ラプンツェル28
「ふぉほほほほほ、要らぬ助言をしてしまったかのぉ」
「いや、そのお陰で九死に一生を得たような気分だ」
あのままだといずれ押し負けていた。だけど、今はシャルとエラの二人がいる。
この二人がいるなら絶対的に勝てると内心から自信が溢れてくる。
「なら、遠慮はいらないねぇ。本気で殺らせて貰うよ」
魔女が魔力を一気に放ったのだろう。暴風にも似た魔力の嵐が三人に襲い掛かる。
普通はゲームの設定上、ただ魔力だけ放ってもダメージを負う事はないけれど、肌がビリビリと痛む感覚がある。
「これは強そうね」
「でも、王子様が一緒だと負ける気しない」
「やるぞ、二人とも」
三対一となり、ここから戦いの本番だ。シャルは、二丁拳銃を構え魔女に銃口を向ける。
エラは、魔法杖を両手に持ち床に突き立て俺とシャルに様々なバフを与え、俺達の周囲に魔法を軽減する障壁を張る。
「喰らいなさい、二段乱射」
魔法特化にすると、どうしても物理に弱くなってしまう。シャルの持つ二丁拳銃のような重火器は、攻撃魔法と同じ中遠距離攻撃を得意してるのに物理攻撃というカテゴリーに入ってる。
よって、この中で魔女の天敵はシャルという事になる。魔法軽減する障壁を張られていても二丁拳銃の弾は通り過ぎる。
「痛っ痛い。何で防げぬ。風の精霊よ、我を守れ」
魔女が中心となり塔の中で風が吹き荒れるが、多少狙いはズレる程度でシャルの銃弾は止まらない。
それにエラの障壁のお陰で、王子も難なく魔女に近寄る事が出来、ウルフソードで切り付ける。
「はぁぁぁぁぁ回転切りぃぃぃぃ」
「ぎゃふぅぅぅ、くっいい加減しい」
後ろへ後退しながらも魔女は、魔法杖でウルフソードを防いだ。
魔女のHPは半分程に減っている。このまま攻め続ければ、絶対に勝てる。
「おのれ、良くもアタシの顔に傷をつけなねぇ。許さないよ」
魔女の様子が何か変だ。ほぼ肉がない皮と骨だけの体に、ボコボコと肉が付き初め、時間が経つに連れ異形の怪物へと成り果てた。
体長は3mはあり魔女の時と比べると3倍ほど大きく膨れあがっている。
『ぐっへへへへへ、お前達もここまでだ。ここまで追い込まれたのは、あんたらが初めてだよ。さぁ死ぬが良い』
RPGゲームに良くあるボスのHPを減らしたら変身する定番の場面だ。
まぁ大抵はラスボスが変身するお決まりだが、ここGWOは様々な童話が入り雑じってるMMORPGだ。
つまり童話事にラスボスは設定されており、変身するかはそのボスにもよるが、今回は変身したみたいだ。
「うへぇ気持ち悪い」
18禁のエロゲーに出てきそうな表現したくない触手が何本も王子達に狙いを定め一斉に襲い掛かって来る。
「私が王子様を守る」
いつの間にかシャルが二丁拳銃から両手持ちのガトリングガンに切り替え、銃口がうぃぃぃぃぃんと甲高い音を響きかせながら回り始めた。
数秒数百発の銃弾を打ち出している。俺達は、それに巻き添えを喰らわないように呆然と立ち尽くしてる状態だ。
「うわっははははは、喰らいやがれぇぇぇぇぇぇ」
ガトリングガンを連射しながら、ヒロインらしくない笑い方でシャルの目が病んでるようだ。
王子が、赤ずきんの話世界で最後戦った時も何処か病んでるみたいに銃機をぶっ放していた。
今回で確信を持てた。おそらくシャルは、銃機を手に持つと人格が変わってしまうと。
「シャルばかり良い姿をしていられないな。エラ、俺にバフを掛けてくれ」
「はい、王子様」
新しくバフを掛け直し王子も前戦に出る。バフにより体は軽く、今なら一瞬で距離を縮め十回以上は切り付けられそうだ。
「では、行ってくる」
シャルのガトリングガンに対応してる内に魔女だった怪物の足元へとたどり着く。まだ、こちらに気付いてる様子はない。
大きくなった分、足元までの視野が狭くなってるようだ。切り付けダメージを負わせるなら今しかない。
「食らえ、十字切りぃぃぃぃ。そして、回転切りぃぃぃぃ」
変身する前よりも硬くなってるようだが、着実にHPは減っている。
俺が切り付けた事により俺にヘイトが移る。やっと俺に気が付いたようだ。
鞭状の触手が俺へ襲い掛かるが、エラのバフによって遅く感じる。俺は、ヒット&アウェイで颯爽にエラのところへ戻る。
「ふぅ、ただいま」
「王子様、無理はなさらないで下さい。私、心配で心配で」
無理をした積もりはないのだが、エラの目頭に涙が浮かんでいる。本当にNPCなのか疑いたくなる程に感情豊かだ。