七十話ラプンツェル10
仕事が忙しく遅れてすみませんでした。
「タカちゃん、何してるのかな?かな?」
うっ、背後からの視線がズカズカと突き刺さり痛い。それに嫉妬を込めた視線はアテナだけじゃない。
妹のフローラはまぁ分かるとして、怖くて振り向けないが雰囲気から察するに恐らくここにいる全員じゃないか。
「まぁ王子様♪あちらにいる人達が王子様の仲間なのね」
好奇心旺盛に王子の後ろに控えるアテナ達にララが近寄って挨拶を交わす。
流石に初対面の相手に嫉妬という名のオーラを出す訳にはいかずお互いに自己紹介をする。
「まぁそれでは、あなたが王子様の正妻のアテナ様ね。王子様の事いろいろ教えて欲しいわ。宜しくね」
「せ、正妻ぃぃぃぃぃ!いやぁ~、解らない事があったら何でも聞きなさい」
満更でもない顔でララの事を認めた。なんというか、チョロインだな。現実でも騙されないかスゴく不安だ。
まぁララとは仲良く出来そうでそこは安心である。
「あなたが王子様の妹なのね。私こんな妹が欲しかったの。フローラちゃん、私の事をお義姉さんと呼んでね」
フローラに抱き着いて自慢の胸に窒息寸前であった。
ぷはーっとどうにか口と鼻を出す事が出来、呼吸が再開できた。フローラはGWO内と現実とで自分の胸にコンプレックスを持っており、目の前の胸に怒りを感じていた。
ララの胸を、もみくちゃにしおうとしたいが抱き着かれてるからか腕が曲げられない。それに加え、苦しそうに抵抗するがビクともしない。
「苦しいです………えっ、ちょっ!そんなところを触ん━━━本当にやめ━━━ふにゃーー!」
王子の角度からでは何をされてるのは解らないが、もうそろそろ止めた方が良いかな。
「ララ、そんなに抱き着いたら苦しいだろ」
王子が横から助け船を出し、フローラは解放された。ララは充分にフローラを触れた事で何故か肌の艶が潤ってる風に見える。相変わらず凄い再現具合である。
「申し訳ありません。でも、こんな人形みたいな可愛いらしさで我慢が出来なかったの」
「いえ、私は大丈夫です」
と言ってるものの表情からげっそりと疲れ果てたと物語ってる。
「お詫びに………ヒソヒソ」
ララがフローラに耳打ちで何やら話してる。その話が終わってから急にフローラが元気になった。しかもララに尊敬の念を抱くようになってる。
「ララ姉様、これからも仲良くお願いします」
一体何を話したのか気になるが、俺の本能が関わってはいけないと警報を出してる。昔からこういう直感は的中率が高い。
「そちらにいらっしゃる方が先輩達ですか?」
ララが次に目線を向けたのが、シャルルとエラだ。先に王子の童話キャラになった二人に"後輩"として挨拶を交わす。
ララはまだ入手した訳ではないが、ララ自身はもう王子に着いて行く気まんまである。
「そうよ、私が赤ずきんのシャルルよ。王子様に初めてゲットされました。どうぞ、宜しく」
シャルルは敢えて初めてのところを強調し自分が一番と威圧した。
後でシャーリーに教えてもらったが、童話キャラの中には序列が存在し複数取得してるプレイヤーはそこのところも気を付けないとケンカする事もあるらしい。
「私はシンデレラのエラと申します。二番目となりますが、どうぞ、お願い致します」
スカートを捲し上げ貴族らしい挨拶に目は微笑んでるが、王子には分かる。これは何か無礼な事あったら、そくコレだろうと王子は身震いする。
しかし、ララは女は度胸と言うように恐れもなく二人の目から視線を離さず、自分の番になり口を開けた。
「先輩方、私はラプンツェルのララです。ご迷惑掛ける事もありますが、ご指導のほどお願いします」
一見、ララはシャルルとエラの事を尊敬してる風に見えるが同じ童話キャラだからなのか不明だが、バチバチと火花を散らしてる。
きっと心の中では(((コイツだけには負けない)))とでも思ってるのだろう。まぁ仲良くやってくれれば、こっちは何でもOKな感じだけど。
「そちらの方は王子様の幼馴染みとお聞きしました。幼馴染み………良い響きです。羨ましい限りですわ。小さい頃の王子様も知ってるって事ですわよね」
「あぁ、知ってるとも。もし、知りたいなら後で教えてあげようか?」
「まぁ嬉しいですわ。では、後程お話をお聞かせ下さいまし」
メリッサとは、普通の対応だったな。まぁ俺の話がされるのは恥ずかしいが、これもクエストクリアのためだ。我慢するしかない。
「そちらの方と王子様の関係は何ですの?」
「私はメリッサに王子様を紹介してもらい知り合いました」
他のメンバーより俺との関係が薄く感じるニムエだが大丈夫だろうか?
「ニムエさんも王子様と呼んでるのね!」
「えぇ、王子様は王子様以外あり得ませんから」
「その気持ち分かるわ。私達仲良くやって行けそうね」
何故か知らないけど、ニムエとララの二人は共感が持てたようで取り敢えず良かったと言えるだろう。
そして、残りは━━━━