ラプンツェル30
王子は、二人の了承を得てラプンツェルを探し行こうとするが、とある問題が発生した。
魔女を倒すために時間を使い過ぎて、現実の時間では、もう日付が変わってしまっている。
ラプンツェルの事は気になるが、現実も大切だ。仕方なく、世界の中心都市に戻りログインした。
『お兄ちゃんお兄ちゃん、朝だよ。起きて、起きないとチューしちゃうぞ』
パチン
寝覚まし時計のボタンを押し、カーテンの隙間から朝日が零れ差す。
掛け布団を捲ると、そこには自分の足しかない。何となく、杏か杏璃が隠れていないかと思ったが隠れていなかった。
「今日はいなかったか」
いると注意したりする王子だが、いないと何処か悲しみを覚えるのである。
「杏、おはよう」
「兄さん、おはようございます」
俺が一階に降りると既に杏がいた。テーブルには朝食が用意しており、実に美味しそうだ。杏が用意したのだろう。
パクっ
「…………モグモグ、ゴックン。今日も美味しいな」
「嬉しいです。愛情をたっぷり加えたので、たぁーんと召し上がってください」
実妹から言われる台詞ではない。恋人か新妻がくれる台詞だろう。
妹好きな輩には堪らない場面だろうが、俺にとってはいつもの光景なので、嬉しいが顔には出さないようにしてる。
だって、杏に知られるのは恥ずかしいじゃないか。本当なら杏璃の手料理を食べたいが、昔から料理は苦手なようで、たまに杏に料理を教わってたりする。
「もう時間か」
「兄さん、行きましょう」
俺と杏は仲良く家を出、登校途中にいつも通りに杏璃と合流し、学校へ向かった。途中、杏とは別れ杏璃と一緒に学校に着いた。
学校に着き教室のドアを開けたら、いつものやり取りで、杏璃と関係を夫婦と茶化されながらも席に着いた。
「タカちゃん、今日はバイト休みだよね?
「ん?あぁ、休みだな。それがどうした?」
「今日の放課後、生徒会を手伝って欲しいの」
自分の席にカバンを起き、俺の席に杏璃がやってきて話掛けて来た。
生徒会か。バイトがない日で、たまに杏璃の手伝いをしている。バイトを始める前は、生徒会の勧誘があったが断っていた。
だけど、たまに手伝いくらいと杏璃の説得によって押し切られてしまった。
「杏璃の頼みなら断れないな」
ぱぁぁぁぁぁ
「タカちゃん、ありがとう」
太陽みたいな満面な笑顔を輝かせた後、自分の席に戻って行った。
その様子を隣で見てた駿は、杏璃が俺から離れたところで話し掛けてきた。
「よぉ、朝からラブラブたねぇ」
「駿か。彼女なんだから当たり前じゃないか」
「かぁぁぁぁぁぁ、あの初うぶだった頃の二人が懐かしいぜ」
改めて言われると恥ずかしい。つい、杏璃の姿を追ってしまう自分がいる。
ほんの1分~2分前の自分に動揺するなと言ってやりたい。
「それでヤったのか?」
駿が俺の目の前で、左手の人差し指と親指で輪っかを作り、その中を右手の人差し指が行ったり来たりする素振りを見せて来た。
「はぁ~!!まだ付き合い始めたばかりなのに、ヤる訳ねぇよ。ちゃんとした順序っていうものがあるだろ」
「キングは甘い。甘いよ。昔なら兎も角、今この時代に早いも遅いもあるか。付き合い始めたら、そくヤる。これが鉄則だ」
駿はそう言うが、俺にはそんな勇気はない。まぁ杏璃ならヤらせてくれるというよりは、逆に夜這いをやられる側に回りそうだ。
やはりゲームと現実では違うという事だ。
キンコーンカンコーン
「ほら、チャイムが鳴ったぞ」
「チッ、後で聞かせろよ」
だから、ヤってないと何回言えば分かるんだ!駿がエロい話をするから女子の視線が痛い。
あれから休み時間の度に駿によって問い詰められたが、俺はヤってないの一点張りで貫いた。
その代わりに俺の心は疲弊していた。だって、駿の質問責めに合う度に女子の視線が突き刺さり、ヒソヒソと俺の耳に内緒話が入って来る。
その内容は、駿が質問してる内容と大差ない。気になるなら俺と駿に聞き耳立てるよりも杏璃に聞いた方が早いと思うが、当の杏璃は休み時間になると教室からいなくなる。
「それじゃぁな」
「あぁまたな」
ようやく放課後となり、俺はカバンを持ち生徒会室に向かう。
案の定、杏璃は既に教室から姿を消しており、一人で向かう事にする。
「こんにちは」
生徒会室と書かれた教室のドアを開いた。中にいるのは、俺を置き去りにした杏璃と先輩らしき人物が二人いる。