12 きつねでは、ありません!
コンちゃんが、ツンデレでした。
稲荷神社のイメージアップの為に、頑張っています。
『はあ、はあ、いやー、悪い悪い。つい、少々取り乱しちまって。』
「少々ですか? 今のは。」
『おう! 少々だっ! 』
相変わらず威張っているけど、コンちゃんの気持ちを考えれば、同情できなくもない。仕方なく話を続ける。
「じゃあさ、どうして
『稲荷神様イコール狐』になっちゃったの? 」
『俺、しーらね。』
「はああああん? 真面目に答えてよ! 」
『だって、俺様は本当に知らないもんよー。』
「……確かに、どの本読んでも、理由が分からない。」
『多分な、稲穂の色とか、形とかが、狐っぽかったんじゃね? 』
「そんな理由? 」
『おう、人間の考える事だ。そんなもんだろっ? 』
明るく答えてくれたものの、どこか上から目線で、腹が立たなくもない。
「……なんで、
『きつねじゃありません! 』って、言わなかったの? 」
『だーってさー、人間達ときたらさー、可愛くね? 』
「は? 」
『可愛いよなー。いとおしいよなー。お狐様、お狐様って、一生懸命お祈りに来るの。可愛くない? 』
「……人間がかわいい……。」
『そーよー。神様大事にしてくれたら、俺たち平社員は、細かい事はどーでも良いのよ。お狐様って、言われたらさー、きつねで良いやー。きつねの格好で現れてあげよう! そんなもんだろっ? よっ? 』
付け足しの様に、よっ? って言われても返事の仕方に困るのだけど。眼精疲労を感じて目を閉じる。暗闇の中を、白い小ぎつねが照れてれ、デレデレ、身体と尻尾をくねくねさせている様だ。
ツンデレのきつねに、更に質問を重ねる。
「あのさ、お供え物は、油揚げじゃなきゃダメとかは、無いよね? 」
『おう、何でも有り難く頂くぞ? きつねからの連想で、狐色の食べ物は、もらう事が多いし、好きだけどな。きつねうどんときつねそば。お揚げに卵焼き。それに、お前からもらったフライドポテト! あとは……』
「お酒。」
『分かってるねー! そうそう! たまには供えてくれ! 』
とんぼ返りをしながら、ご機嫌で答えるコンちゃん。
一方、目を閉じても、気は休まらない私。
仕方なく更に質問する。
「あのう、神社とか小さな祠の中に、お地蔵様とか、狐の石像とか、あと、狛犬とか狛ぎつねとかいるよね? 」
『おう、俺様もいるぞ! 』
「……、何故前掛け? てか、よだれ掛け的な物が、赤いの? 」
『あー、人間の作ってくれたものだから、分かんないけどなー。……多分、目立つからじゃね? 』
「目立つから? 」
『そうそう! 緑の森や山! 白い俺様たち! そして、赤い着物! 目立つな! 』
「……そろそろ真面目に答えてよ。」
『そんなに怒るなよー。あー、赤は、鳥居にも使われる、厄除けの色だからな。お参りに来てくれた人の厄払いになるぞ。赤ちゃんって言葉があるだろ? 赤い色は、力の源であり、塊。人に力を与えてくれる。』
「なるほど。」
『きつねの石像等が白く塗られているのも、俺達が白い事を分かってる人間が、お前の他にもいるんだろうな。紅白の色は、昔からおめでたい事に使われる、厄払いの色だ。』
「珍しく、真面目な答えだね。」
『俺様は、いつも真面目……でもないかっ? 』
テヘッと、照れ笑いすれば何でも許されると思っているのか、このきつね……。
「じゃあさ、なんできつねが恐いとか、稲荷神社が恐いとかになったの? 」
『あー、説明疲れたし、詳しく本に載ってるから、それ読んで。』
「えー、答えてくれてもいいじゃん! 」
『次のページだ。』
「はいはい。」
突然繰り出す、落ち着いたイケメン声に、驚くけど、真面目な話なのだと、気持ちを切り替える。
本によれば、妖怪の狐と、混合されてしまったのが、原因なのだという。
妖怪の狐は、妖狐と呼ばれているらしい。
九尾の狐等、こっくりさん、狐に化かされる等、あまり良いイメージが無いのは、その為らしい。
おまけに、狐には化かすだけの力があるのだからと、ネガティブな祈りをする人間も、いるという。
あいつを酷い目に合わせてくれ。
あいつを陥れてくれ。
さながら、呪いだ。
それすらも、清めて、祓って、しかしそれが積み重なれば、神様が傷付き、傷んでしまう。
『だからさあ、手入れの行き届かない神社は、傷が癒えないのよ。俺達がいるK稲荷神社は、大きいし、毎日、神社で働いている人間達が、よく頑張ってくれてる。でも、全部の神社が、必ずしもこうじゃない。』
「……苦労してるんだね。」
『そう! フー! ヒョー! ……なんだっけ? 』
「……風評被害? 」
『そう! 神様の使いのきつねだけど、妖怪の狐じゃないから! 一緒にしないで! 超ウルトラスーパーロイヤルスペシャルベリー大大だーい迷惑なんだあああああー!! 』
コンちゃんの心の叫びは、まだ終わりそうに無かった。
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