表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

3 パリピでは、ありません!

まだ、主人公の詳しい事が書けませんが、もう少ししたら、ファンタジー要素や、モフモフが好きな人とかにも、お楽しみ頂ける様に、狐さんを魅力的に書きたいものです。




 なぜこうなったのだろう。そば屋さんのほうじ茶は、美味しいけど、落ち着いて飲めない。

 目を閉じると、暗闇の中に、白い子狐が、尻尾を脚に挟んで、うるうるした瞳で上目遣いに見上げてくるのだ。

 もちろん、目を開けていようと、閉じていようと、相手は、頭の中に勝手に話しかけてくる。オドオドしながら。


『あのう、さ、酒は? あんたには、悪いんだけど……。』


「う!」


「はい、何でしょう? 」


「お、お会計、お願いします。」


 思わずまたしても、うるさいと叫びかけた。『必殺! 笑ってごまかす!』を店員さんに向けて、駆使しなければならないのだ。

 もう! 少し黙っていて欲しい。


『……静かにしなさい。今、考えているから。』


『よ、よろしくお願いします。……何でこんな事に。飲みたかったなあ……。怖かったよう。』


 美味しかったはずなのに、口の中には、余韻のかけらも無いまま、笑顔を作り、店の出入口横の、レジで会計を済ませて、外に出た。





 神社の方へ、のんびり歩いて戻りながら、頭の中に話しかけてみる。もちろん、安全の為に、目は開けたままだ。


『それで? お稲荷様のみつかい? お使いとは違うのよね? 天使みたいなものかしら? 』


 盛大にこける気配がする。オーディション無しで、お笑い芸人になれそうだ。ウケる。


『天使なんかじゃない。あ、今のは失言だ。天使とは違うって、言いたかっただけで、あいつらは、感じの良い奴らだよ。所属が違うだけで、仕事は同じ様なモンだしな。うーん、「けんぞく」って知ってるか? 』


 神様にお仕えしてるのに、失言とか。

 この人大丈夫かな? わざとかも知れないけど、何か心配になる。

 ……あ、人じゃないのか。天使も、御使いにかかると、あいつらとか、奴らとか。どこからツッコミを入れたら良いのだろう。


『おい、全部聞こえてるからな。まあ、「けんぞく」ってのは、神様の中でも、1番下の位。平社員だよ。その分、経験も実力も足りないから、修行するんだよ。あ、言い忘れてたけど、主な仕事は、神社の中で、神様や、神様を信じる人間とかを守ってんだ! 』


『ふうん、なるほどねえ。? あなた! 神社の中にいるの?』


『当たり前だろ?』


 その辺のシステムが分からないし、じゃあ、今私にはどうやって話しかけてるのだろう?


『とりあえず、神社のどこにいるか、教えて。』


『おっけー! 中に入れ! あ、お前達の世界で言うと、細胞分裂が、1番近い! だから、神社の中にいても、同時にあちこちにいられるぞ。』


『便利ね。』


 神様が、細胞分裂。……すごいな。






 そうこうしている間に、神社の前に戻ってくる。

 鳥居をくぐると、白い石畳が敷き詰められた参道の両脇に、狐の石像が、並んでいる。

 普通の神社なら、狛犬がいるのだろうが、稲荷神社ならば、狛狐とでも言うのだろう。

 ゆっくりと両脇の狛狐を眺めながら、参道を歩いていくと、


『ここだ。』


 と、声が聞こえる。どうも、シリアスモードになると、声が重くなるみたいだ。狛狐だか「けんぞく」だか分からない。でも、仮にも神様だし、大切にしなければ、という心持ちになる。人の目も気にはなるが、自分なりの礼儀を尽くそうと、1体の狛狐の石像に一礼し、手を合わせる。


『何故、私に話しかけて下さったのかは、分かりませんが、御守り下さって、ありがとうございます。これからも……よろしくお願い致します。』


『おっけー! 良いぞ!』


 声も、態度も元通り。雰囲気ぶち壊しだ。……やっぱり、ムカつく。こんなパーティーピーポーで、ウーイ! な神様が、現実にいるのだろうか?




 でも、最近、辛かった。色々な事があり過ぎて。

 家族とは喧嘩するし。

 バイト先でも、人間関係が微妙だし。

 資格試験は、不合格になるし。

 友達とも疎遠になるし。

 身体も最近、疲れやすくなって、いつも何処かが痛くなるし。

 ストレスは溜まるし。

 お金は貯まらないし。

 他にも、色々あり過ぎて。




 偽物でも良い! 騙されても良い!

 自分を助けてくれる存在に、すがりたい。

 正直、この狐男の軽さは、腹立たしくも、救いでも、あった。


『写真、撮っても良いですか? 』


『おう、イケメンに撮ってくれ! あと、俺様は、本物だ! 騙されても良いなんて、考えるんじゃねーぞ。』


 返事はしない。スマホのカメラを起動して、右側から、写真を撮る。我ながら、上手く撮れた気がする。


『あー、俺様は、反対側から撮る方が、写りがいいんだけどな。』


『早く言いなさいよ。このパリピぎつね!』


『はあああん?! 俺様は、パリピじゃねーし! 宴は、楽しむもので、騒ぐ為のものじゃねーし! 大体、仕事を真面目にすればこそ、酒はうまくなるもんだし! 騒いでるだけの奴らと、一緒にするなよ! 』


『……お撮り直ししましょうか? 』


『ううっ! 結構です! ……怖いよ~。』


 苛立ちに任せて凄むと、また可愛らしい子狐になった気配がする。なんて、あざとい奴なんだ。イライラする。






 狐男のせいで、性格まで変わりそうだ。鳥居をくぐったところで、話しかけられる。


『さあ、張り切って帰ろうか! 』


『……お酒、買って帰るよ。』


『え? 良いのか? 』


『知ってたんでしょ? まさか酒屋さんが道路を挟んで、神社の向かい側にあるなんて。前に来た時は、神社の方しか見てなかったから、気付かなかったわ。』


『お前っ! 良い奴だなあ! 俺! 頑張るよー! 』


『お調子者なんだから。このパリピめ! 』


『パっ! パリピって言うなあ! 』

ご覧頂き、ありがとうございました。

何かお気付きの事がありましたら、お知らせ下さいませ。

よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