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こうして二人は姉弟になった

深い眠りから覚めたような感覚だった。



手足を伸ばし、いつものように枕元に置いてある携帯を取ろうとする。が、ない。



渋々起き上がると、横で物音がしたため、そちらを見ると、黒髪を腰まで伸ばした可愛い系の女が背伸びをしていた。うん、範囲外ですね。年は……18か。



周囲を見渡すと、白。とにかく白。そうとしか言えない空間に首を傾げると同時に、女が言葉を発した。



「アナタ、誰?ここはどこ?」



「オレの名前は颯谷ふうや。ここがどこかはオレも分からん。……アンタは?」



「私は美恋みれん。……おかしいわね。私、トラックに轢かれかけてたはずなんだけど」



「アンタもか?オレもだ」



「…………」



無言になる女。



「コイツはアレか?オレら死んだのか?」



「その通りです」



どこからともなく声がした。そして天井からスルリと白い羽衣を羽織った女が降りてきた。髪はロングの金髪。……ちっ、範囲外か。



「あ、アナタは……?」



「私は地神グランディース。地上を司る、あなたたちで言うと神に当たります」



「地神……?」



「痴神……?」



「フウヤさん。妙な誤変換はやめてください。ともかく、事情を説明しますね。あなた方は、ちょっとトラブルがあり、誤って死んでしまいました」



「はぁ!?」



女が声をあげる。やっぱ死んでんのか、オレら。で、トラブル?……なんか訳がありそうだな。



「何があったんだ?」



「うっかり……本当にうっかりだったんです」



うっかり?



「あなた方の生命を証明する紙にコーヒーぶちまけちゃって。おかげであなた方の生命を証明できなくなりまして。有り体に言うと、私のミスです。ごめんなさい。てへぺろっ」



「てへぺろっ、で済ませられる事じゃないでしょうがぁぁ!!」



もっともである。



「で、なんでアナタも平然としてられるのよ!?」



オレにまで飛び火してきた。いやいや、オレ被害者だから。



「まあ、死んだならしゃーないかなと。未練とかないし」



「アホかぁぁ!!」



そう言われてもなあ。



「で、ですね。このまま完全に死なせては余りにも申し訳ないので、もしあなた方が良ければ、異世界転生とかどうかな、と」



どっかで見たわ。こんな展開。



「……いや。生き返りたい。元の世界に、元の身体の、元の年齢のままで」



「……それはできないです。その世界で死んだ者がその世界に生き返るのは、たとえ私でも無理です」



「そんなぁ……。私、コイツと違って未練たらたらなのよぉ……」



座り込み咽び泣く女。気のせいか、呼び方がぞんざいになってるような?



「そりゃ、両親は私放置で外国行ってるから別に悲しまないだろうし、兄弟も友達もいない。けど私は、ヒサシくんの活躍をまだ見ていたいのよぉぉ!」



「……ヒサシくんって誰ぞや?」



「アニメの超カッコいい男の子。ようやく、ようやく本編に出てきたのに……あんまりよぉ!!」



「ああ、あの腐女子向けのアニメか。てか未練はアニメだけかよ」



「悪い!?」



「いや別に」



未練が全くないオレよりはマシ……なのか?



「あのー、異世界でもその子が出てくるアニメやってますよ。あと、異世界に転生なら元の身体、元の年齢のままで大丈夫です」



「よし、行くわよ」



「切り替え早いな」



「悪い?」



「いや別に」



「で、アナタは賛成なの?反対なの?」



「……まあ、面白そうだし、オレも賛成だ。痴神さんとやら、転生よろしく」



「そんな買い物頼むかのように……。あと、誤変換やめてください」



律儀にツッコミを入れながら魔方陣らしきものをオレらの周りに書いていく。これでオレらを異世界へと連れて行くんだろうか。



「あ、そうです。これも何かの機会ですし、お二人兄妹とかになるのどうですか?」



「何かの機会ってあんたの――」



「イ・ヤ!!」



オレのツッコミを遮り、女が不快そうな声をあげた。



「見なさいよ、コイツの見た目を!Tシャツに“ロリコン万歳”って書かれた服着てるのよ!絶対お兄ちゃん、とか呼ばれて喜ぶ変態よ!」



「待て。腐女子向けのアニメが未練と言ってる時点でお前も大概だろ」



「私は変態じゃない!」



「それに、オレはお兄ちゃんなんて呼ばれても喜ばん。兄ちゃんで喜ぶんだ。そこを間違えるな」



「どうしようもない変態じゃないのよぉぉ!!」



「んー……じゃあ姉弟でどうでしょう?姉には萌えないでしょう、フウヤさん?」



「自分より年上は年増と思ってるからな。年上に萌えることは未来永劫ない」



「……ちなみにアンタいくつ?私は18だけど」



「16。やっぱ年増」



みなまで言う前に殴られた。脳内に響いちゃいけない音が響く。



「花の18歳になんてこと言うのよ、アナタは!ぶつわよ!」



「もうぶだれまじだ……」



やだこの暴力年増。



「ふふっ。初対面なのに仲が良いんですね。これなら安心して送り出せそうです」



「仲良くない!」

「仲良くない!」



「では転生する異世界、サタナーデについて少し説明しますね。サタナーデは魔法などが使える、色々と興味深いところです」



「魔法……私たちも使えるの?」



「ええ。向こうに行った後、あなた方に合う魔法をあなた方の脳内にアップロードしておきますよ」



「オレらはパソコンだった……?」



「パソコンとして転生します?フウヤさん」



「人型で頼む。人外は辛い。あと聞きたいんだが……その世界、安全だよな?」



「…………」



「おい?」



「さ、準備できました!それでは新しい人生の船出に精一杯の祝福を!」



パカッ



「……は?」

「……は?」



オレらの真下の床が窓を開けるように開いた。



ここは無重力空間ではなく、人間は当然ながら重力には逆らえない。



つまり、



「ウソでしょおおぉぉぉ!!?」

「うおおぉぉぉ!!?」



オレらの身体は真っ暗な空間が続く下へと、吸い込まれるように落下していった。











「ふう、これで後始末完了っ。面倒事もあの子達にまかせちゃおうっ。私ってば策士!」


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