八話赤ずきん7
今回の話は主人公の学校の話になります。
長くなりそうなので、2話又は3話に分割しました。
日常編を楽しんで下さいませ。
『お兄ちゃん起きて!朝だよ。お・き・な・い・と、イタズラしちゃうぞ』
ガチャっと王子の手が"不思議の国のアリス"に模した目覚まし時計を止める。
「ふわぁー、もうこんな時間か」
目覚まし時計の時間を確認し、布団を捲ったら、そこには妹の杏がいた━━━━布団をかけ直した。
「....いやいや、寝ぼけて見間違いしたのかな?」
再度、布団を捲ると━━━杏がいた。
「おい、お前何してんの」
「お前とは失礼ですね。可愛い妹に向かって」
プンプンと可愛いく怒り、逆に可愛さアピールしてるのではないかと疑問に思う事も屡々《しばしば》伺える。
「....杏、本当は何してるの?」
「え、何って決まってるんじゃないですか?凛々しい兄さんの寝顔を見たり~、兄さんの良い匂いを嗅ぐためですが、それが何か?」
寝顔ならまだ許容範囲内だから、まだしも匂いを嗅ぐって変態ではないか?
「兄さん、私の事変態だと思ってません?」
(!!心読まれたか)
「当たり前ではありませんか。兄さんの心を読む事なんて、この杏にかかれば容易いです」
(えっ!当たり前の事なの。俺ってそんなに分かりやすいか?)
「はっ、着替えるから出て行け」
「一番のお楽しみを取らないでください。兄さんの裸体を見るのが私の楽しみなんですから」
初めて見る妹の姿に愕然と立ち尽くす王子。
杏の手にはしっかりとデジカメが握られており、見るだけではなく撮るつもりでいたらしい。
(目の前に、変態....変態がいるよ)
「だから、私を変態呼ばわりしないでください。私は兄さんの事が大好きで仕方ない普通の妹です」
ブラコンでも、さすがに兄の部屋に忍び込み、兄の裸の写真を撮るとは思わないだろう。いや、今目の前に一人はいるが━━
「はぁ、ほらさっさと出る」
杏の襟元を掴み、ポイっと部屋の外に放り投げる。
「きゃぁ、あぅ私のプリティなお尻が。もう、兄さんは照れ屋なんだから。仕方ないですね。出直しますか」
出直さなくていい、出直さなくていいから忍び込むな。
杏が下に降りたのを確認したら、素早く着替えて一階に降りた。
「おはよう、父さん母さん」
「おはよう、王子。寝不足のようだが、ちゃんと眠れたのかい」
「少し夜更かししてね。大丈夫だよ」
「そうかい?それなら安心だが━━」
「それより父さん。杏が俺の部屋に忍び込んでたんだけど、叱ってやってよ」
王子がそう言うと妹の杏に注目が集まった。
しかし、叱られると思いきや父さんの口から意外な言葉が出てきた。
「....杏、それで撮れたのかい?」
「はい、父さんが貸してくれたデジカメで何枚か撮れましたが、一番撮りたいものが撮れませでした」
「わははははっ、そうかそうか。それは残念だったな。また、チャンスはあるさ」
「はい、父さん。私、杏は諦めません」
ガッツポーズをする杏。
一方、王子は杏と父さんの話を聞いて絶句している。まさか、杏の盗み撮りを手伝ったと分かると(そういや、父さんは杏には激甘だったんだ。あのデジカメも確かに父さんのだ)と思い出し諦めた。
「ほら、朝食よ。早く食べないと遅れるわよ」
母さんに言われ時間を確認すると七時を廻っており、後二十分程で出ないと学校に遅刻してしまう。
「「「いただきます」」」
部屋侵入と盗み撮りの件を杏と一回話さないと考えるが、遅刻するので学校から帰って来てからにするとことにした。
「「ご馳走さま、行ってきます」」
俺と杏は家を出て、途中まで方向は一緒なので並んで歩く。
「あ、杏歩きにくいんだけど....」
「ふんふん♪何を言ってるんですか。仲良い兄妹なら当たり前ではないですか」
当たり前なのか?と疑問に想いながら杏と恋人の様に腕を組ながら歩いてると王子と同じ学校の制服を着た女子高生が待ち合わせなのか道沿いに立っていた。
「あ、キンちゃんおはよう」
女子高生が王子に気付き手をおもいっきり振ってる。
「おはよう、杏璃」
挨拶を返す王子。
「相変わらず仲良いわね」
「ちっ、分かっていれば邪魔したいで欲しいものです」
「そっちも家族以外だと口が悪いわね。杏」
「それで、ここで何をしてるのですか?杏璃さん」
