11 コンちゃんは、きつねで……はない?
ご無沙汰してます。
本屋のレジで、大学の先輩に会ってからのお話です。
『あいつ! 良いやつだな! 』
「え? あ……、うん。」
本屋から帰るとすぐに、ご機嫌なコンちゃんから、話しかけられた。
コンちゃんは、目を閉じると、白いこぎつねの姿で、ルンルンと尻尾を左右に振っている。
多分、私の枕の側に居るのだろう。頭の近くにフサフサした物を感じる。例によって目を開けても、何も見えない。
ベッドに寝そべって、買ってきたばかりの本を読むも、全然集中できない。テンション高く、話しかけられるのだ。
『見所のあるやつだ! K稲荷の事も好きだったし、……ん、まー、これ以上は、なー。』
「意味深な事を言うね。」
『んー? あー、うん、神様的に? 今は言えない事もあるからなあー! 』
「言うと、叱られるの? 」
『うん、まあ、ねー。お優しい方だから、叱るとか、怒るとか、あまり無いけどなー。あんまりヒントを出し過ぎると、人の成長を邪魔するからさ。』
とことん、テンション高く、甲高い声で楽しそうに話している。
……大学の先輩は、本屋でアルバイトをしていた。
一度就職したものの、違う仕事に就く為に、資格試験の勉強をしながら、働いている、との事だった。
レジには、私以外に並ぶ人もいなかったので、近況報告と、買った本の内容で、大いに話が盛り上がった。
先輩は、K稲荷神社に初詣に行った事があり、近くの酒屋さんの事も知っていた。
先輩は、私が本好きである事。大学の食堂で、よく本を読んでいた事を、覚えてくれていた。
先輩は、面倒見の良い人だったから、色んな事をよく覚えているのだろう。それに対して、悪い気はしなかった。
『まー、お前もいい加減、これを機会に、ネガティブな動画とか、心霊物の暗い話のサイトを、インターネットで見るのは、止めておけよ。狐とか、稲荷神社とかの恐い話を検索しても、良い事無いだろうが。』
「怒っているの? 稲荷神社が苦手な子がいるのよ。狐が恐いとか、お稲荷さんが恐いとか、どうしてなのか気になって。」
『怒ってないけどさー、お前、ホラー苦手だろ? 狐が恐いとか、稲荷神社が恐いとか。そんな話を見て、良い気分になってないのに、なんで見てるのかなー? って思ったから、よっ?』
「コンちゃんは、きつねでしょう? 悪いきつねと良いきつねがいるのかな? って、思ったら、恐くなって。調べたくても、よく分からないし。」
『あー、そもそも俺ら、きつねじゃないし。』
「……はああああん? 何で? 」
『本、読んで。』
と言うと、黙ってしまった。
機嫌でも悪くしたんだろうか?
手元の本は、稲荷神社について書かれている。
ページをめくると、稲荷神社の神様は、「ミケツカミ」という、稲穂の神様であり、農耕の神様であった、とある。
やがて、商売の神様になり、お金の神様になった。
『田んぼも少なくなったしさー。食べていける様に見守る仕事から、生きていける様に、見守る仕事になったのさ。まー、田んぼも畑も、見守りは続けてるけどなー。』
と、明るくのんびりした口調で、語りかけてくる。
コンちゃんが怒っていない事に、内心ほっとして、頷きながら、更に読み進める。
その本によると、狐そのものが、まつられている稲荷神社も、例外的にあるという。
一、稲荷神社が山にあり、狐そのものが山の守り神とされている場合
二、神社の敷地内にお寺があり、ダキニ天が稲荷として奉られている場合
ダキニ天とは、仏教の神様で、『信じてくれなきゃ、祟りがあるぞ』と言う狐の姿をした神様らしい。
『あー、これ、はっきり言っておくけどさ、本物の神様は、
「信じないと、祟りがある」
なんて、絶ーーー対に言わないからな!! 』
「でも、そう言う神様なんじゃないの? 」
『神様ってのはね、清らかで、広ーくて、深ーい、お心の持ち主なんだよ。どんな神様も、信じようが信じまいが、人間を好きで見守ってくれるお優しい存在なんだよ。人間が布教するのに使うタテマエだよ。』
「じゃあ、本物のダキニ天は? 」
『信じないやつを取り殺す様な、野蛮な事は、絶対にしない。』
「……じゃあ、私がこの前ネットで見た、恐い稲荷神の事は? 」
『あんなの、低級霊の仕業に決まってんだろ? まったく! 稲荷神様に謝れっつーの! 神様のせいにされて、俺たちは! チョー迷惑してんだからなっ!』
「……。」
『神様が魂よこせとか? 言うわけねーじゃん! ふざけんな! オメーらみたいな、ニセモノがいるせいで……!』
コンちゃんの怒りは、おさまらず、私は、しばらく愚痴を聞く羽目になったのだった。
お読み下さり、ありがとうございます。
また、ぼちぼち続けていきますので、よろしくお願いいたします。




