七十三話・ラプンツェル13
だいぶお待たせしてすみませんでした。
ようやく書き終わりました。
「ねぇ、質問あるけど良いかな?」
「「はい、なんなりと」」
スゴくハモったよ。余程練習したのか双子でもなかなかここまでのハモるのは出来ないと思う。
それにしても、顔や体型がソックリで髪型まで一緒だと見分けがつかない。やはりこの二人は双子なのか。
「ここで着替えてと言われたのだけれど、お二人は━━━」
「「王子様のお着替えをお手伝い致します」」
何処かの貴族のような事を言われポカーンと開いた口が塞がらない。高校生になってまで誰かに着替えを手伝って貰うなんてそうそう出来ない体験だ。
ていうか、ここは日本だし小さな子供か病人ならともかく普通の高校生が他の人に着替えを手伝って貰ったら末代の恥じゃないか。
「いいえ、自分で着替えられますので」
「「お嬢様の命令ですので」」
「自分で着替え━━━」
「「お嬢様の命令ですので」」
「自分で━━━」
「「お嬢様の命令ですので」」
何回やったか途中で数えるのを止め、俺は鍛えてると自負するが息切れを起こし折れた。何の抵抗も起きず大人しくメイド二人に身を任せた。ただし、パンツだけは死守した。
「あら、ずいぶんと遅かったわね」
「ちょっといろいろあってね。それでここが撮影室?」
たまにドラマやテレビの取材で見る事あるが、それよりも本格的で個人が所持するようなものではない。どんだけ、お金が掛かってるのか凡人な俺には想像出来ない。
「紹介するわね。この人は写真家の篠本尊さん、有名な写真家で何度も賞を受賞してるわ」
「いやぁ~、シオンさんに言われると照れるな。今日はシオンさんに頼まれて急遽他の仕事をキャンセルして駆け付けたよ」
えっ?!シオンの方が年下だよね!それに写真家の名前童話以外疎い俺でも聞いた事めっちゃ聞いた事あるよ。
母さんがファンで最近はご無沙汰になってるが数えられない程、写真展に行かされたものだ。母さんが今日の事聞いたら羨ましがると思う。
「そんな有名人呼んでも大丈夫なのか?」
めっちゃ金掛かってるんじゃないのか?!まぁこの部屋を見る限り金に躊躇するとは思えないけど………。さすがは宮崎財閥だな。俺にはけして真似出来ない。
「えぇ、シオンさんのお父様にはご恩がありまして、私がまだ売れてない頃出会い何を思ったのかプロデュースしてくれた訳なんですよ。
まさか、あの宮崎財閥の御曹司だとは当時はつゆ知らず接していまして後々知った時には震えました」
それは御愁傷様です。シオンの性格を知ってるから普通に接してるが一般人なら泡を吹いて倒れると想像出来る。それだけ権力を持ち指一本で人一人を消せる。
「そういう訳でして逆らう事も出来ずに今日の仕事を引き受けました。まぁ金払いは良いので、他の仕事より優先すべきなのは変わりないのですけど………あはははは」
うわぁ~、遠い目をしちゃってるよ。今直ぐに逃げ出したい衝動に駆られるが写真家尊さんを見て無理だと悟る。
「それにしても、シオンさんと同じクラスメイトだけあって良い素材だね。さすが"格好過ぎる喫茶王子"じゃないか。撮りがいがあるよ」
えっ?!何その昔流行った◯◯王子みたいな二つ名は!それに俺の名前も漢字だと王子だし掛けてるのか。初めて聞いたぞ。
「SNSで有名だよ。ほら、これだね」
スマホを見せてくれた。そこには"格好過ぎる喫茶王子"今日の格好は西遊記の悟空、極上スマイルで接待をしてる。
と書かれており、写真がアップされていた。
"いいね"がなんと!50万いいね到達していた。まるで有名人みたいな扱いだ。
「これ誰が撮ったんだ!西遊記は最近始まったばかりだよ。これを出来るのは………限られるよね」
俺はシオンの方を向くと口笛を吹きソッポを向く。態とらしい誤魔化し方だ。これでは自分が犯人ですって言ってるようなもんだと思うのだが、シオンは態とやってるのだろうか。
「はぁ、シオン━━━委員長だよね。これを撮ったのは」
「………ぷい、名前で呼んでくれないと話しません。黙秘権を行使します」
先日、GWO内で約束した事が二つある。その一つが俺の写真を撮りまくる事。二つ目が俺と二人きりの時に名前で呼ぶ事。ここには写真家の尊さんがいるが、クラスメイトやGWOメンバーじゃないから大丈夫という事だろう。
「はぁ~、シオンこれを撮ったのは君なんだろう?」
「えぇ、そうですわよ。良いアングルで撮れてますでしょう」
まぁ確かに良く撮れてるけど、この二つ名みたいなタイトルはなんだ?俺は今まで聞いた事ないけど、これもシオンが名付けたのか。めっちゃ恥ずかしんだけど、変更や取り消せないかな。
「それは私ではありませんわよ。天童君の愛しい恋人と妹さんが考えたのですわよ」
あの二人かぁぁぁぁ。よし、後でオシオキという名の話し合いをしよう。
「撮影の準備出来たから、え~と王子君だよね?こちらに立ってくれるかな」
「はい、分かりました」
俺は尊さんの言う通りにポージングをとり、カズトをモデルにした写真撮影会が密かに行われるのであった。
まだ日常編よりは写真撮影編は続きます。