13 あなた、誰?
歴史的な事は、はっきりと分からない事が多いですね。難しいですが……。
『あ、見つけた。スマホを出せ。ネット検索しろ。』
言われるままに、スマホを出すと、稲荷神社と入力した。
出たサイトによれば、ミケツカミは、「御饌津神」と書くのだが、当て字に「三狐神」と書く事があったらしく、そこから狐のイメージが付いた様だ。
他には、狩猟民族だった我が国の人は、オオカミを神の御使いと崇めていたが、農耕が始まり、オオカミは山へ追いやられて狐が、替わりになった説。
また、稲を食べるネズミを狐が狩る事から、稲の守り神となった説もあった。
『へー、知らなかったー。そんな説もあるんだねー。』
どこまでが、このきつねの本音か、分からない。
そもそも、コンちゃんて誰なんだろう。
何者なんだろう。
本当の名前は、あるんだろうか?
平社員とか言ってるけど、実は偉いんじゃ……。
ふと、語尾に、「よっ! 」を付けていた、亡くなった祖父を思い出す。
祖父……なのかもしれない。
お礼参りに行った日を思い出す。
あの時、鳥居を出た時に、お腹に響く程の低音は、神様だったのか、コンちゃんだったのか。
コンちゃんは、いつも、飄々とした雰囲気だ。
鼻にかかった、甲高い若そうな、男の人の声を出す。
お調子者だけど、いつも、守ってくれているのは、感じる。
悪いきつねじゃない。
失言するのも、わざとらしい。いや、わざとそうしていると、思われる時がある。
コンちゃんって、誰なんだろう?
……沈黙。
何も返答が無い。
どういう意味だろう。
知ってはいけないのだろうか?
『ん? 俺様がイケメンだって? 』
「誰も何も言ってないよ。」
『ええっ? 俺様ショック! 大ショック! 』
「……。」
呆れて黙っていると、仕方なさそうに、落ち着いたトーンで話しかけられる。
『眷族。御使い。あとは、御先とも呼ばれている。神様のお手伝いをする者だ。名乗る程の者でもない。』
「ほう、手先ね。」
シリアスな雰囲気に耐えられなくなって、先にふざけたのは、私だった。かなり、コンちゃんに影響されてきたのか。認めたくないけど。
『やめろっ! てさきじゃないから! みさき! 神社が、「悪の秘密結社」みたいな雰囲気になるだろっ? 』
「ごめん、……神様の総合商社だね。」
『そーそー! いや、……商社じゃないけど。まー、似たようなもんか。お前のじーさんは、遠くからよくお参りに来てくれたからな、覚えているぞ。』
「あー、コンちゃんは、おじいちゃんじゃないのか。」
少しだけ、がっかりした気もする。
亡くなった祖父が、生まれ変わって、神様のお手伝いをしていて、話しかけてくれたのかも知れない、って思うのは、楽しかったのに。
『それはどうかな? 』
「どういう意味? 」
『ふっふっふ。あまり、ヒントを出したら、ダメなんだよ。』
「ふーん、まあ、いいや。ところで、コンちゃんて本当は、名前あるの? 」
『俺様の名前? 』
「うん、本当の名前があるなら、それで呼んだ方が良いんじゃない? 」
『俺様の名前は、……コンちゃんだ! 』
「はああああん? 」
『だって、コンちゃんだもん! 』
可愛らしく言えば、何でも許されるとでも、思っているんだろうか。
『良いんだよ、コンちゃんで。安易なネーミングだが、可愛い俺様にぴったりだろ? 』
「自分で言うかね……。」
『そう言うけどなあ、自分で自分を誉めてやらなきゃ、誰も誉めないぞ。自分が誉めるから、誉められるんだ。誰に誉めて欲しい? 』
「……うーん、親って年でもないし、親友とか? でも、いつも会える訳じゃない。今は上司も先輩も後輩もいないし。……神様かな? 誰が知らなくても、神様なら分かってもらえそう。」
『神様は、言わば自分の分身。あの世の自分だ。親は順番通りなら、先に死ぬ。友達も他の奴もいつまで自分と一緒か分からない。でも、自分と神様だけは、自分が死ぬまで、ずっと味方でいてくれる。自分が嫌いなのは、神様嫌いなのと同じだ。』
「自分嫌いは、神様嫌い? 」
『そーそー、勿体無いぞ? 』
「うん、分かった。自分を好きになるのは時間がかかりそうだけど、嫌いにならないようにするところから、始めようかな? 」
『偉い! それは、大事だ! 』
「ところでさあ。」
『おう、何だ? 』
「本当に名前無いの? 」
『コンちゃんだよ! コンちゃん様でもいいけど……。』
「本当に? 」
『今日のお前は、しつこいぞ? 参ったなあ。』
私達は、こんなやり取りを、しばらく繰り返したのだった。
お読み下さり、ありがとうございます。




