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七十五話ラプンツェル15

「うぉ、王子たかし君スゴいね。服の上からじゃ分からなかったけど、腹筋割れてるだね。男として羨ましいと思うよ」


 男に言われても嬉しくない。昔から祖父の道場に通っていたからか定期的に竹刀の素振りなり走り込み等を続けている。クセか趣味と言われれば、クセみたいなものだろう。


「わぉ~、これは予想以上ね。杏ちゃんと杏璃に聞いていたけれど、直接目にするまで疑い半分だったもの」


 おいっ!杏と杏璃よ、何話してるの!これは後でお仕置きが必要だな。


 王子たかしが写真撮影をしてる同時直。

「はっはっハッキュション」

「杏璃さん、大丈夫ですか?はい、ティッシュです」

 杏璃に杏はティッシュを渡し、チーーンと鼻をかむ。かんだ後、何やら寒気を感じる。

「風邪じゃなくて、誰かが噂をしてる気がする」

「誰が杏璃さんの事を噂するんですか?兄さんでもあるまいし」

 その直感は当たってるのだが、二人は知る由もない。



王子たかし君、ちょっと触っても良い?」


 この人は何を言い出すんだ?たまにテレビのバラエティーで女性が男性の筋肉を触って食レポみたいに感想を言う番組あるけど………あるのなら良いのか?いやいや、こんなところを他の人に見られたらマズイでしょう。


「ここには関係者以外誰もいないわよ」


「そ、そうだったぁぁぁぁぁ」


 王子たかしは口の周囲に手を添え青空の向こうへ叫ぶ。その叫びが届いたのか━━━


 ~王子たかしの部屋~


 ピキーン

「はっ!今兄さんの声が聞こえた気が………」


「う~ん、私には聞こえないわよ。それよりも、早く宿題やらないと」


 杏璃と杏は今、何故か王子たかしの部屋にて杏璃が杏の宿題を手伝っていた。杏に借りがあるという事で杏璃は手伝う事になったらしい。


「少し休憩しません。兄さんの匂いを十分に嗅いでもかまいませんから」


 ここには王子たかしの汗が染み着いた枕やベッドシーツに掛け布団はもちろんの事、学校の制服や体操服があり、この二人にとって正に天国に近し場所だ。


「クンカクンカ、はぁん………タカちゃんの匂いがするぅぅぅ」


 杏璃はベッドにダイブし顔を掛け布団に擦り合わせ匂いをうっとりと惚けた表情で嗅ぐ。そして、枕に顔を沈ませ頬ずりすると動かなくなる。


「はわぁ~、シ・フ・ク~。何で王子たかしの匂いは良い匂いなの」


「ぐぬぬぬっ、本当は私のポジションなのですけど………今日は譲ってあげます」


「あんたどんだけ嗅いでるのよ!」


 今現在、王子たかしの匂いを嗅ぎまくってる杏璃が自分の事を棚に上げて呆れる半分羨ましさ半分ってところだ。


「ですので、今日は前菜オードブルとして兄さんの制服で我慢します」


 杏曰く王子たかし(兄さん)の匂いコースメニューは次の通りらしい。


 ・前菜オードブル:兄さんの制服&ワイシャツ

 ・サラダ:兄さんの脱ぎ立てパンツ(無理ならタンスに仕舞ってるものでも可)

 ・魚料理ポワソン:王子たかしの汗が染み着いた枕

 ・スープ:兄さんが入った後のお風呂の残り湯

 ・肉料理ヴィヤンドゥ:兄さんの汗が染み着いたベッドシーツ&掛け布団

 ・メインディッシュ:兄さんの肉体(これだけは達成出来ていない)


 以上が杏が告げるフルコース一覧になる。


 これを聞いた杏璃はというとドン引きだ。杏璃はベッドから飛び起きて王子たかしの部屋から出ようとした瞬間、肩に手を置かれ部屋から出られる事は叶わなかった。

 そして、悲鳴が響き渡る事になるが、これは別の話になる。


 王子たかしの悲鳴が響き渡った頃、シオンの自宅兼別荘兼仕事場では、今現在進行形で水着姿の王子たかしの筋肉をシオンがペタペタと触りまくってる。


「いやぁー、筋肉好きな女って理解出来ないなぁって思ってたけど………実際に触って見ると分かるわぁ。これはクセになるってもんよ」


「それは分かったから、もうそろそろ止めてくれないかな。恥ずかしいんだけど………」


 他の人に自分の体を触らせる事なんて普通に日常生活してれば、まずない事だ。例外としてマッサージや健康診断等を除いて。


「何言ってるのよ。これも大事な作業なんだから。どんな作品を作るのかイメージを練るのに………大事なのよ」


 ふ~ん、イメージ………ねぇ~。

 それにしちゃ触り過ぎな感じがするし、頬が赤く染まってるように見える。

 それに、俺の写真を何に使うのか一度も聞いてない。聞いてもおそらく教えてくれないと思ってるから。だから、バイト代が出るからと半ば諦めムードだ。








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