「何って、キンちゃんと待ち合わせしてただけだけど」
彼女は森川杏璃、俺達兄妹の幼馴染みだ。物心付く頃から遊んでおり、両親同士も同級生で家族同士の付き合いである。
実際は約束はしてないが、杏璃が毎回待ってるので一緒に登校してるのである。
周囲から見たら付き合ってるのではないかと同級生に聞かれた事は何回もあるが、王子と杏璃二人揃って否定してるので、そこから先は追及されないでいた。
「あのさ、キンちゃんって止めてくんないかな。なんか....男のあれを連想させるからさ」
「んーと、じゃぁー王子様?」
「それの方がイヤだよ。それに何で疑問系?俺には王子と名前があるんだから。普通はそう読むけど」
「しょうがないな。それじゃー、タカちゃんで妥協してあげる。それより、いつまで腕組んでるのかな?杏はここから学校の通路違うでしょ。
いつまでも、兄離れ出来ないとタカちゃんに嫌われちゃうぞ」
杏璃に言われ杏は王子の腕を離すが、ウルウルと涙になっていた。
「に、兄さんが私を嫌うこと無いですよね。無いですよね」
「あぁ、無いから安心しろ」
王子の言葉に安心した杏は自分の学校に方向転換し満面な笑顔で向かって行った。
「タカちゃんもタカちゃんで杏に甘々だよね。ワタアメみたいに甘々だよ」
「そうかな?」
「本人には自覚ないんだね。もう、時間無いし行こうか」
どうにか遅刻しないで教室に入り、席に着くと待ってましたとあるクラスメイトが近づいて来た。
「よう、相変わらず夫婦でご登校とは仲良いね」
「夫婦じゃねえーよ」
「....」
「杏璃は何で無言なんだよ。誤解されるだろ。後、頬が赤い気がするし」
「まぁ、分かってるけど、キングは鈍感だね」
「キングって呼ぶな」
今、話しかけてきてる彼は谷崎駿、同じクラスメイトでいつも五月蝿いヤツだ。説明以上。
「俺の説明....雑じゃない」
「駿、どこに向かって話しかけてるんだ」
「いや、何でもない」
「そうか。なら、良いけどよ」
チンコンカンコン━━━━チャイムが鳴った。
ガラガラっバッタン━━━教室のドアを開けて担任の先生が入って来た。
「皆さん、おはようございます。一時間目は数学ですので、このまま、始めてしまいます。委員長、号令を」
「はい、きりーつ」
ガチャっ
「礼」
一時間目、数学の授業が始まった。
「ふぁー、眠い。ヤバい堕ちる」
キンコンカンコン
「チャイムが鳴ったようですね。委員長、号令を」
「はい、きりーつ礼」
━━━休み時間━━━
「よっ、キング珍しく寝てたな。夜更かしでもしたか?」
「だから、キングは止めろって。ちょっとゲームに夢中になって」
「キングがゲームだと!童話しか趣味が無かったキングが!」
そこまで驚くことかな?というか失礼な気がする。
「ねー何々、何の話してるの?」
杏璃が寄ってきた。
「あのキングがゲームをプレイしたと驚いたという話だ」
「えー!タカちゃんがゲームを!あの童話オタクのタカちゃんが!」
幼馴染み二人に散々な言われようでシュンと落ち込む王子。
「あれ、タカちゃん落ち込んでるようだけど、どうしたの?」
「どうしたの?じゃない。俺が童話以外をしたらダメたのか」
「ごめんごめん。タカちゃん機嫌直して。今夜タカちゃんの料理楽しみなんだから」
杏璃の今夜という言葉にピクッと王子は反応する。
「ん、今日来るのか?おじさん帰り遅くなるのか?聞いてないんだけど....」
「あれ、おかしいな。父さん、おばさんに電話したって言ってたんだけど」
母さん、杏璃が来る事言ってよ。
おそらく、どっきり好きの母さんがワザと伝え無かったと悟り、諦めた。言ったら言ったで妹の杏が反対しただろう。
「お、新婚みたいな話だな。ただ、料理作るのが反対だと思うけど」
「だって~、タカちゃんの料理美味しいんだもん」
「そりゃー、俺もキングの料理食べた事あるから分かるけど━━━普通に店で出せるレベルだしな」
昔食べた王子の料理を思い出してるのか若干ヨダレが垂れてる。
「ちょっ、谷崎汚いよ」
「おっと、すまねぇ」
キンコンカンコン
「あっ、チャイムが鳴ったな」
「じゃあー、次の休み時間にまた来るよ」
二時間目は歴史で机の上に教材を出して先生が来るのを待っていた。
その後、眠気を我慢しながら時間は過ぎていった。