七十四話・ラプンツェル14
遅くなりました
執事服からはファッション誌に掲載してる流行服を一通り取り終え、休憩中に写真家尊さんと男と男の話し合いをする。
王子の周囲には何故か女性が多く、男で親しく話すのはクラスメイトの駿だけだ。だから、こうして今日尊さんと出会えたのは運命かもしれない。
友達になってくれたら嬉しいけど、有名な写真家で忙しいだろうから難しいかもしれない。だが、勇気を出して訪ねてみよう。
「あの~、尊さん俺と友達になってくれませんか?男友達が少なくて」
ポカーンと尊さんは口を開けて呆けて何を言われたのか理解出来なかったようだ。まぁ小さな子供じゃあるまいに「友達になってくれ」と急に言われれば高い確率で戸惑うのも無理じゃない。
「と、友達だって!王子君はもしかしてボッチなのかな?」
「ち、違います!ただ、男友達が少なくて」
王子はボッチではないが、杏や杏璃がいなかったらボッチである可能性は大であった。だけど、王子にとって七不思議に挙げたい位に不思議なのが、自分の周りには女性ばかり集まるという事だ。
「そういえば、恋人がいたのだったね。羨ましいな、俺なんか仕事一筋でさぁ。俺も聞きたいよ、どうやって恋人を作れるのかね」
どう答えるべきか王子は冷や汗が止まらない。自分の体験談を話しても参考にならないと思うから。特殊すぎてそうそう真似出来ないだろう。
偶然に幼馴染みと家族ぐるみの付き合いで、偶然にも家に泊まりに来る事も屡々あり、偶然にも同じゲームをやっている。その偶然が重なっただけに過ぎない。
「出会いは一期一会と言いますし、尊さんにもきっと素敵な出会いがありますよ」
何処かで聞いた事のあるようなフレーズを口にする。他に良い言葉が思い付かないのだからしょうがない。それに尊さんも職業柄、ボッチに思えてしまう。
「そうなのかな?そうだと良いなぁ」
励ましが逆に落ち込ませる結果となってしまう。尊さんは天井を眺めうっすらと涙を浮かばせ、俺に見せないようコッソリと涙を拭いた。
「さぁて、撮影の続きをしようか」
やはり大人でプロだ。仕事と公私混同はしない、直ぐ様気持ちを切り替え尊さんは仕事の顔をしてる。大人の男性で一瞬だが、王子は格好いいと胸キュンしてしまった。
王子は、胸キュンがバレないよう次の衣装へ着替えるため、更衣室に飛び込んだ。そこには二人のメイドがもちろん待ち構えおり、強制的着替えイベント再開だ。
「次の衣装はこちらになります」
「さぁて、脱ぎ脱ぎしましょうね」
赤ちゃん言葉にイラッとくるが、それよりもクララが手に持ってるのは海パンである。それはつまり、物理的にパンツも脱ぐという事を意味している。
俺は回れ右をして出て行こうとするが、リリスが先回りをしてドアを塞いでいる。
「どうしてもこれを着なきゃ………ダメ?」
「「お嬢様の命令ですので」」
俺的には自分の水着姿なんて誰得だと思うが最低でも二人、喜びそうなヤツに心当たりがある。
それは、我が妹と我が恋人の二名だ。あの二人なら原寸大の抱き枕カバーやベッドシーツを委員長━━━シオンに頼んでる可能性が十分にある。
「あのぉ~責めて自分で着替えさせて下さい」
「………リリス、あれを」
「はい、お姉さま」
クララの命令にリリスは部屋の隅に歩いて行き手を壁に掛けた。壁が開き、そこには店にありそうなカーテンの試着室が出てきた。
「「私達はここに要らしゃっいますので、どうぞお着替え下さいませ」」
あるなら最初から出して欲しかった。ていうか、メイドがいる事前でおかしいけど、俺は深く考える事を放棄し着替える事にする。
女性なら兎も角、男性なら着替えるのに時間はさほど掛からない。それも海パンならほんの数秒で着替え終わる。そうしないと、試着室の外で待ってるメイド二人が俺の着替えを覗こうとしていたからだ。
「「ちっ!は、早かったですね」」
舌打ちとかテンパり方とかもシンクロしてもはや神の領域と思える程にピッタリだ。
それにしても、やはり覗こうとしていたか。リリスの手にはデジカメが握られており、何を撮影しようとしてたのか怖くて聞けない。もしかしたら、本当の意味でヌード写真が撮られていたのかも。危ないところであった。
もし撮られ、そのデータが委員長に渡っていたとすると寒気がしてしょうがない。
「やっぱり若い人の肌は良いわね」
「やっぱり男の子だわ。逞しくて筋肉が素敵ね」
メイド二人も十分に若いと思うけど、年齢聞いたら恐らく無事にここから出れないと思う。
女性に負けるとは男のプライドが許せないが、俺の祖父が道場開いており、祖父の方針で度々行って習っていたせいか二人の強さが分かる。分かってしまう。高い確率で負けてしまうと本能が訴えてるのだ。
因みに、何の道場って言うと色々だ。空手、剣道、テコンドー、柔道等々武道というものは何でも取り入れていた。そのお陰で外見からは分かりずらいが王子の腹筋は割れてるし、意外と筋肉質である。
「もうそろそろ撮影に行って良いですか?」
俺の上半身をジロジロと見詰められ、気恥ずかしい。