ラプンツェル38
麻痺が解除された途端に、みんな走る。一纏めに固まっていたら、先程みたいに全員で喰らってしまう。
「これでも喰らえ。手持ち砲」
反動があり手が痺れてるがヘアーモスの腹付近に爆発音を立てて命中した。
ヤバい、これ楽しいかもしれない。先程のガトリングも良かったが、派手にぶっ放す手持ち砲やミサイルランチャーは一発一発が威力が高く男なら憧れる武器の一つだ。
だが、金食い虫と言われる程に弾の値段が他の武器と比べるまでもなく高い。それも消耗品という事も相まって使うプレイヤーは殆んどいない。
『ギャオオオォォォォォォ』
「よっしゃぁぁぁぁぁ、落ちたぞ」
「みんなぁぁぁぁぁ、一斉攻撃ぃぃぃぃぃ」
ヘアーモスは背中側から地面に落ちた。足をばたつかせながらも中々起き上がれないでいる。
「火炎回転斬り」
「火炎矢」
「爆発弾」
「火炎回転跳蹴り」
「聖火炎」
「そぉれ火炎瓶を投げます」
ヘアーモスは、文字通りに髪の毛で出来てるモンスターなだけあって炎で良く燃える。
これでようやくヘアーモスのHPが、5本ある内の1本を削り取った。まだまだ時間が掛かるだろうが、目の前の様子を見ると絶対に勝てると希望を持てる。
「起き上がるぞ。一旦、退避だ」
やっとヘアーモスは、グルリンと半回転し起き上がり再び空中へ浮かんだ。
その前にどんな攻撃でも対応出来るよう王子達は離れた積もりであった。だが、その考えが多少甘かった。
『グモォォォォォォ』
「えっ?なっ!」
またヘアーモスが羽ばたいたから風の刃が飛んで来ると思いきや違った。
王子の周りだけ糸━━━いや、髪の毛がまとわりつき時間が経つに連れ、グルグル巻きにされる。
いくら王子が髪の毛を引き千切ろうとも髪の毛の数が圧倒的に多い。引き千切る度に新しい髪の毛が補充される。
「今、助けるにゃん」
桃太郎と共鳴融合してるシャーリーが、桃太郎の職業:刀剣士の俊敏差により一気に王子を包み込んでる髪の毛を一閃しようとするが、やはり雑魚とは違いボスと言ったところだろう。
『ギャオオオォォォォォォ』
風の刃が王子とシャーリーの間に滑り込み邪魔をする。あのまま進んでいたら、シャーリーに当たっていた。
咄嗟の判断と反射神経で、どうにか回避するが王子から離れてしまう。
他の者もシャーリーと同様に王子を助けるために近寄ろうと奮闘するが、ヘアーモスに邪魔をされ近付くどころか離れる一方だ。
王子自身も髪の毛を破り続けるが周囲を巻き続ける髪の毛の方が速い。
「クソォォォォォォ」
「タカちゃん!」
「王子!」
王子と仲間達の努力の甲斐もなく王子は、ヘアーモスの髪の毛に包まれ繭となっていた。
「にゃぁぁぁぁぁ届けにゃぁぁぁぁぁ飛燕」
シャーリーが小鳥を模した飛ぶ斬激を髪の毛の繭へ放った。ヘアーモスからの風の刃による邪魔が入るが飛燕の方が強く繭まで届いた。
だが、届いたまでは良かった。数本髪の毛が切れたが、王子を解放するまでには至らない。
「くっ!」
他の者では風の刃を潜り抜けるのは無茶だ。シャーリー以外でたどり着けそうなのはフローラだが、俊敏差にステータスを振ってるせいか、防御に乏しいため命中したら即死に戻りしてしまう。
「兄さんを離しなさい」
紙一重で風の刃や髪の毛を回避し続け前進している。多少傷を負いながらで良いならシャーリーでも前に進めるが、風の刃には吹き飛ばし効果がある。
下手したら進む距離よりも後退した距離の方があるかもしれない。
だから、今はフローラに掛けるしかない。
「速度アップ」
ニムエがフローラにバフを掛けた。他の者もフローラのサポートをする。
「オラオラ、お前の相手はこっちだぜ」
メリッサがヘイトを稼ごうとするが、それは一瞬だけだ。直ぐに繭へ近付いてるフローラへと向いてしまう。
「兄さん兄さん、待ってて下さい」
時間が経つに連れ攻撃の密度が増加していく。その中をフワリフワリと針に糸を通すようにヘアーモスによる攻撃の隙間を縫って進むフローラの神業にシャーリーは開いた口が塞がらないでいる。