ラプンツェル33
「おや?オレとニムエが最後か」
最後に到着したのはメリッサとニムエであった。だけど、時間通りである。
「王子様、遅れてすみません」
「時間通りだから大丈夫だから頭をあげて」
これで全員集合した事になる。さて、では出発するとしようか。
「ちょっと待って欲しいにゃ。まだ、全員じゃないにゃ」
「えーっと他に誰かいたっけ?」
周囲を確認する。ひぃふぅみぃ……………全員いるよな?それか他に誰か来る予定でもあったけ?
「にゃふふふ、まだにゃたしの相棒を紹介してにゃかったにゃ」
相棒?シャーリーが持ってると言っていた童話キャラか?
「童話召喚:桃太郎」
シャーリーの横に魔法陣が出現し、人影が現れた。黒髪短髪で額に桃のマークが刺繍された鉢巻が巻かれ、戦国時代に着てそうな甲冑を身に付けている。
腰には一本の刀と巾着が装備され、昔に絵本で見た桃太郎よりもスリムで美形である。
「我が主のお声に参上致しました」
まるでシャーリーに支える騎士のように片膝をつき頭を垂れている。
これが誰でも知っている日本童話を代表と言っても過言ではない桃太郎の主人公である桃太郎なのか。
「桃太郎久し振りにゃ。紹介するにゃ。にゃたしの仲間達にゃ」
「お初にお目に掛かります。我が主の騎士、桃太郎でございます」
とてもシャーリーに従順で男の俺から見ても格好いいと思えてしまう。騎士の中の騎士って感じだ。
「確か王子は、レベル25になっていたかにゃ?」
「あぁ、ちゃうど魔女を倒して25になったが、それがどうした?」
まぁまだセカンドキャラを作成出来るレベルには程遠いが、初めてからの期間を考えるとこんなものだろう。
「忘れてるのか知らにゃいのか分からにゃいが、レベル25になったら共鳴合体が出来るようににゃるにゃ」
共鳴合体、それは童話キャラを持ってる者の特権と言っても過言でないだろう。この特権を使用したいがために童話キャラを手に入れようとする者が後を立たない。
名前の通り童話キャラとプレイヤーが一心同体となり合体、融合と言うべきか二人が一つになるのだ。
童話キャラの武器と魔法・スキルが使えるようになる。ステータスも大幅にアップし、共鳴合体が使えないプレイヤーと比べると雲泥の差と言えよう。
ただし、リスクもある。共鳴合体中に死亡してしまうと童話キャラも死亡扱いとなってしまう。
デスペナルティーとして、その童話キャラは1日使用出来ない。プレイヤーも大幅にステータスが低下する。
「一回やってみるからにゃ。共鳴合体:桃太郎」
シャーリーが叫ぶと、桃太郎が光の粒子になりシャーリーの周囲に集まってくる。
光の粒子によってシャーリーが見えなくなってから数秒後、そこには猫侍という言葉がピッタリな姿のシャーリーがいた。
「にゃふふふふ、どうにゃ?格好良いかにゃ?」
「シャーリーさん格好良いです」
「私も童話キャラ欲しくなって来ました」
「タカちゃんも早くやってみてよ」
「どんな姿になる楽しみだな」
シャーリーから俺へとみんなの視線が移る。そんなに注目されてはやり難い。
「ゴホン、こうか?共鳴合体:赤ずきんシャルル」
シャルルとエラで迷ったが、最初に仲間にした順でシャルルにした。
シャルルが光の粒子となり、王子の周囲に集まってくる。
数秒後、光の粒子が晴れていき王子の姿が露になる。
頭から腰辺りまで赤い頭巾付マント、両足太腿にホルスターが装着され二丁拳銃が入っている。
ここまでならシャーリーと同じだ。だけど、最も驚くべき現象が起きた。
それは体型が女性となっていた事だ。胸元は出て腹はキュッと引き締まっている。
服装も赤ずきんとほぼ一緒だが、上の丈が短く露出が目立つ。下はミニスカートで、中は見えそうで見えない。
「おい、みんなどうした?」
王子の姿を見たメンバーは、呆然と立ち尽くし口をアングリと開け固まっている。
鏡があれば、王子も直ぐに気付けていたかもしれないが、自分の異変に気付かない。
「兄さん、これ鏡。自分の格好を見てみて」
フローラが手鏡を王子に渡し、首を傾げながら自分の容姿を見る王子。ここでやっと自分の異変に気付いた。
「な、ななななななんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ」
ラプンツェルの話世界入り口前で王子の叫び声が響き渡った。
明けましておめでとうございます。
今年最初の更新となります。
よろしくお願いいたします。