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六十九話・ラプンツェル9

 あの後、子ウサギの隠れ家から帰宅後、夕食や風呂等々の身仕度終了してGWOにログインする。現実リアルの時間は夜の9時を廻った頃、2~3時間程はやれるだろう。

 何時に集合とか決めてなかったが、まぁ大抵みんな揃っているはずだ。遅刻という事にはなるまい。


「確か集合場所はあそこだったな」


 集合の目印として、この街に一つしかない噴水に前回ログアウト前に決めておいた。

 この街では、噴水も確かに目立つが街の領主らしき人物画が街の中心部にある教会にある女神像の真後ろに堂々と飾ってある。入れば一番目立つし、およそ縦3m×横6mの巨大パネルに領主とその妻に娘が描かれている。娘の見た目の雰囲気が何処かララに似てる気がする。

 まぁ後で調べるのも手かもしれない。でも、今は集合場所へと急ごう。


「俺が最後か。みんな早くねぇか」


「兄さんが遅いですよ。待ちくたびれました」


 遅いって………ほぼ一緒のタイミングで自分の部屋に入ったよな。遅れても数分間の差だと思うのだが………。


「タカちゃん、フローラは一番乗りだったよ」


 はぁいぃ~!一番乗りだって!そ、それはあり得ない。だって、ほぼ同じタイミングで部屋に入ったんだぞ。何かトリックがあるはずだ。考えるんだ、考えれば答えは直ぐに出る。


「王子様、フローラと私達が来たのはほぼ同じです。ほんの数秒だけ………フローラの方が速かっただけ」


 よし、ニムエ良く答えてくれた。からかってくれたフローラには、後でお仕置きが必要だな。


「何か寒気がしましたが………気のせいですか?」


 ブルッとフローラは体を震える。

 本当に勘が鋭いと王子たかしは我が妹ながらと驚愕するが表情にどうにか出さず済んだ。


「さぁさぁ、早く行くにゃ」


「あんなに落ち込んでたシャーリーがずいぶんと元気になったな」


「にゃっふっふっふっ、情報屋というものは新しい情報の裏付けをするのにゃ」


 シャーリーのテンションが異様に高い。落ち込んでいた時より落差がスゴい。

 う~ん、俺には分からない世界だが、おそらく記者やパパラッチみたいなものか。学校では、真面目な委員長だと周囲は思ってるが、度々どっちが本来の素顔か疑問に思う時がある。

 王子たかしにも、童話好きという側面があるのはパーティーメンバーと家族しか知らない。その他の人には隠し、イケメンという風に通ってる。


「そうだね、王子たかし案内頼むよ」


「そうにゃ、さっさと進むにゃ」


 案内って言ってもラプンツェルの塔までの道のりは全員知ってるでしょうに。王子たかしはため息を吐き先頭を歩き数分後、ラプンツェルの塔の手前までやって来た。

 塔には先客がいるようで、森の茂みに身を潜め様子を伺ってる。多分だが老婆ババァに扮してる妖精だろう。妖精がいると塔に中々入れない。


「ねぇ、あの妖精をやっつけちゃダメなのかな?」


 それもアリだと思うが"クエスト"の内容に沿ってない事をやると失敗する可能性も充分に考えられる。

 それ故に、妖精討伐か待つか多数決を取る事にした。俺は待つ派だ。


 ・アテナ

 妖精討伐派

 理由:絶対に妖精は悪者でラプンツェルを早く助けたいから。


 ・フローラ

 待つ派

 理由:兄さんが言う事なら、それが正しいと信じる。


 ・メリッサ

 妖精討伐派

 理由:武闘家らしく悪者と戦いたい。


 ・ニムエ

 待つ派

 理由:フローラと同じ


 ・シャーリー

 待つ派

 理由:情報屋のプライドに懸けて………情報屋の勘


 ・シャルル

 待つ派

 理由:王子様と違う理由なんて考えられない。


 ・エラ

 待つ派

 理由:シャルルと以下同文


 以上の結果、妖精討伐派は二人、待つ派六人により待つ事に決まった。多数決が終わる頃になると塔から妖精が降りてきた。去って行くのを息を殺してひっそりと待つ。


「さてと、みんな行くか」


 王子たかし一人からメンバー全員によるラプンツェルクエストの開始だ。

 王子たかしは、先日と同じ方法で塔の中にラプンツェルのララに話し掛け髪を降ろして貰う。

 シャーリーの情報によると、この塔はどういう仕掛けかラプンツェルの髪でしか出入りが出来ない。

 一回だけラプンツェルの髪を使用せずにチャレンジしたプレイヤーがいたそうだが、あの妖精に見つかり戦って敗北したそうだ。


「ラプンツェル、ラプンツェル髪を降ろしておくれ」


 ロープ状に束ねた金髪の髪が下りて来た。アスリートや自衛隊等訓練した者じゃないと普通は辛いが、ここはゲームの中だから楽々に登れる。

 先に俺が登り、後はジャンケンで順番を決め一人一人登って行く。塔の中には、ララが満面な笑顔で「待ってました」と言いたげな表情で椅子に座っている。


「王子様、お待ちしてました」


 ララはあまりの嬉しさに王子たかしの胸へ飛び込んできたところを登って来たパーティーメンバー全員に見られ、王子たかしの背中に鋭い視線がズサズサと刺さるのであった。



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