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七十八話・ラプンツェル18

結構、間が空いてすみません。

 外に立ったままではしょうがないので俺はラプンツェルと一緒に着物のレンタルショップに入った。普通VRMMORPGでは、イベントリに入ってる装備を選び装備すれば瞬間的に着替えられるはずなのだ。

 だが、このレンタルショップでは温泉みたく男女に別れており、強制的にラプンツェルと別れ俺は男の暖簾を潜ると中では一人のNPCがいた。


 ━━━━王子たかし側━━━━


「いらっしゃいませ。どんな着物をお探しで?」

 色々種類あるのか?現実リアルぽくハンガーに掛かっており、自由に見られる様になっている。

 でもまぁ、俺は男だしそこまで着物にこだわりがあるわけない。現実リアルの夏祭りでは、いつも動きやすい私服で行ってる。行った先では、フローラとアテナの着物の感想を毎年言う羽目になる。


「これで良いか」

 俺が選んだ着物は、青い生地に軽く花火の柄が入ってるのを選んだ。肌触りも現実リアルと負けておらず、むしろゲーム内の方が現実リアルと思える程、着物の生地の再現がハンパない。

 この店では現実リアルに忠実で着物を着付けしてくれるらしい。それも強制的にだ。NPCが俺の装備を脱がしに掛かる。抵抗しようにも体が勝手にロボットの様に動き抵抗しようがない。

 着付けをしてくれるのはNPCなので、恥ずかしがる必要は全くないのだが………女性NPCだからか隣の部屋にいるであろうラプンツェルの事を考えると顔が熱くなり恥ずかしい思いが溢れて来る。

 パンツ以外を脱がされ何かの罰ゲームみたく思え早く終わらないか祈るだけだ。それに、女性NPCが僅かに頬が赤く染まってる風に見えるが気のせいか?見間違いだと信じたい。

 女性NPCがハンガーから俺が選んだ花火柄の着物を手に取り、袖に俺の腕を通す。夏らしく風通しが良く着てるだけで、涼しく感じる…………かもしれない。

 他の装備は体感温度など感じる事ないので、おそらく気のせいだろう。


「いいえ、お客様気のせいではありません。着物全種類には、スキル:感応性がついております」

 俺の心を読んだのか!

 スキル:感応性とは、装備者が適温と思われる温度に自動調節してくれるそうだ。


「………!!(何その無駄に高い技術は!)」

 現実リアルにあるならマジ欲しい、というか売れるんじゃねぇか。現実リアルでは着物じゃなくて普通の服に代用すればねぇか。

 服じゃなく掛け布団のシーツには、特殊な素材で体感温度をヒンヤリと下げてくれる商品が実際にある。アレはアレで試しに使用した事があるが実に気持ちいい。寝転んだ瞬間から周囲の温度が急激に下がったと錯覚する代物だ。


「お客様、着付け完了致しました」

 少しあれこれかんがえてる内に終わったようだ。

 物語の登場キャラを担当してるAIで動いてるNPC達は流暢な日本語で本物の人間が話してる風だが、ここと同じくショップを含めた決まった文言で事足りるNPCは心が込もってないと言うべきか、何か俺的にはつまらないと感じてしまう。

 さて、ラプンツェルの方は終わっただろうか?



 ━━━━━ラプンツェル側━━━━━


 少し時間を遡る。

「へぇ、私初めてショップに入ったのだけれど、こういう風になってるのね」

 初めて塔の外へ出たラプンツェルにとっては何もかも新鮮に写り、ついついキョロキョロと辺りを見渡してしまう。

 見た事のない服(着物)・道具・塔以外の部屋等々を見渡した結果、自分がいた世界が余りにも小さく外の世界は想像以上に大きく思い知った。だが、感動の方が上回り涙腺が緩み嬉し涙が頬を伝い、手を合わせ神様に祈りを捧げる。


「お客様、お着物はどれになさいますか?」

 NPCの気持ちの込もってない言葉にラプンツェルの感動は台無しである。数秒前の感動をマジで返して欲しいと心の奥底から思うラプンツェルである。


「ごめんなさい。今、選ぶから待っててちょうだい(カズトとは、大違いだわ。この人、何か人形みたいで気持ち悪いわ)」

 ラプンツェルが、このNPCを人形と思ったのも無理はない。だって、本当に人形なんだもの。正確には決まった受け答えしか出来ないNPCといったところか。

 ラプンツェルは、その事を知る由もなく、ただ単に気持ち悪いと思っただけで今はどの着物にするか思案中だ。カズトのところだと着物は十数種類だったなのだが、女物の着物となると数十、数百種類は軽く越える。

 それ故に普通なら試しに試着をするところをラプンツェルは、箱入り娘のせいか試着という言葉を知らずに一生懸命・無我夢中に自分が着る運命の一着を選んでいる。 


「これにするわ」

 一時間程でようやく探し当てた運命の一着を手に取り、瞳をキラキラと輝かせながら、最初の内は自分で着ようとしたが着方がちんぷんかんぷんで頭に???が沢山浮かんでいる。


「お客様、お決まりでしたら"着付け"をお任せ下さいませ」

 着付けという言葉を初めて聞くラプンツェルは、おそらく着替えさせてくれるもんだと思い、自分が選んだ着物をNPCに渡すのである。

 

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