閑話 コンちゃん、大いに語る
実際の宗教、神社や神様のシステムとは、違う事があります。
あくまでも、私個人の意見、ファンタジーを盛り込んであります。
何卒、ご了承下さい。
コンちゃんは、思ったよりも、人間くさい狐様になってきましたね。
第二章に入る前に、閑話が出来ました。
コンちゃん視点です。
神様は、今日もお勤めを果たしておいでになる。
近頃は、この国の者のみならず、外国からの旅の者もやって来る。
祈られた以上は、祈った者を皆、救う事が我らの使命であり、喜びである。
誰であろうと。
朝も昼も夜も無く。
何処に居ようと。
この世は、金のみにあらず。しかしながら、神社の管理をしてくれる者達にも、生活がある。賽銭が、神様に関わる全ての人間達を支えてくれているのだ。
賽銭を弾め、とは、口が裂けても言えぬ。
皆、暮らしがあり、生きていれば、運が良い時も、悪い時も、ある。悪い時に備え、良い時に蓄える事も、肝要である。
それ故に、悪い時は、ただ祈るしかない時もあろう。
良い時には、我らの働きに感謝を以て、示してくれれば、それだけで本望である。
然れど、ごく僅かながら、我慢のならぬ者もある。
人は、頼み事をして、礼の言葉位は、言わぬのか?
人は、頼み事をする時に、最低限、礼を尽くさぬのか?
人は、頼み事をするならば、時として、金品を差し出さぬか?
何も知らぬなら、仕方あるまい。幼少のみぎり、誰にも教えてもらえずにいたのなら、教えられた時に、覚えれば良い。
知っていても、出来ぬ時に、無理をしろとも、言わぬ。
知れず、出来ず、覚えられぬ者にも、強いられぬ。
教えられれば、出来る者もいる。それ故に、繰り返し繰り返し、伝わるまで諦めぬ。
誉めて、叱って、見守る。
時に、その者の家族・親戚縁者・友人、時に、他の神様や先祖も共に。
諭して分かる者には、恵みが豊かにもたらされる。
何故ならば、その者は、運が良い時も、悪い時も、幸せになれるからだ。それこそが、人の道を修めるという事である。
知っていながら、また、それを覚え、出来る立場にありながら、わざとやらぬ者には、……無礼討ちせねばならぬ。
我が御仕えする主の御為にも、無礼者は、近付けぬ。
主は、祈る人を選ばない。
ならば、せめて、我は主を守るのみ。
『と、俺様としては、思うわけだよ。』
当世風の簡易な言葉を選び、守護する者に伝える。
物事の真理は、理屈の中には無い。
真理を分かりやすく理解する為に、理屈がある。
昔とは、時代が、政の仕組みが、民の考えが違う。
戦も無い。
神々と沢山の人間が、懸命に努力した結果、今の時代がある。
昔は、伝えられなかった事も、今ならば。
この者は、頑固で、至らぬ所も多い娘だが、理屈から真理を学ぶよりは、真理をそのまま伝える方が、理解が早い。
単純と言えば、単純。
馬鹿正直と言えば、馬鹿正直。
今のこの世で生きるには、辛い事もあろうが。
けれど、素直に覚えて、行動するのだから、何と諭しがいのある。
愚か者ほど、可愛いものよ。
『ふーん、随分、人間くさい考え方をするのね。そういうものなんだね。』
『俺様の言う事、分かってくれたか! 』
『うーん、分かんないし、信じらんない。』
盛大に転げてみせる。しかし。
『信じられるわけ無いじゃん! でも、コンちゃんは、なぜか私を守ってくれてる。それは、分かる。コンちゃんと、話も出来る。それも、確かよね。コンちゃんの言う事は、全部は分からないよ。でもね、科学じゃなくても、証拠が無くても、良いの。コンちゃんの言う事を聞くと、私は楽しい。』
『……そうかい。』
『うん、最初は狐に化かされているのかな? と、思った事も、あるのよ。』
『……! 』
『怒らないで、お願い。だって、生まれて初めてだよ。神社に行ったら、神様に話しかけられるなんて。しかも、フランクを通り越して、口が悪いときてる。』
……やり過ぎたか。わざとなのだが。
『大酒飲みで、しかもおねだりし過ぎ。口うるさいし。』
『仲良くするには、飲みニケーションが1番だって。』
『コンちゃん、……それ古い情報みたい。』
……知っている。わざと言ってみた。
『でも、好き嫌いで言うなら、好き。』
『えー、参ったなあ! 俺様の好みは、メスの狐……。』
『そっちじゃなくて。恋愛の話じゃないよ。』
……分かっている。わざと言ってみた。
『お前、偉いなあ、今日は、朝に起きて、着替えもして。顔も洗って、掃除もして。祝詞もあげて、神棚拝んで。朝御飯も、少しだけど食べたじゃないか! 』
大いに誉めてやる。自覚の無い無理をし過ぎて、病人も同然の状態。
起き上がっても、寝間着のまま、用足しと食事以外は、出来ず、ひたすら1日、布団の中で、過ごす日もある。
『うん、今日は、気分が良くてね。でも、掃除も床だけだし、パジャマを新しくしただけ。午後はまた寝てると思う。ごめんね。こんな引きこもりで、ニートで、病人より、もっと良い人間がいたんじゃない? 』
『悩みの無い人間は、基本的にいない。運気の良い人間は、神様に頼ろうとしない。運気の悪い時こそ、自分がどんな人間なのか、分かるチャンスなんだ。』
『あー、そう言えば運の悪い時期ほど、人生の転機には、なってるかも。』
『おう、大転機になるぞ! さ、そろそろ、もう、寝ろ。』
『……うん、ありがとう。』
『休むのも、仕事と同じ位大切だぞ! さあ、休め! サボれ! 寝ろ! 人生上手くいかない時こそ、寝るのが大事だ! 』
『うん、ありがとう。』
布団の中に入った、娘の枕元に座る。
子狐の姿になり、尻尾で頭から肩にかけて、撫でてやる。
祓いたまえ、清めたまえ。幸いたまえ。
お読み頂き、ありがとうございました。
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