと多分勝てない」



「…………」



真正面からの説得に言葉が詰まるミレン。ふむふむ、年増はこうすると言葉に詰まるのか。



「……分かったわよ。でも、信用はしないからね。そっちよりはまだするけど」



「オレより信用するってどういうことやねーん。コイツぽっと出キャラやぞ」



「ロリコンに人権はないのよ」



「全人類の男性に謝ってこい」



「いや全人類の男性がロリコンなわけねーから!……納得してくれたみたいでなによりだよ」



「……むぅ。なんかアンタ相手だと調子狂う」



おっ、年増の照れ顔。まあ微塵も興味ないんだが……あ。



「ミレン!幼女は!?最もインポータントなファクトをまだ聞いてない!」



「急にルー語を使ってんじゃないわよ。フェードアウトしたいの?」



「ボクは死にません!何故なら……幼女が好きだから!」



「Are you want to go to hell?」



「誰がそれにイエスって答えるよ。いいからとっとと答えろ。……答えてください、お願いします」



コイツ、音もなく背後にゴーレムを忍ばせやがった……!見聞色の覇気を備えてなかったらマジで危なかった……!



「分かればいいわ。……戦闘が終わって、一息ついた頃だったわ」



「ホワンホワンホワーン」



「回想とかしないわよ。祝勝会の雰囲気になり始めたときに、一軒の家から……女の子が出てきてね」



「年は!?服装は!?親はいたのか、ああいやこの際いてもいい!親はオレにその子を任せてくれそうか!?」



「……頭痛い。なんでこんなのが弟(仮)なのよ」



「おい、頼むから詳細を――!」



ミレンの肩を掴んで迫った瞬間、バンバンッ、ボオッ!という音が同時に響いた。足元から火の手が上がり、銃痕が残された。



「…………」



無言でムーンウォーク。ふっ、ハリウッドも夢じゃないな。この動き。



「なに勝手に乙女の体に気安く触れてんのよ。燃えカスになりたいの?」



「目の前でやってくれんじゃないか、おぉ?蜂の巣になりたいのか?」



「どっちもイヤだね。幼女からならどっちもウェルカムだが」



「真性の変態ね」

「真性の変態だな」



「いやいや、真のロリコンならフツー……っていいから続きを」



「……年は9歳って言ってたわ。服装はあの場に不釣り合いな程に高級な布地でできたドレス。……残りは会ってから確かめなさい」



「ウェルカムトゥマイゴッド!アイムアウィナー!」



渾身のガッツポーズ。姉から離れて独り暮らしした時以来だ。……いかん、なんでオレは今、姉を浮かべた?忘れろ、忘れるんだ……!



「高級な布地……羊毛かい?」



「詳しくは分からないけど、見た感じは肉食動物の革を加工したような感じだったわね。クロコダイルとか?」



「それは高級だな。王族とかじゃないと着れないんじゃないか?」



「その麗しき美幼女はどこに!?」



「…………。あっちのテントに」



「マイハニー!君を訪ねて三千里!今、会いに行くよー!!」



聞きたい分は聞いた!もはや年増には何の用もない!今行くよマイエンジェール!!





「……大丈夫か、アレ?」



「大丈夫。ゴーレムを複数体護衛として置いてるから」



「そりゃ安心できるかな」



「……一ついいかしら?」



「何だい?」



「さっきの……告白なんだけど。どうしてアタシに?隣国の四砲手って偉い立場なんでしょ?なら可愛い子の一人や二人……まあ、もう囲んでるらしいけど、いるでしょ?アタシ、ちょっと綺麗なだけの普通の女の子よ?わざわざ告白なんて……」



「マジで余計なこと言ったフウヤは後でぶっ飛ばす。えー、告白は……一目惚れです。可愛い子は確かにいるけど、ここまでタイプの人は初めてだったんで、つい」



「……ヒトメボレ?」



「うん。見た瞬間、衝撃走ったよ。すっごい可愛くて綺麗だったからね」



「~~っっ!!か、かわっ……!ふ、ふん!まあ、アタシみたいな美少女にかかれば?まあ惚れちゃうわよね!仕方ないわね!あ、アタシはアナタのこと好きにならないと思うけど、特別に好意を寄せていても問題ないわよ!!好きなだけ好きでいなさい!!」





――のちに、この瞬間の破壊力を、彼はこう語った。



「ええもう。そりゃ衝撃的でした。ただでさえタイプの女の子がツンデレを、しかも微妙にツンになりきれてないツンデレを披露してくれたんです。ツンデレ好きじゃなくても萌えますよ。たとえ彼女がフウヤの言うとおりちょっと腐女子よりの娘でも、一生養いたいと思いましたまる」





――のちに、この時のときめきを、彼女はこう語った。



「そ、そりゃあんだけ褒められて……好きって、言ってもらえて……気分は悪くはならないわよ。一目惚れって言われたのも……好きって言われたのも初めてだし。か、顔も悪くないしね!まあ、嫁候補とか年上の人が好きとかそういうのはあるかもしれないけど、あくまで友人としてね!近くに居させてもいいかなと思ったわ!」





――のちに、この時のウキウキを、彼はこう語った。



「幼女ペロペロ!幼女ペロペロ!」



……彼は病院に行った方がいいかもしれない。

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